照れ屋で不器用な愛しい君/敏京
「今日のお昼はお寿司だって京君」
「ホンマ?」
「うん。スタッフが買って来てくれたよー。堕威君の分はお弁当なんだ」
「ほな早よ食お」
「うん。あ、ひなあられだー。そっか、今日はひな祭りか」
「そうなん?ソレって女のイベント事やんか。メンバーは男だらけやん」
「まぁ女スタッフもいるし、季節感があっていいじゃん。コレも寿司食べた後に食べよ?」
「…美味そうやからえぇけど…あ、敏弥熱いお茶淹れて」
「もー自分で淹れなよ」
「……えぇから2人共そっから退けや」
「あ、薫君ごめーん」
スタッフが用意してくれた昼ご飯が置いてあるテーブルの前で京君とごちゃごちゃ話してたら、後ろから薫君の苦笑いぎみの声が聞こえて来て。
京君と俺の分の寿司折と、ひなあられを持ってその場を離れる。
京君は一人、さっさとテーブルの前に着いて。
その前に寿司を置いて、お茶を淹れにまた歩く。
京君の我儘なトコとか可愛くて、何でも言う事聞きたくなっちゃうんだよね。
ついでにメンバーの分のお茶も淹れとこ。
「あ、敏弥淹れてくれとん?」
「うん。薫君これ運んでー」
「ん、サンキュ」
「京くーん、お茶入ったよー」
「おぅ」
「コラ、先食べてんなよ」
「腹減ってん」
薫君に3人分のお茶を渡して、俺は京君の分も持って隣へ座る。
京君は先にさっさと食べちゃってたけど。
その隣に腰を下ろして、自分の分のフタを開ける。
「あ、敏弥。玉子やるから海老くれ」
「ちょ、あんま対等な交換になってねーよ。あーんで食べさせてくれるならいいよ」
箸を割ると、京君はすかさず言って来て。
にっこり笑うと京君は嫌そうな顔。
ま、他にメンバーがいるから仕方無いけどねー。
いいじゃん、あーん、ぐらい。
「絶対やらんし」
「海老いらねーの」
「いる。寄越せ」
「じゃ、玉子あーんして」
「嫌」
「我儘ー」
「どっちがやねん」
「京君」
「敏弥」
「京君だって」
「敏弥やし」
「あーもーどっちでもえぇから。ホラ京君、俺の海老やるし」
「薫君ホンマ?」
「ちょっとー!京君に餌付けしないでよ」
目の前に座ってる薫君は自分の分の中から海老を京君の方へと移した。
薫君ただ海老食えねーだけじゃんかー。
美味しそうに海老食ってる京君は可愛い。
「薫君の食べないで。俺の分の海老もあげるから、ね。あーんして」
「……」
あ、睨まれた。
仕方無いか。
ちょっと残念だなー。
2人きりだったら口開けてくれたりすんだけど。
京君人前でいちゃつくの嫌いだしなー。
そう思って笑いかけ、京君のほとんど食べ終わって空いたスペースに海老を置く。
「ん。敏弥は玉子な」
「あはは。ありが、と…っ!?」
ガシッといきなり京君に顎を掴まれたかと思うと、呆気にとられて開いた口ん中に玉子を突っ込まれた。
京君の一瞬の行動に目を見開いて、ソレが何なのか理解したら超顔の筋肉緩みまくりなんですけど。
ちょっと色気ねーけど。
甘いね。
口ん中に突っ込まれた玉子よりも甘いよ京君。
フンッと京君は視線を逸らして、残りの寿司をさっさと食べた。
薫君はポカンとしてるし、堕威君はニヤニヤしてるし、心夜は気にせず寿司食ってた。
「……食いながらニヤニヤすんなホンマきしょい」
「んふふー。京君大好きー」
「知らんわ」
やだなー。
可愛いなー。
やっぱ俺らラブラブだね!
「ひなあられ食うの?俺の分も残しておいてよ」
「知らーん」
「だって俺女形だし。女の子の祭りなら俺が食うワケだよ」
「ワケわからんし」
笑いながらひなあられを食べ出した京君。
可愛い。
好き過ぎる。
「…敏弥、顔ニヤついとんで」
「だって薫君さっきの見た?京君可愛すぎるでしょ」
「はいはい」
「薫君、敏弥がおかしい」
「そんなん元からやん」
「そうやったな」
「ちょっと。酷いなー」
それでも京君がいて皆がいる。
こう言う空間が大好き。
可愛い京君を、見せたく無いけど見せたいから。
終
20110303
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