たった一人の最愛/敏京



「京君なーに読んでんの?珈琲入ったよ」


京君に言われて、家に帰って珈琲をいれる。
サイフォンとか無いから、簡単なインスタントの。


今日は仕事も疲れたし、砂糖を多めにした京君用の珈琲。

もう彼はブラックも飲めるけど、昔からの癖。


それを京君のマグカップに入れて、ソファに座る京君に近づくと。
座って真剣な顔で何か読んでたから。

話し掛けて、ソファの前のテーブルにカップを置いてその横顔にキスをする。


「DIR EN GREYのムック本」
「マジで?」


京君の答えに少し驚いて、そう言えば雑誌出来たからって貰ったなって思い出す。

京君が読むなんて珍しいなんて思ったり。


でも見慣れた写真と文字の羅列を真剣に目で追うその顔に笑みが零れた。


「ね、ね、どう?京君の彼氏は。格好良い?」
「んー」
「俺的にはコレとか写メって京君が待ち受けにすればいいんじゃないかな!」
「ふはっ、何やそれ。本人目の前におるのに、それやったら本人撮るわ」
「あ、そっかー。でもコレとか良く撮れてるでしょ」
「うん。いつもの敏弥とは大違いやな」
「何だよ。いつも格好良いだろ」
「いや?別に」
「えー」


京君は本から顔を上げて、隣に座る俺の顔を口の端を上げて見やる。

そんな京君の肩に腕を回して自分に引き寄せると。
京君は大人しく俺の胸元にもたれかかった。


俺も一緒に覗き込むと、インタビュー記事と、写真があって。

あーこう言う話もしたなって現場を思い出しながら文字を視線でなぞる。


無意識に京君の髪を撫でながら擦り寄ると。
俺と同じ匂いがして。

自然と笑みが浮かぶ。


当たり前に一緒にいる、その当たり前が幸せ。


「心夜とおる方が楽しいんや?」
「え?」
「ブースん中で2人」
「あぁ、音合わせする時ね」
「仲えぇもんな」
「そう?まぁ心夜いじられキャラだしね。からかうのにちょうどいいじゃん」
「ふーん」
「何なに。嫉妬?」
「ちゃうし。アホ言うなや」
「もーちょっとは嫉妬してよ。俺ばっかじゃんすんの」
「え、まだしとるん?」
「昔程じゃ無いけどね。やっぱ嫉妬はするよ」
「ふーん」
「愛してますから。身体も心も全部俺の物にしたいの」
「うわ、クサッ。クッサい事言うなや」
「コラ、逃げないで」


京君にベッタリくっついて、自分でも歯の浮くようなって思ってしまう台詞が口をついて出た。
だって仕方無いじゃん。

俺の素直な気持ちだから。


京君は笑いながら、俺から離れようとするから離さずに更に抱き締めてくっつく。


「何や敏弥ってインタビューん時だけは呼び捨てやんなぁ」
「普段はねー。タイミングが無くて」
「普通に呼んだらえぇやん」
「京、って?」
「…何か違和感あるな」
「かなー?まぁ慣れだよね」
「うん」
「あーでもそう呼ぶのって何かいいね。結婚して呼び方変わったって、そんな気分」
「何やのソレ」


吹き出した京君は、途中まで読んだ雑誌をテーブルに置いた。


「心夜とのインタビューなんやから、他ん事言うたらアカンやん」
「仕方ないだろ。京君の事好きなんだから」
「ホンマにアホやわー」
「ダメ?」
「…えぇよ。インタビューん時ちゃうくても、めっちゃ自慢しとって。心夜に」
「もう普段からしてるよねそれ」
「は、キモー」


とか言いながら、俺に向き直って。
唇が触れる直前まで顔を近付けて来た京君と目を合わせて。

笑い合ってから自然に唇を合わせた。
柔らかいキス。


「大好きだよ、京君」
「心夜をからかう時より?」
「もー何言ってんの。当たり前じゃん」
「ふーん」
「あ、やっぱ嫉妬?」
「別に」
「俺には京君だけだよ。他の人なんか眼中に無いからね」
「当たり前やん敏弥なんやから」
「ふふ」


何か少し前から、ちょっとの変化だけど京君が心夜に対する接し方が違くなって。

汲み取られるのは嫌だろうから、言わないけど。


これから先、何年でも愛を囁いて行くよ。


俺が好きなのは君だけだって。


愛しい人。
大好きだよ、京君。




20100317


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