京さん@※/京流
今日は京さんの誕生日。
昨日は京さん帰って来れなかったけど、今日は夜遅くなるけど帰って来るって言ってたし。
昨日の夜から仕込んでた料理を完成させて。
戒君に作り方を教えて貰ったガトーショコラも作ったし。
京さん早く帰って来ないかなーって思ったけど。
今日の為にさっさと仕事終わらせて早めに帰って来たから。
新しい棚買っていいって言われたし、棚がある部屋掃除しとこうかなって思って京さんと俺のDVDやら音源やら雑誌やらがしまってある部屋の整理。
これ1人じゃ動かせねーし、やっぱ先に中身出しておいた方がいいよなーとか。
そんな事を思いながらリビングの方をチラチラと伺いつつ棚に入ってない物を拾う。
京さんが買ったのに、俺のも入れさせて貰ってる状態だからなー。
此処に入ってんのとか前の位置に荷物置いてたし、見たらしてんのかな。
案外ここの部屋掃除以外ノータッチだったんだよな。
炬燵とかラグしまうのにはいいんだけど。
あー、でも。
京さん無造作に昔俺が貢いでた時の金置いてたりしたから、何かそう言うのまた出て来そう。
って家捜ししてんじゃねーか。
1人で掃除しながら笑う俺、キモい。
つーかこの段ボール何が入ってんだろ。
あー…、雑誌か。
動かせっかな、これ。
「ッ、しょっ、と」
取り敢えず、棚ん中見たいし、段ボールを力いっぱい押して動かす。
段ボールが邪魔になって見えてなかった部分。
京さんのコレクションのDVDの一部。
また何か借りよっかなー。
「…あ、」
まだ見た事無い、京さんのコレクションを見つけてしゃがんで見てたら。
端の方に鈍く光る銀色の物。
無造作に置かれたようで、意識的に置いた感じに見えるソレを手に取ると。
ずっしりと重い、年期の入った感じのジッポがあって。
京さんは普段、カートン買いした時について来たライターとか、そう言うのしか使ったのを見た事が無い。
これ、古いけどオイル入れたら使えるんじゃね?
デザインも格好良いし。
蓋を開けて閉めると、チンッといい音が鳴った。
京さん使ってねーみたいだし。
誕生日プレゼント欲しいの言ってくれてねーし、新しいの買うからこれ俺にくんねーかな。
「…るきー?」
そう思いながらジッポを手の中で返して見てると。
リビングから京さんの声。
やべ。
京さんが帰って来た。
「はーい。今行きます!」
ジッポを持ったまま立ち上がって、部屋の電気を消してリビングへ顔を出す。
そしたら京さんが帰って来てて。
上着を脱いで、キッチンでテーブルの上の料理を眺めてた。
「京さんお帰りなさい」
「ん」
「誕生日おめでとうございます。今日中に言えてよかったです。これからも大好きです、それと、」
「っさい。散々メールで聞いたわ」
「あは。ご飯食べます?」
「うん。お前何しとったん」
「棚、買うって事になったんで整理しようかなって思って」
「ふーん。腹減った。早よして」
「はーい。…あっ、京さんコレ貰っていいですか?」
「何」
「これ。格好良いじゃないですか。何で使わないんですか?」
「……ッ」
京さんの目の前で、手に持ってたジッポを差し出すと。
京さんの表情が強張った。
「……何処、で、見つけたん」
「え、棚の所にありましたけど…京さん探してた、」
「捨てろ」
「でもまだこれ使えますよ。京さんいらないんでしたら俺欲し、」
「捨てろ言うとるやろこのボケが!!お前はホンマいらん事ばっかしよる…っ!!」
「…ッ」
京さんが叫ぶ様に言うと同時に、思い切りジッポを持ってた手を叩く様に払われる。
ガンッと重厚なジッポが床に落ちる音が響いた。
驚いて固まったまま京さんを見ると。
京さんは自分を落ち着かせる様に深く息をして、落ちたジッポを見下ろした。
「…気分悪い。寝る」
「え、でも飯、」
「……」
京さんは俺の方に睨む様な視線を向けると、踵を返して寝室へと歩いてった。
え。
何で。
何でそんな怒ってんの。
今日、京さんの誕生日なのに。
嫌過ぎる。
「え、待って、京さん待って下さい…!」
「……」
慌てて追い掛けるけど、京さんはアクセ外しながら俺を無視して寝室へ行って。
「ねぇ、京さん。何か俺気に障った事言ったんならすみませ…ッ」
「鬱陶しいねん!来んな!」
謝ろうとしたら、振り向いた京さんが外したアクセを投げ付けて来て。
来るとは思って無かったから、身構えもせずに額に当たる。
シルバーのだから、かなり痛い。
床に落ちたソレを見て、ベッドに入った京さんの方に視線をやる。
何で。
京さんの誕生日こんな風に過ごしたい訳じゃない。
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