Plesent Story | ナノ



お正月とは日本の儀式と言ってもいいほどの伝統行事である。イタリアに総本部があり、洋系の人間が多い赤月にも日本人はいるので関係なくもない。が、どうやらお正月という行事は年を重ねるに連れて仕事などが忙しくなり盛り上がる感覚を忘れるようだ。赤月も年末に浮かれたついでに赤月ファミリーを潰そう!というふざけた計画を小耳に挟んだのでそのマフィアを潰すため、お正月という行事を味わう暇がなかった。

「……疲れた」
「体力的問題はないけど精神的にきつい……」
「なんたって実力がなくとも数が多いからな……」

ぐたりとした表情を浮かべて話すファイ、ハヤト、燿次郎。三人の後悔はもう少し多い人数で行くべきだった、だろう。疲れた状態でアジトに帰るため(何故か徒歩)道を歩いていると「大分お疲れだね〜」と苛々してるときや疲れてるときに聞きたくない声がした。姿は見えないが、誰なのかは安易に想像がつく。できれば違って欲しいと願うが、それはあっけなく崩される。
「お久しぶり〜」ゆる〜りと間延びした挨拶をしながら三人の前に降ってきたアスカ。どうやら木に登って待っていたようだ。
「マフィアは大変だね〜。年末年始忙しそう〜」ヘラヘラ笑いながら言うアスカにささやかな嫌がらせとして「まあ、好き放題の無職盗賊と違うからな」と燿次郎が言うがアスカは当たり前のように人の話しを聞かず「つまり儲かってる〜?」と好き勝手喋る。「ぼちぼちな」ファイが素直に答えるとアスカは「よかった〜」と笑う。何故自分たちが儲かってるといいんだ?首を傾げているとアスカは満面の笑顔を浮かべた。あ、これはあれがくるな。なんとなく次の言葉が想像できた。

「Trick or Money!」
『まさかの!?』

お年玉関連だとは想像ついたが、まさかの言葉で言われた。「それ恐喝!」「なんで日本の文化で欧米文化の言葉!?」「しかも無駄に発音いいしよ!」三者三様の突っ込み。反応に満足したアスカはうんうん、と頷き「で、どっちにする?」と可愛らしく小首を傾げて尋ねた。……内容はお世辞でも可愛いといえないが。
アスカの悪戯は悪戯といえない大変危険極まりないものなので財布からお年玉を渡した。「やった〜!太っ腹だよ〜!やっぱり儲かってる友達がいるっていいよね〜」と歓喜に満ちるアスカ。友達にお年玉をたかるな!という突っ込みは放棄されている。できるとしたら彼女の奴隷のキラくらいだろう。そこでハヤトがふと思った疑問を口にする。

「アスカ、今日は一人なのか?」
「ん〜、皆ね〜蝶恒例、"お正月大暴れスペシャルパーティ!"の準備中〜。私は料理担当で終わっちゃったから暇だったからね〜」

ようするに彼女は暇潰しできたということか。というより常日頃大暴れしているお前等がお正月更に大暴れかよ。パーティにスペシャルがつくなんて初めて聞いたぞ。常識人二人の心の中でマシンガン突っ込みがはいる。が、ファイだけは「面白そうだな。乱入可能か?」と笑って聞いていた。

「「いや、かなり危険だろ!!/でしょ!!」」

これ以上苦労の種をまかないでというように二人は叫ぶ。そこでタイミング悪いのか良いのか、目的地であった赤月のアジトに到着する。道中、必死で突っ込んでいた二人は信じたくないというように目を見開き恐る恐るアスカに「……なんだ、これ」と尋ねる。

「だ〜れもそのパーティを蝶のアジトでやる〜。なんて言ってないよ〜」

しれっと答えるとんでもない事実。「どうやって中にはいったんだ!!」と燿次郎の突っ込みに「とーやんって優しいよね〜」と答えた。つまり、料理人である碓氷沓也が歓迎したということになる。なんで追い返さなかったんだ!と心の中で突っ込むが、アスカたちは目的のために手段は選ばない。おそらく沓也に懐くシオが頼んだのだろう。心優しい彼はそれを断ることができないだろうから当然と言えば当然との結果。なんという奴等だ。

「と〜ゆ〜ことで〜、今年は"お正月大暴れスペシャルパーティwith赤月!!"なんだよ〜。ファイちゃんOK〜?」
「おう!むしろ大歓迎だ!!」
「やりぃ〜!さっすがファイちゃん〜♪話しがわっかる〜!」

きゃっきゃ喜ぶアスカ。彼女がここまで喜ぶのだからただのパーティで終わるわけがないと今までの経験で嫌というほど感じ取れる。それにファイが便乗するなら尚更。二人は逃げ出してしまいたいと一心に思うが「「逃げるなよ/逃げないでね〜」」とニヒルな笑みを浮かべながら二人に釘を刺されたので退路を失った。

「みゃはは〜、そんな顔しないでさ〜。折角とーやんと私で作った御節料理とかあるんだし楽しもうよ〜」
「……どうせ逃げる間もなく捕まるんだろうしな」
「今回は無礼講ということで参加するか」

観念したように言う二人にアスカは嬉しそうに「ありがと〜!!」とお礼を言う。ここまで喜ばれて嬉しそうな笑顔を浮かべられたらこちらも嬉しくなる。今年のお正月は例年以上に騒がしくなる予感。
ただし、二人がアスカとファイのコンビにより企画されたゲームや色の濃い面子からの要求によって参加したことを後悔するのはそう遅くない未来の話である。

Trick or ……!

(ハヤトちゃん発見!!お年玉は不必要だからTrick or Moe!!!)
(はいはいはい!!俺にはハヤトちゃんからTrick or Your Love!!)
(なんなんだコイツ等!なんでいつもにも増してテンション高いんだ!!というよりそれ、流行ってんのか!?)
(お正月テンションを考えれば当然だろうな)
(Trick or ○○!は私たちの中じゃ流行真っ只中だよ〜)
((ま、悪戯されないよう頑張れ!/頑張って〜!))
(師匠!?アスカ!?)
(燿次郎……わりぃ。止められなかった)
(いや、うん。この面子で止めるのは難しいだろう)
((……はあ))






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