甘い恋人/敏京




「きょーくんっ」
「こっち来んな」
「何で!?」
「お前の手に持っとんは何やねん」
「チョコレート!」
「うん。やからこっち来んな」
「だから何でよ」
「お前のやりそうな事わかるから」
「……」


すげー冷たい目で俺を見てます。

俺の可愛い可愛い恋人の京君は。


だってさぁ、今日はバレンタインだよ?
恋人達のイベントだよ?


やっぱそれには乗っからなきゃ!


と言うワケで、京君のご飯を食べてコンビニ寄った時に板チョコ買って。
一応溶かしたワケです、板チョコを。


それが入ったボールを持って、俺のベッドに凭れてゲームしてる京君に近寄ろうとしたら睨まれた。


うーん。

でも、これだけで俺が何しようとしてんのかわかるとか、京君も案外アレだよね。


そんな事を思いながら、ゲームをしてる京君の隣に腰を下ろす。


「ちょぉ、来んな言うとるやろ!」
「やぁだ。今日はバレンタインだよ京君。恋人達のイベントだよ」
「やから何やねん」
「京君からのチョコが欲しい。って言うか、京君にチョコをかけて舐め回したい」
「…この変態。嫌じゃボケ」


真剣な顔で言うと、京君は嫌そうな顔をしてまたゲーム画面に視線を戻す。


つれないなー。

でももうチョコは溶かしちゃったんだからね!


ボールの中のチョコをスプーンで掻き混ぜて。
スプーンにチョコを掬って京君に差し出す。


「京君、あーん」
「あ?」
「チョコ。あーん」
「…あー…」


どろどろに溶けたチョコを、俺に視線を向けた京君の少し開いた口の中にスプーンを差し込む。


溶けてるけど、チョコだから美味しいでしょ。


「京君」
「…っ、!?」


チョコが入ったボールを傍に置いて、京君の頭を両手で掴んでそのままキスをする。


驚いた京君は一瞬固まって。

そんなのはお構い無しに、ぬるりと京君の口の中に舌を突っ込む。

コントローラーを握る手は、俺の身体を押し返そうとしたけど。
がっちり頭を掴んで離してやんない。

口内を舐め回す様に舌を動かすと、チョコ食べたばっかりだから甘い味。


「ん゛…っ」


舌の裏側をぐりぐりと舌で抉ると京君の口から声が漏れた。

最初は抵抗してたけど、京君はコントローラーを離して。
頭を掴む俺の太股に手を置いて、舌を絡めて来た。

京君の舌に吸い付くと、京君は俺の舌を甘噛みして来て。

甘いし、気持ちいい。


わざと音を立てながら、何度もキスを繰り返す。


ゆっくり京君の唇を舐めて、間近で顔を見つめる。

キスした後の雰囲気って、好き。

俺を見つめて来る京君に目を細めて髪を優しく撫でる。


「もっといる?」
「…いらんわ、ホンマお前ロクな事せぇへん」
「いいじゃん。あーん」
「……。あ、」
「可愛い…」


またスプーンで掬ったチョコを差し出すと、京君は大人しく口を開けて。

そこにまたスプーンを入れる。


口から零れたチョコを舌で舐めながら、またキス。


うん。
ラブラブっぽいね俺ら。

京君大好き。


「…っん、ちょ、とし、」
「黙って」
「あか、」


調子に乗って、キスしながら京君の服を脱がしにかかる。

目的は京君の身体にチョコをかけて舐める事だし。

今この甘い雰囲気だったら京君は流されて許可してくれそう。


とか。
そんな事を目論みながら、ゆっくりと京君のシャツのボタンを外して行く。


「…っ、」


素肌を撫でると、京君の皮膚は鳥肌が立って。

可愛いな、反応しちゃって。


「触んな、って」
「…ダメ?」
「…アカンやろ僕今ゲームしよるし、」
「ゲームはいつでも出来るよ。ね、京君の身体にチョコかけていい?」
「おま、さっきキスしたんでえぇやん」
「やだ。京君の好きなトコにチョコかけてくれたら、いーっぱい舐めてあげる。気持ち良くなれるよ?ね?」
「…ホンマ変態」
「いいじゃん。好きなんだもん」
「……」
「お願い、京君」


眉を下げて、お願いしてみる。

そうすると京君はあんまり強く言えないのは知ってる。

何だかんだで、付き合ってくれるんだもん。


「…バレンタインなんやから、お前からもチョコ寄越せよ」
「うん!俺のにいくらでもチョコかけて舐め回してくれればいいよ」
「アホか。チョコかけて固めて封印したるわ」


呆れながらも、京君は抵抗しなくなって。

自分で背中にあったベッドに上がった。


だから大好き、京君。

恋人達のイベントで、今年もラブラブです。

俺ら。




20110214



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