京君の誕生日/敏京
「はー…もう歩き疲れたわぁ…」
「何か欲しいの無かった?」
「んー。あんま…つーか、祝って貰ったし昼飯も奢って貰ったし、もうえぇよ」
「えー。でもやっぱさ、京君の誕生日だもん。プレゼント買いたい」
「んー…」
京君の誕生日。
オフだったし、前日から泊まり込みで。
0時ピッタリにお祝いしてエッチして寝て。
京君のプレゼント買いに行こうって事でいつもよりバッチリ決めて。
お出掛けして店とか回ったをだけど。
京君はあんまり欲しいの無いみたい。
つーか、欲しい物は探したら服とかあるんだろうけど。
そう言うのじゃないらしい。
ちょっと疲れたから珈琲カフェで休憩。
京君は甘いカフェオレ注文して、テーブルに置いてあった灰皿を引き寄せた。
煙草を咥えて、自然な流れてジッポで火を点ける。
チンッと軽快な音を立てて蓋を閉じるその動作は慣れで。
1年前の誕生日、俺が京君の誕生日に買ってあげた物。
いつでもずっと使ってくれてる。
1回無くしたって騒いでた事もあったけど、今もちゃんと彼の手元に残ってる。
左手薬指の指輪と共に。
「…何ニヤニヤしとんねん」
「ん?んー。京君とあれからまた1年経ったんだなーって」
「あぁ…つーか付き合って2年やんな。早いわ」
「あっと言う間だったけど、楽しかったよね。ま、これからも楽しいよね」
「は、言うとれ」
ふーっと煙を吐き出して鼻で笑う。
そんな事言っても、撮影やライブ以外で普通にペアリング付けてくれてんだから。
ホント京君て可愛い。
「ね、今年もアクセ見に行く?京君が好きなブランドまだ行って無いし」
「せやなぁ…最近買ってへんけど…やっぱえぇよ。高いし」
「別に誕生日だからいいのにー…あー、歳の数だけの薔薇とかあげよっか」
「はぁ?キショいわ」
京君は、眉を寄せて灰皿に煙草を押し付けて消す。
歳の数だけ薔薇とかキザだよねー。
京君と薔薇浮かべたお風呂とか入りたーい。
京君は遠慮してるとかじゃ無くて、ホントに欲しいのが今は無いんだろうな。
無理に何か買いたいって言うのは、俺だけのエゴかなぁ…。
「あ、敏弥のソレ美味い?」
「ん?ちょっと苦いよ」
「くれ」
「はい」
京君に俺の珈琲を差し出して、ストローを咥えて一瞬眉を潜めた。
「…ホンマやちょぉ苦い」
「京君は子供舌だもんねー」
「っさいわボケ」
「あはは」
笑って、京君から珈琲が入ったカップを取る。
少し機嫌が悪くなるトコも可愛いと思える。
自分も煙草を取り出して1本咥えて。
自分のライターを使わずに、去年京君にあげたジッポを使う。
1年、ずっと使ってたからちょっと黒ずんで年季が出て来た。
「プレゼントとか無理にいらんよ。ちゃんと祝ってくれとるし」
「そっかそっか。京君は俺と一緒に過ごせるだけで嬉しいと」
「誰がやねん勝手に解釈すんな」
「あはは、京君俺の事大好きだからねぇ」
「誰がやねん、アホか。晩飯にケーキ買って帰ろ。ワンホール」
「晩ご飯にケーキワンホールかよ。チキンでも買って帰ろうよ」
「何でチキンやねん」
「…祝い事ん時ってチキンなイメージ」
「ふーん」
「あっ、それとリボン買って『プレゼントは俺』って感じで俺に巻くのとかどう?」
「ドン引き」
「よし、帰りにリボン買ってこ」
「人の話聞けやお前」
京君が八重歯見せて笑ってカフェオレ飲んで。
あーもう。
こう言う馬鹿話してる時とか、超幸せ。
京君の誕生日だけど、付き合った記念日だし。
そんな特別な日に一緒に過ごせるなんで、超嬉しい。
京君の事大好きだもん。
「プレゼントは俺って事で、夜は頑張らさせて頂きます」
「おぅ、それは頑張れ」
「…帰りホテル行く?」
「や、敏弥んち行く。チキンとケーキ買って帰るんやろが」
「あ、そっか。京君があまりに可愛い事言ってるからつい」
「僕の所為かいコラ」
死ねって笑いながら、テーブルの下で俺の足を蹴って来る京君。
痛いよって言って、灰皿に煙草を弾く。
京君となら、どんな事でも楽しいし幸せ。
大好きだよ、京君。
生まれて来てくれて有難う。
終
20110216
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