羨望、嫉妬/敏京+心
「心夜ー。誕生日おめでと」
「…おめでとさん」
「あぁ、うん。ありがと」
仕事でスタジオ入りしたら、敏弥と京君はもう来とって。
入るなり何や絡んで来るんやけど。
そう言えば僕誕生日やったっけ。
やけに明るく笑う敏弥と、その陰に隠れとる京君(小さいから見えないだけ)が、小さい声で祝福してくれた。
「また皆でご飯行こうよー」
「えー…」
「もー。自分の誕生日なんだからもうちょっと嬉しがれって」
「……鬱陶しい」
「ひど!きょーくーん!やもちゃんが酷いー!」
「うん、ホンマにウザい」
「京君まで!もう2人共知らねー!」
「……」
敏弥が僕の肩をバンバン叩くから、眉を寄せて呟くと大袈裟な動きの敏弥は京君に泣きついた。
京君もあっさり敏弥を突き放す言葉を吐いて。
敏弥はこれ見よがしに泣き真似をしながら、ちょうど入って来た堕威君を見つけてそっちに歩いてった。
「堕威くーん。聞いてよ!京君と心夜がさー、」
「はいはい」
「聞いてねーだろ」
「やって眠い」
同じ室内におるから、会話が聞こえて来て。
敏弥と堕威君は遊び仲間と言うか、よう遊んだり飲みに行ったりする程仲良いし、楽しそう。
チラッと京君の方を見ると、そんな2人を対して興味無さそうに見とって。
僕の視線に気付いたんか、京君はこっちに向いた。
「…なん?」
「や、別に」
「ふーん。何や心夜も2X歳になったんやなぁ。一番つるんどる時間長いから変な感じやわ」
「あぁ、せやね」
「お前無口なんどなんかせぇや」
「…京君やって人の事言えんやん。初対面の時とか」
「そらしゃーないわ」
目を細めて、八重歯が見える笑い方。
随分前から京君を見とったから、女遊びしとったんも知っとるし。
敏弥と付き合うって言うた時はビックリしたけど。
今はほぼ2人に一緒におるし、慣れたわな。
「京君て、」
「あ?」
「気にならんの?あぁ言うん」
「は?」
「敏弥。堕威君とめっちゃ仲良いやん」
そう言うて、敏弥と堕威君がじゃれ合いとも言える様な様子で笑って話しよる方に視線をやる。
したら、京君もそっちを向いて。
少し、自分でも意地悪な質問かなって思った。
「あー…別に。仲良いん前からやし」
「ふーん。そう言うもんなん」
「うん。僕より敏弥の方が煩いかな」
「…えぇやん。愛されとるって事やん」
「え、心夜彼女に束縛されたいタイプやったっけ?」
「別にそう言うワケちゃうけど…」
「僕は嫌やけどな」
「敏弥束縛癖あるんちゃうの」
「うん、でも敏弥やから、えぇかなって」
「…惚気んなや」
そう言う京君の顔は。
敏弥を見つめて目を細めて、さっきとは違う笑み。
自分で言うとって何やけど。
少し、嫉妬。
「────京君!何心夜とばっか喋ってんの!」
「うわ、ウザ。こっち来やがった」
「もー。あ、やもちゃん堕威君も大丈夫みたいだし、皆でご飯行こうね」
「はいはい」
何や、最近はスタにケーキ用意してもらっとったり、誰かの誕生日にはメンバーで飯食いに行くんが定番になっとる気ぃする。
京君はさっきと違って、まとわりついて来た敏弥に凄い嫌そうに顔を歪ませる。
さっきの顔、敏弥に見せたったら喜ぶやろに。
「…京君は予定ないん?いけるん?」
「京君も大丈夫だよ。ね」
「あー…まぁ、」
「何で敏弥が答えとんの」
「そりゃずっと一緒にいるからねー」
「ウザい。くっつくな」
「やだ」
目の前で笑う敏弥と京君。
微笑ましいな、って思うんと。
たまにバカップルで鬱陶しい。
いつもは冷静で見られる敏弥と京君。
でもやっぱ、仲良いはえぇと思うのに胸の奥がざわつくモンがある。
絶対気付かれたらアカン感情。
僕の誕生日やから。
今日くらいは許してや。
終
20110224
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