京さんA※/京流
痛む額を押さえながら、ベッドに上がって布団を被った京さんの傍に行く。
京さんは背中を向けていて、頭しか見えない。
「京さん」
「……」
「京さん、ごめんなさい」
「……」
少し低い声で謝っても、京さんは微動だにしなくて。
やべ。
泣きそう。
どうしていいかわかんねー。
ズキズキと額が痛い。
けど、心ん中のがザワザワしてて、痛い。
京さんに少しでも近付こうと、ベッドの端に片足を乗せる。
少しだけスプリングが軋んだ。
「…京さん、お腹空いてるんじゃないんですか」
「……」
「ご飯…食べましょう、よ。俺、頑張って作ったんです。ケーキとか」
「……」
「……」
「……」
言っても、何の反応もしてくれない京さんに眉を下げる。
必死に頭ん中で、さっきの事を考える。
理由を言ってくれない、理不尽な事でも。
このままで、京さんの誕生日を終えたく無かった。
「あの、アレ、大切な物って知らなくて…勝手に持ち出してすみません…」
「……」
「使って無かったからって…、ごめんなさい…」
「……」
何も言ってくれない京さん。
俯いて泣きそうになるのを耐える。
京さんに手を伸ばそうとしたけど、拒否られたらって思うと怖くてその手を引っ込める。
…料理片付けよう。
俺も腹減ってたけど、1人で食べる気しねーし。
あー…もう。
俺、いない方がいいのかな。
鼻を啜って、手をついてベッドから足を下ろそうとしたら。
京さんの身体が反転して、俺の手首をかなり強い力で掴んだ。
いきなりの事でビックリして身体を跳ねさせる。
「…ッ」
「…何処行くん」
「え、」
「何処行く気や、お前」
「痛…っ、痛い…ッ京さ、」
ギリギリと、手首に食い込む京さんの手。
眉を寄せて、反射的に引こうとしたけど強い力で掴まれていて無理で。
その逃げようとした行動が、京さんには勘に障ったようで。
京さんの目がつり上がった。
その目に睨まれて身体がすくむ。
「い゛…っ」
そのまま腕を引っ張られて、されるがまま、ベッドの上に身体を打ち付ける。
「京さ…!?」
そのまま、京さんが俺の身体に馬乗りになって来て。
俺を見下ろす京さんの目が昔を思い出す。
本能的に、怖いって感じる。
「るきの癖に何逃げようとしとんねん」
「───…ッ」
マウント取られてるから抜け出せなくて。
左頬に鈍い痛み。
久々に、京さんに殴られた。
「ごめ…っ、ごめんなさい…!」
その瞬間、何年も前に殴られた記憶が一気に頭ん中にフラッシュバックする。
咄嗟に両腕で顔を庇うと、腕やこめかみに鈍い痛みが走った。
怖い。
けど、逃げらんない。
逃げたらダメだって、そう頭の何処かで覚えてて。
人間の刷り込みって怖い。
「お前はホンマ、いらん事ばっかしよって」
「わざとか。あ?」
「僕ん事、」
「ちょっと可愛がっとったら調子づきよって」
「お前も僕から逃げるんか…!」
違うって、そう言いたいのに。
上手く呼吸が出来無くて言葉が出ない。
多分、俺が思い切り突き飛ばせば抜け出せるんだろうけど。
身体がすくんで全く動かなかった。
「……は…っ、…はー…」
「…ぅ゛…」
俺を殴るのを止めた京さんは、洗い息を吐いて。
頭がガンガンする。
痛くて、何処が痛いのかわからない。
涙で霞む視界の中、京さんを見上げればまだ冷めた視線で俺を見下ろしてて。
涙が溢れそうになる。
「……脱げ」
「…え、」
「脱げ言うとるやろ。早よせぇ」
「……ッ」
パシッと乾いた音を立てて、頬を張られた。
震える手で、着ていた服を脱いで行く。
京さんは俺の上から退いて、枕元に手を伸ばす。
腕も殴られたから、上手く動かせずもたついてると。
舌打ちをした京さんが脱ぐ途中の俺のズボンに手をかけて乱暴に剥ぎ取る。
「や…ッ、待っ…!」
「何が嫌やねん。早よケツ出し」
「───、ッ」
下着も全部脱がされると、京さんの手が俺の身体を反転させて四つん這いにされる。
腕が、自分の体重が支えられなくて顔が枕に突っ伏す。
腰だけを高く上げる形で。
「ひ…っ、ゃ、あ…、何…!」
「煩い」
「痛…ッ!」
そしたら、全く慣らしてもない所に細い何かが突っ込まれて。
いきなりの痛みに腰を引けば、逃げるなとばかりに更にそれを押し込まれた。
下腹部に広がる冷たさに、ローションを突っ込まれてるのは理解出来たけど。
それは慣らすとかそんなんじゃなくて、ただ挿れやすくする為って言うのが理解出来て、涙が溢れて来た。
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