1人の朝より2人の朝/京流
朝、つーか昼前ぐらいか。
起きたらるきがベッドの隣で寝とって。
身体を起こして、携帯を見やる。
まだ仕事行くには少しだけ余裕がある。
歳取ったらあんま寝れんくなるんやなぁ…。
そんな事を思いながら、欠伸を噛み殺す。
昨日は何や仕事上の付き合いで、飲みに行くとか言うとったな。
この糞寒い中、自分の仕事も忙しいのにご苦労な事で。
必要最低限の付き合いしかあんましたくない僕にとたらめんどくさい事この上無いと思うんやけど。
コイツ今日仕事なんやろか。
まぁ勝手に起きて来るやろけど。
お互いなかなか顔合わせる機会無い生活。
でも当然の様に隣に寝とるんが、時々不思議。
深い眠りに落ちとるるきを横目に、ベッドから降りる。
トイレ行ったり顔洗ったり、朝起きてする一通りの事をして。
リビングの暖房をつけてソファに座る。
見たい番組も無いけど何となくテレビも点けて。
ようわからんニュース番組にチャンネルを合わせて溜め息。
腹減った。
るきやっぱ起こすか。
別に自分で出来ひん事も無いけど。
今日はボーッとしとって何もした無い気分。
動きたく無いって思っとんのに、るきを起こす為にまた寝室へ行くんとか自分でもようわからん行動に出ながら。
カーテンで薄暗い寝室へと入る。
さっきと同じ体勢で寝とるるきを見下ろす。
「オイ、るき起きろ」
「……」
「るき」
「…ッ、なに…さむ…」
声掛けても反応無かったんにちょっとイラッと来て、乱暴に布団を剥ぎ取ると。
るきは眠そうな目を開けて眼球だけ動かして驚いた顔。
は、不細工。
「るき、腹減った」
「…あー…いま何時っすか…」
「昼前」
「マジか…あ゛ー…頭痛ぇ…」
「えぇから早よ起きろ」
るきは頭に手をやりながら、枕に顔を埋める。
グダグダなるきは、のっそりと起き上がって。
「もー…パンか何か買ってたと思うんすけど…」
「パンやいらん。米がえぇ」
「あー…炊いて無かったんで、少しだけ時間かかりますよ…」
「なら早よして」
そう言うて踵を返してまたリビングに戻す。
るきは昨日飲み過ぎたんか知らん、あーとか、うーとかワケわからん言葉を発しながらベッドから這い出して来とった。
洗面所へ行ったるきは、前髪を縛って眼鏡を掛けて、幾分かスッキリした顔んなったけど眠そう。
つーか怠そう。
「るき珈琲」
「はーい…。あ、京さんこのまま昼飯としてご飯作ってもいいですか?」
「うん」
ソファに座っとったら、るきが珈琲を淹れて僕にカップを手渡して来て。
またキッチンに消えてった。
空きっ腹に、温かい苦い珈琲が染み渡る。
温かいモン入ると、ちょっと腹減っとんがマシになるな。
「何や昨日そんな飲んだんかお前。弱い癖に」
「そうなんですよ、京さん聞いて下さいよー…何件かハシゴして、なかなか帰してくれなかったし…勝手に帰るワケにもいかないじゃないですかー…」
「ふーん」
キッチンで何か作業しとる音が聞こえる中、るきと会話。
怠い言うとんのによう喋るわぁ。
「やっぱ普段から家でも飲んで、アルコール慣らしてた方がいいですかねー…」
「体質ちゃう。ま、先輩バンドマンと飲みに行ったら強くなれるやろ」
「…それって強制的に飲まされるからって話じゃ」
「はぁ?そらそうやん」
「でも俺もう飲み会行ってねーし」
「あーそうなん」
「そうっすよー。京さんいますもん」
「あぁ、僕に鍛えて欲しいと」
「…や、京さんは確かに先輩ですけど。飲み会でめちゃくちゃ飲まされた記憶ありますけど」
「しゃーないなぁ…そんなに苛めて欲しいんやな」
「いやいや、遠慮します。京さんとはまったりしっとり飲みたいです。ってか苛めってなんすかもう…」
「そのまんまやん」
後ろを振り向いて、チラッとるきを見て鼻で笑う。
怠い怠い言いながら、律儀に飯を作っとるるき。
ま、仕事の一貫やからしゃーないやんって思うけど。
愚痴る程めんどくさい付き合いようするわー。
そんなしんどい中、僕に叩き起こされて飯作らされとんもめんどいと思うわー。
僕やったら嫌。
でもそれがるき、やから。
早よ飯出来ひんかなー。
終
20110219
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