※死ねた
※鬱
視界をよぎるファー付の黒いコート。黒い髪。
体中の血が沸騰したような気がした。
臨也、臨也臨也いざや。
「いぃざぁやぁあぁああぁあ!!」
「!?」
手近にあった標識を掴む。力を込める。千切れた標識を振り上げ思いっきりそいつへ叩きつけ――
『やめろ!』
られることはなく、何者かが俺の腕を掴んだことによってそいつの脳天を叩き割る直前で静止していた。
俺の腕を掴むのとは反対の腕でPDAを突き出すそいつは、
「セルティ…?」
『早く逃げろ!』
俺の疑問を含んだ呼びかけに答えることなくセルティがそいつに向かってPDAを突き出す。
呆然としていたそいつ――ショートヘアの女は、非日常的存在の首無しライダーにPDAを突きつけられるというある種のショックで却って正気に戻ったのか悲鳴をあげて慌てて走り去って行った。
「臨也あぁああぁあ、てめえ、待ちやがれ!!」
『静雄!落ち着くんだ静雄!』
セルティのPDAも目に入らない。
視界が赤い。
臨也、臨也、臨也まて、こら、行くな、頼むから、待て、待てって、
『静雄!臨也は、』
見たくない、知りたくない、嫌だ嫌だ嫌だ、臨也、臨也、臨也、そうだろ、なあ、あのファーのついたコートと黒髪、臨也だよなあ?なあ、
『臨也は、死んだじゃないか!』
視界がぶれる。
「嘘だ、違う、違う違う違う!」
『静雄…!』
「俺が自販機投げても、標識振り回しても死ななかったんだ、そんな簡単にあいつが死ぬわけ、死ぬわけ…っ!」
脳裏に閃く光景。
散らばる黒髪。
投げ出された手足。
虚ろな目。
流れ出る、赤、赤、あか。
「違う、違う違う違う違うああああああああああ!!」
『静雄…っおい!?』
手に掴んだ標識をめちゃくちゃに振り回す。
違う、こんなのは違う、嘘だ、診察台の上のあいつが氷みたいに冷たかったのも、人形みたいに力なく垂れた手も、流れ出る赤もぜんぶうそ、だってあいつはさっき俺の前に、あれ、あいつ女だっけ、あれ、あれ、じゃあさっきの誰だ、臨也は、どこ、
かくりと膝から力が抜け、俺はその場にへたりこむ。セルティが俺に恐る恐る触れる。
「…セルティ、臨也、臨也はどこ行った。」
『静雄…とりあえず少し落ち着け。』
「臨也、は。」
本当は、全部知ってる。
それでも信じられなくて、あいつはまだこの池袋のどこかに潜んでて、ひょっこり「死んだと思った?」とか笑って言いながら出てきそうで。
あの日触れた、診察台にのせられた臨也は、どうしようもなく冷たくて。
「いざや、」
いざや、いざや。
そう繰り返す俺に壊れ物でも触るみたいに触れるセルティの優しさが、あいつがいないことを肯定していてただただ、辛かった。
悪魔の証明
(存在しないことを証明することは難しく、証明されない限り俺は受け入れられない)
〈End〉
―――――
ついったーで某人が呟いていたネタをいただきました
鬱静雄萌える^q^