Plesent Story | ナノ



わいわい人手賑わう並盛神社。動きやすいラフな格好の人もいれば、振袖を着ている人もいる。今日は御節料理、お餅、お年玉……楽しいことがいっぱいのお正月。神社は初詣を目的とした人により賑わっている。長い階段を軽い足取りで駆け上がってきた少女、《地下道おり》は階段を登り終えてきょろきょろと辺りを見渡す。「おーちゃんこっちこっち!」と名前を呼ばれてそちらを見れば二つに結わわれた灰色の髪を揺らしながらこちらに手を振る少女、《罪奇芹浪》がいた。

「おーっすぅぅ!あけましておめでとーっ!!」
「あけましておめでとー!そして今年もよろしくー!!」

ハイテンションで新年の挨拶を交わす二人。彼女たちも初詣のために神社にやってきたのである。ちなみに彼女たちといつもいる人たちはいない。理由は本来ならばいつもの面子とくる予定だったが、彼等は初詣をいつもの服装で行こうと考えていた二人に振袖を着せようとせまったからである。逃げるための対策として、二人で初詣にきたということになった。

「っつーか、芹浪はいつもの制服かよぉ……せめて私服をさぁ、着てこーよ」
「らってね、この服装が一番楽なんらよ。なんたって……」

芹浪は言葉をとめた。否、とめざるえない状況になったのだ。「ほらねー」「なるほどなあ」と暢気に喋る二人の視線の先には明らかに柄の悪い兄ちゃんたちが喧嘩腰でこちらを睨んでいるのだ。見なかったことにしようと試みるが「おい、雲雀の幼馴染」と凄みのある声で芹浪に声をかけてきた。そう、お正月とはめでたい出来事だが羽目を外す者たちも少なくはない。並盛に住まう不良たちはこれを気に並盛中の風紀委員に喧嘩を売ることがある。「ちょっと面ァ、かせや」と脅すような喋り方で言われて芹浪はやれやれと溜め息を吐いて「お友達と初詣楽しもうとしてるんらから茶々いれないでよね」と言いながら着いて行った。おりも芹浪一人で行かせればはぐれるの間違いなしなので、それに続くように着いて行った。

── しばらくお待ちください ──

「なんかさぁ、めでたい日にはボクたちに喧嘩を売ろうとする輩が増えるんらよねー。クリスマスでも喧嘩売られたんらよ」

ぱんぱんっと手を叩きながら芹浪は暢気に言う。ちなみに彼女の後ろには先程絡んできた不良たちの屍…ではなく、気絶をした不良たちが山のように積まれている。暴力をあまり好まないおりのためにも必要以上に傷つけず、首に手刀を一発叩き込むか、鳩尾を蹴り飛ばして一発KOかのどちらかだ。それをおりは巻き込まれない位置から見ては「つえー!!」と拍手をしていた。

「まったく、嫌になっちゃうんらよ。せっかくおーちゃんとの初詣なのに喧嘩売られるなんて」
「本当になあ。めでたい日くらい楽しくいこうぜー」

男たちの屍(しつこいようだが、彼等は死んでいない)を放置して二人は本来の目的、参拝をするために歩き出す。話の内容は極々普通の世間話。お年玉をいくら貰っただの、御節料理がどうだっただの……時々"マフィア"や"戦闘"など女子中学生らしかぬ言葉がでてきたりしたが、そこは二人の人柄から冗談ともとれそうで、本気ともとれそうな発言だったりする。時折すれ違う人が話の内容に驚いて見ていた人がいるが、二人は気にしていない。

「うおー、並んでるなあ」
「本当らねー。混雑してるよ」
「芹浪は何お願いする?」
「んー。ボクってさ、基本的に神頼みなんてしないで自分で叶える主義なんらよね。ほら、勉強とかできちゃうし?おーちゃんは?頭がよくなりますようにってお願いするの?」
「グサリッ!!今さり気なく馬鹿にされた気がする!!自ら頭いいなんて嫌味かチクショー!!」
「大丈夫らよ、馬鹿な子ほど可愛いって言うし」
「……さり気なく馬鹿って言ったよね?あたし馬鹿扱いされてるよな?」
「馬鹿じゃないというなら今認識改めるけど、どうする?」
「うっ……」
「ま、おーちゃんはたらたんに勉強ができないらけで、人は勉強の良し悪しで決まらないかららいじょーぶらよ。……個人的に、頭が良いおーちゃんなんて嫌らしね」
「最近、友達の芹浪の毒舌がパワーアップしてる気がします。神様、どうすればいいですか?」
「そうらね。遠慮がなくなった分信頼度があがったんらとプラスに考えてくらさい。得意でしょ、ポジティブ思考」
「なるほど!つまり愛情の裏返しか!!」

ぽんっとおりが手を叩いて納得したところで、長蛇の列で待っていた参拝の順番が回ってきた。二人はお財布から小銭を出しながら「結局、芹浪は何願うんだよー」「おーちゃんと同じー」「なぬ!?あたしの願いを何故知ってるエスパー!?」「いや、おーちゃんの願いなんてわかりやすそうなものじゃん」などという会話をしていた。
小銭をお賽銭箱の中に投げ入れて、ぱんぱっと手を叩く。そして二人は顔を見合わせてにっと笑い願い事を大声で叫んだ。


祈ることは唯一つ

((来年も皆と楽しい日々を過ごせますよーに!!))
(ほーら、やっぱりおんなじら)
(だよなあ、神様頼みで祈るといえばこれだよ!)
(うんうん。でもねお願い事って誰かに教えると叶わなくなるんらって知ってた?)
(何ぃ!!?)
(ま、相手が神様らろうとそんなのボクが許さないけどねー)
(……芹浪かっけーっ!!)





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