「ねえ、」
「「ん?」」
目の前にいる桜色の瞳と赤色の瞳を爛々と輝かせている二人、《罪奇芹浪》と《零崎人識》に戯言遣いがなんとも理解できないと言わんばかりの顔をして今最大の疑問を尋ねることにした。
「これ、なに?」
「何って……なあ?」
「うん、決まってるじゃん」
「「超特大ケーキ」」
「見ればわかる!ぼくが聞きたいのはなんでこんな馬鹿でかいケーキがあるんだってことだ!!」
ビシッと全長1m近くあるケーキ指しながら戯言遣いは力の限り大声で言った。それを見て二人はキョトンとして目をパチパチと瞬かせた。それから「なんでってねー」「まあいーたんの記憶力だかんな」と呆れて溜息を吐いた。
「さて、問題!今日は何月何日でしょう!」
「9月13日だけど?」
それがなに?と言いたげに首を傾げた。その様子に「どーしよ…いーやん馬鹿すぎ……」「いや、馬鹿っつーより記憶力なさすぎじゃね?」ボソボソと二人で戯言遣いを貶していた。「だからなんだっていうんだよ」とますます意味が分からなさそうにする戯言遣い。「これくらい覚えておこうぜ」「そーそ、せっかくの記念日なんらからさー」ビシビシと文句を言われて思わず「何?二人ともぼくを虐めたいの?」と聞いた。「まさか」と真顔のうえ即答で言われて少し複雑になった。
「前世の5月13日、鏡と鏡の裏が出会う」
「前世の5月13日、鏡の表裏が出会う」
「転生して5月13日、鏡と鏡の表が出会う」
「「転生して9月13日は?」」
「……鏡三人の集結?」
その言葉に二人は待ってました、といわんばかりの笑みを浮かべた。ようやく理解した戯言遣い。つまり二人は三人が集まった記念日ということで今日お祝いするために超特大ケーキを用意したのだ。そこで何故ケーキ?なんて戯言は言わない。だってこの二人は重度の甘党だ。それでも全長1m近くあるケーキなんて食べきれるのだろうか?いや、そんな心配は不要か。なんたって片や胃袋キャラ、もう片やなんて甘いもの限定でブラックホールの胃袋ををもっている。むしろこれくらいで足りるかっていうほうが心配だ。
「いったいこんなでかいケーキどこから手に入れてきたんだよ」
「えっと、なんだったか?あのショートカットのねえちゃんの名前」
「ショートカットのねえちゃん?」
「あー、駄目らよ人識。いーやんは女たらしなんらからショートカットの子なんていっぱい候補がいるって」
「それもそうだな。ったく、いったいコイツのどこがいいんだかよぉ」
「あれでしょ?女はちょっと悪い人に惹かれやすいんらよ」
「え、じゃあ俺は?」
「殺人鬼にちょっともなにもあるか。というよりお前は顔らけらろ」
サラッと言われた酷い言葉に人識は手を地面について落ち込んでいた。それを芹浪は無視して「ケーキを作ってくれたの弥生ちゃんらよ」と教えた。「いつのまに弥生さんと……」と半分呆れながら呟いて「というよりもぼく女たらしじゃないから」と芹浪にむかって文句を言った。二人とも落ち込んで今にもキノコ栽培を始めそうな人識を完全に無視している。悲しくなった人識は「おーい、俺無視?」ショボンとなって尋ねるが「らって人識らし」「芹浪ちゃんが言ったの事実だしね」と辛辣な言葉を吐かれた。容赦のない二人に人識は本気で泣いていいか?と真剣に考え出した。
「……嘘らって。顔以外にもいいところちゃんとあるよ」
「え、あるの?」
「ん?ボクは結構言えるけど?あ、人識らけじゃなくっていーやんのいいところも言えるからね」
含みも何もないにこやかな笑顔で照れもせず真っ直ぐなことを言われた二人は黙った。ここで、じゃあ言ってみてよ。なんて言ったあかつきには彼女はつらつらと本心で二人の良い所をあげるのだろう。二人がどれだけ違うと否定しようが断言する。罪奇芹浪とはそういう人間なのだ。彼女は特定の人物の"鏡の表裏"というわけでなく、誰に対しても"鏡"という存在になれるのだ。そのなかでも"鏡の表裏"となっている欠陥製品と人間失格に一番近く、一番遠いので二人の"鏡"に一番なりやすい。それもあるから彼女は良い所をみつけることができ、断言することができるのだろう。
「本当、厄介だよね」
「それが芹浪の良い所だろ?」
「ま、結局何を言おうと戯言だけどね」
「かははっ、傑作だな」
そう言って人間失格は笑い、欠陥製品は笑わなかった。二人の様子に芹浪は?を浮かべて首を傾げていた。だが、深く考えることを放棄し、「せっかくなんらし、ケーキ食べようよ」と提案した。それに異論はなく、二人も賛成し、三人は9月13日の鏡集結を祝い、乾杯をした。
結局全ては、
(意味のない話なんだけどね) (なはは、別にいーじゃん♪弥生ちゃんのケーキ食べれるんらし!) (そうだぜ、第一そんな理由がなきゃ俺等がこんなことするかっつーの) (……二人とも、ただたんに弥生さんにケーキを作ってもらう口実がほしかっただけ?)((当然))
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