「くらっちー!」


「はいはーい」


「……」



ボクが今居るのは鬼畜拷問こと倉知守威の利用教室である《理科室》だ。



「モテモテなんだね、こんな奴のどこがいいのか……」


「優しそうな笑顔、が人気の秘訣ですよ」


「辛気臭い笑顔、の間違えでしょ」



皆騙されてるんだよ、コイツに




「で、なんで呼んだの?」


「つれませんねー。折角僕の誕生日なんですから解剖させてくださいよー」


「ねえ、アンタっていつ死ぬの?」



迅速に、そして出来ることならくだらない実験ミスで死亡してほしい。



「ふふ、本当に冷たいね。いや、世界に冷めてる、だっけ?」


「……」


ニヤニヤと笑いながら言うコイツに本気でムカついた。




「くらっち先生ー!」


「はい、なんですか?」


「Happy Birthday!これ誕生日プレゼント!」



大声で入ってきた女はボクを目につけると、凄く嫌そうな顔をして睨んできた。

そして、笑顔でコイツにプレゼントを渡した。


……別に、そんな扱いは慣れてるんだからいいんだけどね。



溜息を吐きながら窓の外を見てると、バシャッと冷たいものがボクに降りかかった。



「あっ、ごめーん!うっかり倒しちゃったー」



何かと思って見てみれば、机の上に置いてあった中身入りコップをボクに向けて倒したようだ。


……大学生になってもやることは一々下らない。


そう思いながら女を見ていると、突然バシャッと何かが女を濡らした。



「あ、スミマセン。実験用の薬品零してしまいました。早く洗わないと危険ですよ」


「あ、あはは先生ってばドジー」



ヘラヘラと笑いながら謝るソイツに女は笑顔で対応したが、それは間違った対応だ。


だって、今の笑顔はドSスイッチが入った笑顔だから。



「ドジじゃないですよ。だって、僕の大事な教え子に悪さをする馬鹿に対してのお仕置きですから」


「っ!?」


「さっさと出て行ってくれませんか?不愉快です」



女は泣きそうな顔をして理科室から出て行った。


それでもプレゼントをちゃっかり貰ってるこいつは最低だ。



「頼んでない」


「僕が好きに動いただけですから」



これで明日から僕への嫌がらせは酷くなるんだろうな。


髪と瞳の色が違うだけで偏見を持ち、気味悪く思い、そして虐めへと繋がる。


小中高はまあそうだろうな、と納得してきたけど、大学までそうとなるとくだらなさすぎる。



これだからこの世界は嫌いなんだ。



だけど……



「ねえ」


「はい?」



ポイッとある箱を投げると、パシッと片手で受け取った。



「守威ちゃん、はっぴーばーすでー」


棒読みで祝いの言葉を投げつけると守威ちゃんはガバッと抱きついてきた。



「やっぱりツンデレなんですねー」


「うざい」



大嫌いでしかたがのない世界だけど、研究対象だとかいって普通に接してくるアンタは嫌いじゃない。



「誕生日おめでとう。生まれてこなくても良かったと思うけど、生まれてきてくれてありがと」


「(か、可愛い!)ふふふふふ……照れ屋さんですねー」


「ボクの誕生日に欲しいものさ、アンタが死んでくれること」



だけど、やっぱり変態のお前は嫌いだ。




マッドサイエンティストの貴方へ


(コラァァァッ!くらっち!何芹浪ちゃんに抱きついてるの!?)
(煩い兎が来ましたねー)
(…アンタ来るとこ間違ってない?)
(酷いよ!僕は大学生だもん!芹浪ちゃんと同い年だもん!)
((……そういえばコイツもボクに平気で接する一人だったな……))
(あ、くらっち誕生日おめでとう!お願いだから早く死んでね!)
(それ、誕生日プレゼントと一緒に言う言葉じゃないですよ)



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