Are you name?
目が覚めたら、目の前でにやにや笑う鏡の裏側がいました。………とりあえず殴っておこう。どうしてここに!とか言わないのはもうお約束だから、なんてのは戯言だよ。 リビングに押しやって、さっさと着替えてしまう。並盛中学のスタンダードなブレザーに、青いリボン。井伊いろはの完成。なんてね、戯言さ。 カチャリと音をたてながら、リビングに向かえばすっかり朝食の準備が出来ていた。トーストにハムエッグにミルクに……ちゃっかり自分の分とぼくの分、ぼくの家に馴染みすぎだろう、あいつは。 なんかムカついたから、さっき殴ったところをもう一回攻撃してみる。 最弱を名乗ったぼくの攻撃なんて、大したことないんだけどこいつは別。だってぼくが痛いなら、こいつも痛いはず。
「うー!愛が痛ってえよお、いろはちゃん」 「ふーんそう。もう一回ぐらいぼくの愛受け取っておく?」 「……遠慮すんぜ。どーせなら別の愛をくれっと嬉しいんだけどなあ」
ま、いろはちゃんはツンデレだもんな。仕方ねえよ、と目の前の鏡は呟く。ツンデレっていうのは、見て萌えるものであって、けっしてぼくに使うべき言葉じゃないと主張したら、いや、ツンデレだし。って返される。
「……まったく、戯言がすぎるんじゃないか?人間失格」 「あー?いろはちゃんがツンデレなのはこの世の真理だからよ、傑作だろ?」 「スケールでか!どんだけぼくをツンデレキャラにしたいんだよ?……ていうかというかそういえば?ぼくのこと欠陥製品とは呼ばないんだな」 「ん?呼ばれたいんか、いろはちゃん」 「んなわけないだろ、まあどっちでもいいけど。いまのぼくだって君の鏡という傑作な事実は変わらないわけだし」 「んじゃあ呼ばない。好きな女の子のことそんな呼び方する馬鹿な男はいねーだろ?例え殺人鬼でもな。だからいろはちゃんからしたらオレは《人間失格》なわけだけど、オレから見たらいろはちゃんは《欠陥製品》じゃない女の子だろ」 「なっ…!お前、どうしてそんな、恥ずかしいことをすらすらと言うんだよ!!」
ぼくの顔はかああ!と染まっただろう。それを見てまた、あいつは面白そうに笑った。…ぼくが笑う余裕なんてないけどね!食べる手が止まってしまったぼくの頬まで手を伸ばして、面白そうな表情はそのまま、だけど真剣な目を人識くんはして……ぼくも、そのまま真剣な目を返して……
「よし、このままえっちぃことしにいこうぜ!」 「真剣な目をしたぼくが馬鹿だったよ!」 「痛っ!!地味に痛いんだぜ、いろはちゃん!」 「知るか。朝からふざけた鏡の知り合いなんてぼくにはいらないからね」 「あ、間違えた。本当はマリカしにいこうぜ!って言うつもりだったんだって」 「どう間違えたらそうなるのか知りたいけど、とりあえず戯言だな。ぼくはパーティー派だ」 「なに言ってんだよ、いーたん!そんな友達がたくさんいないとつまんねえゲームなんていろはちゃんができるわけ………!」 「死ね。」
もう何回目かわからない、打撃を与えてぼくは席をたつ。まったく本当にこいつはぼくのことが好きなのか?そう言って、ぼくをからかっているだけじゃないか。それでもいいけど、まあぼくたちは鏡だから、わかってしまうから、あえて言わないってこともあるだろうけどさ……ぼくだってマリパぐらい一緒にしてくれる友達ぐらいいまはいるから! そのまま家を出て、だけど後ろから着いてきてるって知ってるからね。振り返らずに、学校に着いた。
「あ、いろはちゃんだ!おはよー!今日も朝から鏡ラブーな展開だったんだね!」 「え、みおちゃんちょっと待ってよ…まさか盗撮………」 「は、してないよ!ただ監視と、ひーくんにいろはちゃん家の鍵は渡したけどねえ」 「!!よりひどかった!」 「よーみおちゃん」 「あ、ひーくん。いい絵撮れたよー、いろはちゃんの嬉し恥ずかしの一枚、五百円ねっ」 「よし買った」 「……もうやだ……」
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