二重人格的な感じ/京流




むっちゃ寒い。
ありえへん何なんこの寒さ。

少しだけ予定より早く終わって、雪が降っとったしマネにマンションまで送って貰った。


帰る時には止んどったし、道路とかは全然溶けとったけど。


寒いし。

東京で雪とか。
何やねん嫌やわ。


自宅に帰るまでの間、車ん中で寝とって。
マネの声で目が覚めた。


「…京さんすみません。目の前に車停まってるんで、此処でいいですか?」
「あー…、うん」
「明日も迎えに来ますね」
「うん。お疲れさん」
「お疲れ様です」


車から降りたら、あまりに寒くて眉を寄せる。

マネの車が走り去った後、肩を竦めながらエントランスに向けて歩く。

所々に雪が残っとって、明日もこんな寒いかと思うとうんざりするわ。


寒い。
るき先に帰っとんやったっけ。

鍋とか食いたいわー。


マネが言うた通り、僕んちのマンションの入り口前にはド派手な車が停まっとった。


見覚えのある車。


つーか邪魔やねんけど。
何で僕が歩かなアカンねん。


そんな事を思いながら、派手な車に近づいてくと(そこ通らなアカンから)

いきなり車のドアが開いて、人が降りて来た。


「京さんお帰りなさい」
「…やっぱりお前か」


車から出て来たんはるきで。
白い息を吐きながらるきが僕に近寄って来た。


運転席から降りて来たもう1人の人物は確かるきのバンドのメンバー。


何回か会った事ある、れいたとか言う男の車。
よう目立つわ。


チラッとそっちを見ると、僕に会釈をして来た。


「なん、こんなトコに停めたら邪魔やねんけど」
「すみません。雪だったし、米買いたかったんでれいたに送ってもらって。つい話が盛り上がっちゃって…」
「女か」
「やー、楽しくて」
「まぁどうでもえぇけど…飯は」
「今から作ります。今日は寒いからチゲ鍋ですよー」
「そ」


るきと喋っとる間も、着々と体温は奪われてくから。

さっさと部屋に帰ろうかと思って背を向ける。


「ルキー、お前これどうすんのー」
「あー重いかられいた運んでよ」
「はぁ?そんくらい自分で運べよなー。オラ、食材も持って行けよお前。俺の車にスーパーの袋とか何だよ」
「ははっ、似合ってんぜー」
「ねーよ。早く運べって。寒いんだよ、俺は」


れいたとるきのやり取りが聞こえて来て、そっちに視線を向けると。
るきがれいたの車ん中から買ったモンを取り出しとって。


そう言えば米買ったとか言うとったな。
えぇやん、そんなん。

いちいち買いに行かんでも。
お前よく通販とかしよるやん。


れいたが取り出したのは、そこまでデカくはないスーパーの袋に入っとる米袋。


「何だよ。持って来いよいいじゃん、さっきは持って来てくれるっつったじゃん」
「まー、そうだけど。俺は帰るよ。早く持てって」
「やだ。重い」
「お前な…」


僕とおる時には絶対言わへんような事をつらつら言うとるるき。

あぁ、コイツ我儘ならしいな。

れいた君は、僕の方をチラッと見て困っとる顔。


ま、僕が帰って来たから部屋に行きにくくなったって事か。


「もー寒い。れいた早く行こ、う…」
「ギャーギャー煩いわお前ら。僕腹減っとんやから早よ飯作れボケ」
「あっ、京さん重く無いですか?俺が持ちます」
「……」


るきとれいたがおるトコに歩いてって、言い合いしとる中、れいたの手から米が入っとる袋を奪う。

うわ、見た目に反して意外と重い。
ムカつく。


それ持ってエントランスに通じる階段上がって行きよったら、るきが慌てて後を追いかけて来た。

さっきと言うとる事ちゃうぞオイ。


「もーえぇから。寒い。重い。腹減った。腹立つ」
「だから俺が持ちますって。あ、れいた、じゃーな!サンキュ!」
「…おぅ」


るきが振り返ってれいたに礼言うとると、れいたは複雑そうな顔。

ま、そらそうやんな。


るきの変わり身はこっちも呆れる程。


…仲良いからって、僕には言わへん我儘言うんは若干ムカつくけど。

かと言って我儘言われていいか言うたらそうでもないし。


ちょうどえぇんかもしれへんな。


「今日は餅買って来ましたよーチゲ鍋に入れようと思って」
「あぁ、デブの素やな」
「違いますって!」
「デブやん。るき」
「ちげー!!」
「煩い。黙れ」
「……」


こんなアホみたいなるきが。




20110213



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