Plesent Story | ナノ



1月1日。日本人なら知らぬ人はいないお正月だ。世間は紅白やら除夜の鐘やらで賑わう。が、現在の時刻は丑三つ時。日はまだ出てなく、規則正しい生活を送る者はお正月だろうとなんだろうと寝ている時刻。
とある一室ですやすやと寝ている少女、零崎宵織の場合は規則正しい生活などではなく、学園の初等部校長から渡された年末の仕事疲れでお正月そっちのけで寝ている。
そんな彼女の安らぎを妨害するようにこんこんっ、とノック音がした。彼女は身動ぎをするだけで起きないが、こんこんこんこん…どんどんっ。ノックは止むどころか悪化するばかりだった。そんななかで寝ていれるわけがなく、むくりと起き上がり「アリスの睡眠を妨害する輩は誰ですの」とあからさまに不機嫌オーラを漂わせて呟く。そんな呟きは聞こえないというようにひたすら鳴るノック音。ぷつんとキレた宵織はベッドから出て扉へ向かう。ぶつぶつと呟かれている言葉は「こんな奴、アリスの適性考査を受ける資格すらありませんの……」等々。この様子だと相手が誰であれ学園内の者なら死亡フラグ確実だ。微少の殺気を放ちながらがちゃりと扉を開く。そして扉の前に立っている予想外の少女に宵織は固まる。少女はそんなのお構いなしで「やっ。とりあえず廊下は寒いからあがっていい?」と尋ねていた。零崎特有の殺気のなか平然としている
突然の訪問者……芹浪に対して宵織は「……どうぞですの」と若干不機嫌な声色でいう。相手が相手なので零崎のしようがない。その分睡眠を妨害された怒りのやり場がないのだ。

「うわー、助かる!外、寒くて辛いんらよ」
「そんな寒いなかなんでこの学園にいるアリスのところへ?」
「いやねー、夢心ファミリーお正月パーティー!みたいなのを夜通しで騒いでてさぁ、酒癖が悪い人たちに絡まれるの面倒らから逃げてきた」

語尾に星がつきそうなくらい清々しく言われた。次期ボスがそんなんでいいのかという突っ込みは相手が芹浪なので言わない。「夜分にごめんね。お土産あるから許してよ」そう言いながら渡されたのは厚みのある茶封筒。宵織は怪訝に思いながらも封をきって中身を見た。そして眠気も、苛々も彼方とおくまで飛んでいった。
「お気に召していたらけたでしょうか?」にやにや笑いながら反応を見る芹浪。宵織は平静を装いながら「これ、どうしたですの?」と答える。その反応が面白くなかったのか芹浪は「軋識ってばボクたちの中じゃゲーム弱い方らから、罰ゲーム連発なの」と少しむくれながら答えた。そう、茶封筒の中にはお正月らしく振袖を着てたり、今年の干支である兎の格好をさせられている軋識の写真が数枚はいっていたのだ。軋識大好き!な宵織ならばそれを見せれば大きな反応を見せてくれるだろうと考えたのに無理矢理平静を装われて不満。だが数秒後、いいこと思いついたと言うような顔で芹浪は宵織を見た。

「なんですの?」
「そういえばここに、クリスマス会でもいじられていた写真からアルコールの度数が強いお酒を飲まされたことで酔って色っぽい姿をした写真まで。盛りだくさんのデータが入ったSDカードが」「是非ともいただきますの!」

彼女は誘惑に負けた。そんな魅力的な写真のデータが沢山はいったSDカードをチラつかせながら焦らすように言われたら当然の反応だろう。その反応に満足したのか芹浪は「じゃあ日の出するまでここにいさせてね」といい笑顔を浮かべながらSDカードを渡す。宵織は「そんなのOKに決まってますの!」と、最初の不機嫌はどこにやら。いまではすっかり上機嫌になっていた。

「あ、そういえばセントラルタウンで買ったお餅がありますの」
「それはつまりアリスで作られたお餅?わーっ、ボク一度食べてみたかったんらよね!アリスによって製作された食べ物!!」

その反応をみて宵織は閉まっていたお餅を取り出すために動いた。それを見て芹浪が「あ、お正月といえば宵織ー。お酒あるー?」と暢気に尋ねる。すかさず「未成年は飲んではいけませんの!」と注意をいれるが「お正月は無礼講らよー」と口を尖らせて文句を言う。どうすべきかと悩むが、芹浪があまりにも「お酒ー」と駄々をこねるので少しだけならいいかな。と考えて部屋に置いてあるお酒を注いだ。

「なはは、なんらかんらで未成年なのにお酒を置いておくとは人のこと言えないよねー」
「潤ちゃんに渡されたのですの。いざというときに便利だぞ!って」

この酒を渡した本人も思っていなかっただろう。まさかそのいざという時の相手が芹浪だなんて……。宵織がそんなことを思ってるとも知らず、芹浪はお酒をぐいっと飲む。「……それ、結構アルコール強いですの」と心配の言葉も「なはは、これ美味しいねー」とへらへら笑いながら一蹴された。宵織はその瞬間悟った。

(夢心ファミリーの人たちがお酒に弱いんじゃなくて、芹浪がお酒に強すぎるから酔わなかっただけですのね……)

思わぬところで酒豪なのを発覚した瞬間だった。

「なはは、それじゃあお正月ということで乾杯ー」
「……飲んでから言う台詞じゃありませんの」

宵織の突っ込みに「固いよー」と茶化した。今日、芹浪のテンションがいつもより高いのは酔っ払いじゃなくてお正月による深夜テンションなのだろう。宵織はやれやれと思いながら、ここで自分も楽しまなければ損だと思い楽しむことに決定した。

「乾杯ですのー」
「かんぱーい♪」

こんっと鳴らす二つのグラス。丑三つ時、小さな宴会がひっそりと行われた。


深夜にひっそり宴会を

(そういえば、最初から軋にぃにの写真があったということはもとからアリスのところに来る予定でしたの?)
(んー、らって皆お酒に弱そうらったし……そうしたら暇になるの一目瞭然じゃん)
(いや、お酒に対しては芹浪が強いだけの話しですの)
(えー、ボク強くないよー)
(とかいいながらそれ、何杯目ですの!?)
(えっと、3杯目?ちなみにあっちでも飲んできた!)
(未成年者!!法律違反!!)
(いや、殺人鬼に法律どうのこうの言われたくないんらよ)





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