目が見えない、という状態は生まれつきだから慣れている。



だけど、たまに凄く不安になる時がある。




「ただ今戻りました」



いつも通り任務を終え、アジトに戻るといつもと違う異変に気がついた。



「黒那さん?莉埜さん?」



大抵はアジトに居るはずの二人の名前を呼ぶが返事がない。



「九代目?」


ガチャっと執務室を開けるが、返事もないし気配もない。



「──っ!」



スーッと血の気がひいた。


そして、走り出した。



「誰かっ……」


こういう時、目が見えない自分が嫌になる。


目が見えない分、気配に敏感になったが、それは気配があるものだけだ。


気配のないものには察知しようがない。



もし、このアジトに誰も居ない、ではなくて気配のない"死体"となっていたら?



天下無敵の夢心ファミリーにそんなことあるはずないが、そんな嫌な考えへと進んでいってしまう。




一度混乱すると、アジトの見取り図など忘れ、ただひたすらに扉を開き続ける。



そして、いくつ目かの扉を開けた瞬間。




──パンッパーンッ


『Happy Birthday!神理!!』


「へ?」



クラッカー音とお祝いの言葉に思わず間抜けな声が出た。



「え、これは一体……」


「まさかとは思うけど…神理、自分の誕生日忘れてない?」




莉埜さんの言葉に、私は今日の日付と自分の誕生日を思い出す。



「あ……」


「やっぱり忘れていたのだな」


「全くー、ファミリーの誕生日を祝うのは夢心伝統だよじゃんか!」


「だから皆さん食堂に……」



安心すると足の力が抜けてへたり込んだ。



「え、大丈夫!?」


「任務でどこか怪我したのか?」


「いえ、大丈夫です」



安心感からちょっと涙が出てきそうで下を俯いた。


その時、ポンッと私の頭に暖かい温もりを感じた。



「九代目?」


「すまんの」


突然の謝罪に私は戸惑うが、ゆっくり落ち着くと謝罪の意味が理解できた。



「いえ、私の勘違いでしたから」

「そうかそうか」



リズミカルに私の頭を撫でる九代目はきっと優しく微笑んでるんだろうな。



「さて、主役が泣いてちゃ始まらんから早急に涙を拭け」


「え!神理隊長泣いてるんですか!?」


「感動しすぎて!?」


「あの血の涙もない隊長が……」




九代目の言葉に部下達がギャーギャーと騒ぎ始め、私は思わず大声で怒鳴った。




「ほっといてください!!」


「隊長のご乱心だぁぁぁっ!!」


「全員退却ぅぅぅっ!」


「ストーップ!」


「お前等何誕生日祝いに逃げようとしている」




逃げようとする部下達を莉埜さんと黒那さんが止めた。



「それじゃあパーティの開始とするかの」


『おおおおおっ!!隊長ゴチになります!!』


「なんで私なんですか!」


『隊長の誕生日ですから!』


「もう好きにしてください」



諦めたように言うと、ほとんどのものが食べ物にがっついた。




「本当に騒がしい人達ですね……」



でも、盲目とかそんなの関係なく普通に接してくれる夢心の皆だから私は大切な人達だと思えるんですね。








盲目少女の大切な者達


(ギャーッ!隊長が微笑んでるー!!!)
(自分の容姿を自覚して計画的な小悪魔隊長も可愛いけど無意識に微笑む隊長も大好きっす!)
(うるさいです!)
(隊長が照れた!可愛い!!)
(もーっ!いい加減にしてください!!)
(ご乱心じゃぁぁぁっ!)
(皆のもの控えぇぇっ!!)
(神理の隊が一番賑やかだよねー)
(隊長といいように釣り合ってるな)



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