遺伝子さえも愛してる/京流




京さんとテレビ見ながらパソコンいじってる時、不意に目に入ったCM。

それから、後ろのソファに座ってる京さんに振り返る。


動いた俺に、視線だけを動かして京さんはチラッと見下ろして来て。
何か、ソファ背凭れにして床に座るの癖になってるから、下から見上げる京さんも格好良いなーって思って。

好き。


「…京さーん」
「何」


伸びをして、京さんの方に身体を捻ってソファに肘を付く。

京さんはCMだから暇なのか、テレビよりも俺に意識を向けてくれて。


「何か、京さんの子供だったら、どんな子が生まれんだろうなーって思って。今」
「…お前また下らん事言うて。お前の方がその内隠し子いました的な事言いそう」
「いや俺どんな男なんすか。じゃなくて、俺と京さんの!」
「無理やろ。アホか」
「現実問題無理ですけど…こう考えるだけでもいいじゃないですか」
「…考えて実現するワケでもなし…」


京さんは呆れた様に溜め息を吐いて。

ソファを乗り上げてそんな京さんの隣に片足を上げて京さんの方に向いて座る。

ついでに休憩。
煙草ケースに手を伸ばして煙草を1本咥えて火を点ける。


もしも、でも俺ら2人の間に子供が出来ねーのはわかってるけど。
CMで見たら、家族とか、そう言うのいいなって。
それは京さん相手じゃねーと意味無い事だけど。


「つーか僕とるきのガキやったら男でも女でも身長低いやろな」
「突然変異でデカくなりませんかね」
「やー遺伝子は強いやろ」
「じゃ女がいいっすね」
「女なぁ…何かバンギャに成長しそうで嫌やわ」
「…うわ、考えたら嫌ですね。繋がりとか、そんな事言い出したら」
「自分が知っとる分、バンドマンと付き合ったら嫌やなー」
「絶対阻止しますねー」
「…ま、人間アカン言うたらしたがるモンやから、るきは嫌われるやろなー」
「えぇー。ってか女が生まれるんだと京さん取られそうな気がする…それはヤだなー」
「ガキか。僕はガキを2人も育てれんで」


何かめちゃくちゃ大人気無く京さんを取り合うと思う、俺。

鼻で笑った京さんは自分の煙草を取り出して咥えた。
そのまま俺に近づいて来て、俺が吸ってる煙草から火種を移す。


テーブルに手を伸ばして、灰皿を取った。


「じゃ、男?絶対バンドマンになりますよ」
「それか親が2人共ライブやら何やらでまともに家におらんから、グレるかめっちゃ真面目になるかするんちゃう」
「反面教師、みたいな。『バンドマンだけにはならねー!』って言われるんすかね」
「ま、そしたら『お前が僕みたいになれるワケないやろ』って感じやけどな」
「あはは。その一言でバンドマン目指しそうー」
「負けん気があってえぇやん」
「京さん厳しそうですよねー」
「お前はめっちゃ甘やかしそう」
「じゃ、俺ら2人でちょうどいいですよね」
「アホか。何やるきとガキがおったら余計にギャーギャー煩そうで、根本的に嫌やわ」


そう言う京さんは、煙草の煙を吐き出して。
俺が持ってる灰皿に灰を落とした。


現実で考えると、俺らの子供は出来ないってわかってるけど。

将来、もし男同士でも子供が出来る様になったとしたら。


「僕は煩いるきの世話だけで十分」
「…それはこっちの台詞ですけど」
「あ?何やと?」
「…いえ」


笑うと幼かったり、すぐ機嫌が悪そうな顔になったり。
不安定で強情な、でもやっぱり何処か愛しい。

この人の子供がいいな。


「ホンマ、るきはアホな事ばっか考えるなぁ」
「……」


そう言って煙草を吸いながら目を細めて笑う京さん。


乱暴に、髪をわしゃわしゃと撫でられる。

内容が内容なだけに、仕方が無い奴、って感じに。


乱暴だけど、優しい手。


別に、今の関係を否定したくて子供が欲しいんじゃない。

京さんと、だから。


交わる事が無い、2人の遺伝子だけど。


あ、でも。

この手を独り占め出来る、今の方も捨てがたいよな。


総合的に、京さんの全てが好きなんですって事で。




20110318



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