「はぁ……」


ポツリと私の口から溜息が漏れた。その原因は数時間前の犬にある。



「六時になるまで外に出てけってなんなんですかー」



この場にいない犬に向かって文句を垂れるが無意味な行為に終わった。


却下しようと思ったら骸様にも同じことを言われたので渋々外に出た。全く、せめて理由を言ってほしいものです。



「緋羽族の生き残りだな」


「……なんですか?」



こんな苛々してる日に勘弁してほしいです。と思いながら翼扇を手に持った。



「我々ときてもらおう」


「丁重にお断りさせていただきます」



それで男達は諦めるわけもなく、私はやれやれと思いバッと翼扇を開く。


「後悔しないでくださいね」





… … … …



戦闘が終わったのは約三十分後だった。大して強いわけじゃないが、無駄に人数が多かったので時間がかかってしまった。


四分の三殺ししておいた男達を放置し、私は帰路に着いた。もうすぐで到着するという場所まで辿り着いた時には時計は6時15分をさしていた。



「あれ?犬じゃないですか。どうしたんですか?こんなところで……」



黒曜ランドまでたどり着くと、何故か中に居ないで外で座り込んでる犬を発見し、尋ねた。



「翼姫帰ってくるのおせーびょん!」



そしていきなり怒られた。


勝手に追い出しといてそれはないですよ。



「遅くてすみません。ご飯ならすぐ作りますから」


「そういう意味じゃねーびょん!」



「いいから早くするびょん!」と犬に怒られながら腕を掴まれて引っ張られた。


私の静止する声も聞かず、ズカズカと歩いていく犬。一体なんなんですか?



「骸さーん、翼姫がやっと帰ってきたびょん」


「随分と遅かったですね」


「申し訳ありません。なんか私のこと知ってる人が居たので始末してました。……ところで」



「これはなんですか?」と私は目の前に広がる光景に苦笑いを漏らしながら尋ねた。


何故廃墟に似合わないパーティの準備がされているのだ。



「クフフ、相変わらず翼姫の頭に日付という存在がないのですね」


「頭がいいのに…勿体無い……」


「今日は8月4日だびょん!」



犬の言葉に私は手をポンッと叩いた。



「なるほど、私今日誕生日だったんですね」


「翼姫、いい加減頭にカレンダーいれようよ」


「曜日さえ分かってれば困りませんから」



それでも皆の誕生日は忘れたことがないのが自慢だったりします。




「わかったらさっさと祝うびょん!」


「犬がお腹すいたって」


「ちげーびょん!俺は翼姫が腹減ってると思ってらなー!」


「はいはい」



犬とちー君のやり取りにクスクスと笑いながら見ていると、骸様が「主役は翼姫ですからね」と言った。



「そうでしたね。骸様も犬もちー君もありがとうございます」



並中で浮かべてるような作り笑いじゃなくて、大切な人と一緒に居て楽しい本当の笑みを浮かべてお礼を言った。


そんな私を見た三人も笑っていて、それから私の誕生日をいつも通り騒いで祝ってくれた。




至福の一時


(思ったんですけど、これ全部ちー君が作ったんですよね?)
(俺も手伝ったっつーの!)
(犬はつまみ食いしてただけ……)
(僕も手伝おうとしたんですけど千種にとめられましたからね)
((……いくら骸様からのお祝いでもパイナップル味の料理だけはごめんです))



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