敏弥@※/敏京



「……38度2分、風邪やん。完璧に」
「あ゛ー…最っ悪…」
「ライブ無くてよかったな」
「…良くねーよ…誕生日じゃん…俺の誕生日じゃん…あー…マジ最悪…」
「しゃーないやろ。自己管理が悪かったんやから。大人しぃに寝とき」


そう言うて、ベッドに寝かした敏弥の身体をぽんぽん叩く。


日付が変わった今日、3月31日は敏弥の誕生日。

ちょうどオフやし、仕事終わるんは遅かったけど。
敏弥の誕生日やからって敏弥んち泊まる約束して。

明日デートがてらご飯食べたりプレゼント買ったりしよやって話しよったんやけど(デート云々の件は敏弥が嬉しそうに言うとった)


仕事中もボーッとしとる事が多かったし、何や怠そうな表情しとって。

食欲も無かったし、咳するし。

僕の話もちゃんと聞いてへんし。


キスした時、唇むっちゃ熱かったんやけど。


やから、熱計らしたらこれや。

普段から体調管理しっかりせぇよって思うけど、最近春が近いのに寒い日続いたしな。


溜め息吐いて体温計を元に戻す。


無理矢理ベッドに寝かせた敏弥はしんどそうに浅く息を吐いとった。

熱があるってわかったら一気に怠そうになって。
やっぱ病は気からって言うんやんなぁ。


どうしたらえぇんやろ。


僕、病人の看病とかした事無いし。


敏弥が寝とるベッドの傍で床に座って敏弥の顔を見る。

手を伸ばして、敏弥のデコに触って前髪を掻き上げる。
敏弥の額は熱い。

こう言う時、冷やしたったらえぇんやっけ。


そんな事を思いながら敏弥を見下ろすと、薄く目を開けて僕の手を払った。


「…京君帰りなよ」
「は?」
「風邪移る。ヴォーカルなんだから。帰れよ」
「何やのそれ」


敏弥はぶっきらぼうにそう言うて、僕に背を向ける形で布団を巻き込み寝返りを打った。

身体を丸めて、咳き込む後ろ姿。


ムカつく。
心配しとんのに。

自分は僕が風邪引くと仕事サボってまで看病しに来る癖に。

自分が風邪やと移るから帰れって何やのそれ。


怒ったらアカンって思っとるけど、しんどかったら他人にまで気ぃ回らんって。

僕の身体を気遣っての事なんやろってわかる筈。


わかる、けど。


僕やって心配するし何かしたりたいって思うんに、勝手な事言いやがって腹立つ。


「敏弥」
「──な…ッ、」


ベッドに手を付いて、僕に背を向けとる敏弥の肩を掴んで無理矢理仰向かせる。

されるがままの敏弥は、若干驚いた顔をして。
そんな敏弥にお構いなしに、顔を近づけ唇に噛み付いた。

敏弥の手が、僕の身体を押し返そうとしたけど。
その手を掴んで、ベッドに押し付けた。


舌を捩じ込ませると、いつもより熱い口内。

遠慮がちだった敏弥の舌も、もう吹っ切ったんか段々積極的になって来て。

お互いのくぐもった声が室内に響いた。


掴んだ敏弥の手首も、じんわり熱い。

風邪は人に移した方が早よ治るんやて。


散々お互いのキスを貪って、唇を離す。


「ッは…、なに、いきなり…」
「…これでもう移ったな。よかったなー余計な心配せんで」
「…バッカじゃねーの…風邪引いたらどうすんの」
「したら敏弥に看病して貰うから平気」
「もう、京君」


敏弥を見下ろして笑うと、困った様に眉を下げて笑った。
敏弥の手が下から伸びて来て、僕の髪を優しく撫でる。


優しい手。

敏弥がこう言う風にしてくれるから、僕も暖かい気持ちんなって敏弥の顔を見下ろして髪を優しく撫でた。


「敏弥、何か食いたいモンとかない?つーか病院行く?長引いてもアカンし…」
「いいよ…寝てれば治るし…」
「ほうかー?長引いたら知らんで。放置すんで」
「ひでー。看病してよー…」
「やからしたるって。何かして欲しい事ある?」
「あー…」
「ん?」
「…俺、誕生日じゃん?」
「うん」
「でね、京君に着て貰おうと思ってたコスプレあんの」
「…うん」
「それ着て看病して」
「死ね」
「い゛…ッ」


コイツは風邪引いとんのに、頭ん中は変態思考で気持ち悪い。

から、敏弥の顔をべちんと叩く。


敏弥は反射的に目を瞑って、叩かれた顔を手で覆う。


「いてー…」
「変態。もう知らん」
「…だって京君…俺誕生日なんだよ…なのに風邪引いたんだもん…ねー…京君、ダメ…?」
「……」
「コスプレした京君見たいよー…そしたら元気になるから、ね?」
「……この糞野郎」


そんな顔して言われると、言うとる事は変態な事この上無いのに言う事聞いたらなアカン気ぃして来るやん。


「…そうだよね、嫌だよね…京君。もう帰っていいよ、して欲しい事無いし」
「何やと、」


何なんそれ。

腹立つ。

コイツは僕ん事をガキっぽいとか言うけど、今こんな事言うて拗ねた顔する敏弥のが、よっぽどガキやで。


また僕に背中を向けて咳き込む敏弥に、どうしようか頭ん中で思案する。

なんて、どうするかとかもう決まっとる。


「…たるわ」
「え?」
「着たるわ!コスプレで看病したるわ!何処にあんねん出せ!」
「マジ!?やった!」


めっちゃ嬉しそうに寝返りを打った敏弥に、ホンマに風邪引いとんかって疑いたくなる。


しゃーないやん。
敏弥の誕生日やから、特別やで。







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