ある夜の2人の生活/京流
テレビって、夜中通販番組多いよなー。
何か役に立つ商品ねーのかって思うけど。
あんまねーな。
通販実物ちゃんと見えねーけど、便利だよな、マジで。
深夜0時を回った頃。
京さんは時間と精神的に余裕があるのか風呂上がりに柔軟を始めて。
俺は、ソファに座ってその姿を見ながら何度かチャンネルを回してテレビを観る。
明日までの仕事の最終チェックは終わったし。
風呂も入ったし寝てもいいんだけど、まだ寝るには早い気が。
忙しくなったらあんま睡眠時間も取れねーから、寝てた方がいいかもしんねーけど。
せっかくだから、京さんの事見てたいし。
京さん柔軟始めたら長いんだよなー。
この後に筋トレして、また柔軟だし。
風呂上がりだから、ジャージにTシャツって姿で。
炬燵を少し退けて、ラグの上でよくそこまで身体が曲がるねって言いたくなる格好の京さん。
身体造りは怠らない。
そう言うトコが格好良いんだけどね。
「…京さーん」
「何」
ちょっと名前を呼んでみたら、柔軟しながら即答。
ちょっと嬉しい。
京さんは何でも没頭してる時とか、返事無かったりするから。
同じ空間で、俺がいる事わかっててくれてんだって。
「呼んだだけです」
「死ね」
「…ねー京さん。通販番組って、深夜0時から1時の間が一番売れる時間帯らしいですよ」
「……」
「でも俺が見てもあんま欲しい物ないんですよね。同じ商品エンドレスだし」
「無理に買わんでもえぇやろ」
「そうですけど。こんな夜中に通販番組見て買う人いるんだなーって、不思議ですよねー」
テレビには商品説明してる視界の人が映ってて。
全く魅力は感じねー商品だけど、好きな人が観たらいい物なんだろうか。
京さんは、アホらしって言いながらまだ入念に柔軟。
「…アレ買いますか。自宅で運動出来る奴」
「…はぁ?いらんやろ。身体だけあればどなんでも運動出来るわ」
そう言った京さんは、柔軟が終わったのか仰向けに寝て腹筋を始めた。
今回は何回いくんだろ。
300とか、数えるだけで面倒臭そう。
そんな事を筋トレ嫌いの俺は思う。
無心に腹筋をし続ける京さん。
何となく、邪魔したくなる気がする。
「あ、あのDVDとか大量に置いてる部屋って、ちょっと模様替えと言うか…大掃除してもいいですか?」
「……」
「京さんがDVDとか雑誌とか置いてる部屋なんすけど、俺も置いちゃってるじゃないですか。だから新しく棚増やそうかなって思うんですけど…」
「好きに、しー…ッ」
「有難う御座居ます!欲しい棚見つけてるんですよねー。いっぱい収納出来るんで!」
「……」
京さんは腹筋しながら俺をチラッと見て来て。
また無言で黙々と腹筋。
京さんのマンションて部屋数も多いんだけど。
京さんは一部屋CDやDVDや雑誌を置く部屋作ってんだよね。
結構デカい棚だったんだけど、俺が越して来て俺もそこに収納していってるからもうそろそろ全部埋まりそうだから。
ちょっと動かして、新しい棚置くスペースが出来るかなって。
ついでに掃除とかも出来るだろうし。
あー、でも棚デカ過ぎだし業者に頼んだら動かしてくれるかなー。
…京さん手伝ってくんねーかな。
無理か。
京さんから許可貰ったし、さっさとあの部屋大掃除して通販で見つけてたアレ買お。
楽しみだなー。
「…京さん今何回目ですか?」
「百、二…ッ回、」
「何回やるんですか?」
「…ッさいわ!」
「…はーい」
怒られたから、口を閉じてじっと京さんの腹筋してる姿を見つめる。
あーぁ。
構ってくんねーかなーとか思うけど。
下らない通販番組垂れ流して。
愛しい人が日課にしてる事を間近で見て。
俺だけが、その空間にいるって言う普通の日常だけで。
実はすげー幸せな事なんだなって思う。
「…きょーさーん」
「……」
睨まれた。
そう言う顔が、好きだったりするから。
また怒られに構いたくなる俺は。
どうしようもない。
好きだから、仕方ねーよ。
…腹筋起き上がる度にキスしたらキレられっかな。
終
20110205
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