今年はチョコレートタワー/京流
仕事で疲れて帰って来て。
玄関のドア開けた瞬間、甘い匂いがしたんは気の所為やなかったっぽい。
なぁ、るき。
ちょっとはイベント事を忘れてくれ。
「あ、京さんお帰りなさーい」
「………何これ」
「いいでしょ。買っちゃいました」
「また無駄遣いしやがって」
「京さん早く座って下さい。俺腹減ったんすよ」
「なら1人で食ったらえぇやろ」
「これ1人で食ってたらヤバいですよ。寂しいですって」
「はー…」
るきがテーブルの上に置いとったモンは、何か…ようわからんチョコレートっぽいんが噴水みたいな感じに流れとった。
前はチョコレートフォンデュとか言うんやっとったけど。
飽きたんか。
そんでこれ買ったんか。
そして今年も晩飯はチョコレートかホンマふざけんな糞るき。
これがあるからるきは何時に帰って来るかとか、飯いるんかとかアホみたいに聞いて来とったんか。
「今日はバレンタインなんで、今年はチョコレートファウンテンです」
「チョコレートファ、?」
「チョコレートファウンテンです。このタワーから流れるチョコを付けて食べるんです」
「…ほんなん見た目変わっただけで前しよったんと一緒やん」
「でもこれ凄くないですか?チョコが噴水みたいに出て」
「うん。垂れ流しやな」
「ちょ、京さんその言い方何か嫌です」
「何でやねん。またまともな飯ちゃうんか」
溜め息を吐いて、何やチョコが垂れ流しになっとる機械の前に座る。
目の前には取り皿っぽいんがあって。
皿には串に刺されたフルーツやらパンやら…マシュマロ?とかそんなんが並べられとって。
マメっちゅーか、暇人っちゅーか。
ようやるわ、るき。
るきがキッチンで何かしよるんを横目に、パンが刺さった串を1本手に取って。
流れるチョコにソレを突っ込んだ。
まぁ、パンにまとわり付くわな、チョコが。
見た目通りに。
食ったらパンにチョコかかった味やしな。
ホンマ、イベント事や忘れとるけど来年から帰って来んとこかな。
「あ!京さんもう食べてんすか」
「うっさい。腹減ってん。これ甘い」
「そりゃチョコですからね。今日はハヤシライスですよー」
「お前…それ先に出せや」
「あは。チョコも食べて欲しいなって」
「…つーか、これも見た目チョコっぽいよな」
「敢えてそれで」
「……」
るきが、僕の前にハヤシライスが乗った皿を置く。
自分の分も置いて。
チョコ垂れ流しな機械の前で、ハヤシライス食べる2人…この機械いらんやろ。
「美味しいですか?」
「ん」
「デザートにチョコレートで」
「いや、こんなに食えんわ」
「頑張れば何とか」
「何やそれ」
るきが作った飯食いながら、るきのマシンガントークを適当に聞く。
食事中に静かにしとれんのかいって思うけど、るきの話は聞き慣れてもて。
悪い気はせん様になったんが問題やな。
「で、バレンタインって、ダメだって言ってもファンの子はチョコ送って来るじゃないですか」
「うん」
「でも手紙だけ貰って後処分する事になってるんですよね。京さんの所にも届きます?」
「知らん。けど、毎年貰ってへんからスタが処分しとんちゃう」
「やっぱ食べ物って食中毒とか怖いですもんねー」
「んー」
「あ、だから毎年毎年、京さんは俺からの本命チョコしか貰わないって事で、イイですね!」
「…そう考えると、るきは毎年チョコ0って事か」
「……俺は京さんのしかいらないんで。京さんと過ごせるだけで幸せなんです」
「あそー。来年は帰って来んとこ」
「もー京さん意地悪言わないで下さい」
「はッ」
結局、何だかんだでるきと話しながらチョコ垂れ流しのヤツ食ってもたんやけど。
しかもるきから『本命チョコです』って言うて、普通に包装されたチョコレート貰ったんやけど。
…僕を太らす気か、コイツは。
るきが色褪せずに好きですって言うて来るんは、悪い気はせぇへんけど。
終
20110214
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