2年S組とプレートがぶら下げられてる教室の前の廊下で私は深呼吸をしながら先生を待った。
先生は「呼んだら入ってきてくださいね」と言って先に教室に入ってしまった。
漫画でよくあるパターンだけど緊張が半端じゃない。



「じゃあ涼騎さん、入ってきてください」

「はいっ!」



呼ばれた瞬間心臓がドクンと飛び跳ね、裏返った声が出てしまった。



「今日からこのクラスに転入してきた涼騎冬夏さんです。涼騎さん自己紹介を……」



先生は黒板に私の名前を綺麗な字で書きながら、私にバトンタッチした。



「えっと、涼騎冬夏です!色々とご迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします!」



ガバリと頭を下げてお辞儀をする。ちらほらと拍手の音が聞こえた。

噛まずに言えてよかった!!




「はいはーい!質問!!」


いきなり!?黒髪の男の子が手を挙げて質問というので思わず「えっ」と声出してしまった。



「甘木君…まだ質問タイムじゃないんですけど」

「いやいや転入生じゃないんだって!そんな急に転入生に質問タイム!とか言ったら滅茶苦茶可哀相じゃん!」



ですよね!凄く可哀相ですよね!!私も出来ることなら早く席に着きたいんです!



「たださぁ、クー先生……」

「はい?」

「その転入生の漢字間違えてね?」

「え!?」



慌てて後ろを振り返えるクレア先生につられて私も黒板を見た。



「あ……」


本当だ、漢字間違えてる……。

クレア先生は「あれ?」と慌てていた。



「先生、点が一つ多いです」

「本当だ!涼騎さんごめんね!」

「だ、大丈夫です」



指摘したのはさっき案内してくれた緋羽さんだった。慌てて書き直す先生。そしてガシャンッと黒板消しを落とした。



「ギャーッ!黒板消しで床白い!!」

『またか……』


慌てるクレア先生を他所に、クラスの人達は溜息を吐いていた。

またってこれが普通なの!?先生大丈夫!?



「先生とりあえず落ち着きませんか?」

「だってもうすぐ授業……!」

「次、数学だからここですよ」

「あ……」


ポロッとまた先生は黒板消しを落とした。


「……」


ここまでドジな先生は初めて見ました。



… … … … 



「それじゃあ涼騎さんの席は……」


数分後、漸く片付けが終った。


「あたしの横空いてるよー」

「じゃあ、おりちゃんの横ですね」

「はい……」



私は手を挙げた、前髪が長い黒髪で見るからに活発そうな子だった。

おどおどとしながらも私は指定された席に着いた。



「あたしは《地下道おり》な!」

「地下道さん?」

「おりでいーよー」

「お、おりちゃん……」



ニカッと笑いながら名前呼びを催促され、思わず俯いてしまった。



「それじゃー授業始めますねー」


クレア先生の声に周りは教科書を出し始めた。



「あ……」


しまった、私まだ教科書貰ってない!

教科書がないことに気付き、あたふたする。



「冬夏ー」

「はい!」

「あたしの見るー?」



そう言いながらおりちゃんは机を引っ付けて教科書を見せてくれた。



「あ、有難うございます」

「いーって、いーって」




おりちゃんに教科書を借りながら私は授業に参加した。






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