今年の節分も/京流
仕事が終わって帰っとる時。
いつもやったらマンション前で降ろして貰うんやけど、何となくコンビニ寄りたなって。
いつも行きよる、マンションから一番近いコンビニで降ろして貰う。
煙草吸いたかったけど、この糞寒い中、外で煙草吸うんも嫌やし。
諦めてコンビニ店内に入った。
ガムと…あー…何かアルコール買って帰ろうかな。
今日はそんな気分。
るき帰っとんやろか。
飯食ってへんし、何か食いたいけど…大概は何かしら用意しとるし、ない時は連絡来るしなー。
そんな事を考えながら、雑誌コーナーに一通り視線を移して。
何買って帰ろうかとか思っとった、ら。
「…うわ」
「っ!、京さん!」
「煩い」
飲み物のコーナー前で、仕事帰りであろうる、きと遭遇。
店内にしては若干大きいトーンで僕の名前言うから、眉を寄せてるきを睨む。
サングラスしとってもようわかる。
るきの服装ってホンマ独特っつーか、派手やしな。
それにしても。
自宅近くのコンビニやからって、こうも頻繁にるきに会うと何か嫌。
こいつと行動パターン一緒なんかって、ちょぉショックやわ。
「京さんも今帰りですか?」
「うん」
るきと適当に話しながら、アルコールコーナーの缶を2本、るきが持っとったカゴに入れた。
初めて買うヤツやねんけど、美味いんかいな、コレ。
るきはお茶とか、こんな寒い日にアイスとかカゴに入れとって。
「京さんお酒飲むんですか?」
「気分」
「あ、つまみ何か買います?」
「いらん。腹減ったんやけど飯は」
「一応今日買いたい物があってー…」
そう言うるきは、別のコーナーへと足を向ける。
他何か美味そうなモンないかなー…ちょぉコレどうなん。
めっちゃ甘そう。
逆に食ってみたいわー。
陳列を見ながら、るきが立っとるトコまで行くと。
るきが何や巻き寿司手に持っとった。
「何、今日巻き寿司なん?」
「はい、今日節分じゃないですか。だから、恵方巻き」
「……またか…」
「最近コンビニのって海鮮とか、美味そうなんすよ!…スーパー行くのがこの時間なんで無理だったってオチですが」
「えぇやん…巻き寿司なら普通の寿司がえぇ」
「今日はうどんも作りますから!」
「え?何でうどん」
「…巻き寿司のオカズって思い浮かばなくて」
「ふーん…」
また今年もそんな巻き寿司食う時期になったんか。
…そんでまたその太巻き食わそうとしとんかコイツは。
もうえぇやん節分なんか。
でもるきは、太巻きを2つカゴに入れて。
デザートコーナーに目を移した。
好きやな、コイツ。
「あ、京さん、スイーツにも恵方巻きみたいなの出てますよ。美味そう。買っときますね」
「え、」
それも丸かじりするん?
さっき僕が見て甘そうって思ったヤツをるきが手に取って。
ホンマ、見るモンも似たり寄ったりになるんか。
微妙やなー。
「京さん、他に買うのありますか?」
「ガム。煙草は」
「買い溜めしてます」
「なら僕はいらん」
「あー…肉まん食いてー」
「太るで」
「ですよねー」
るきが言いながらレジにカゴを置いて。
店員が作業しとる間、ミント系のガムをカゴに入れる。
「あ、京さん俺が、」
「えぇよ別に」
財布を出して、会計しようとするとるきも財布を出して来て。
それを制止して、金を払う。
「有難う御座居ます」
「ん。帰るで」
「はーい」
釣りを受け取って。
るきと僕が選んだ品物が入っとる袋を、るきが持った。
外に出ると、やっぱ寒い。
腹減った。
うどんとか言うとったな。
早よ帰りたい。
「京さん京さん。何か豆オマケでくれたんすけど。節分だからですかね?」
「あーそーなんちゃうー」
「豆撒きしますか。ベランダに出て」
「寒いし怠い。出た瞬間閉め出したるわ」
「ちょ、凍死しますよ!」
「…アレや。『鬼は外』って言うやん」
「俺は鬼じゃありません。どっちかって言うと、京さんの方が鬼が似合います」
「ふーん…そうなんやー。じゃ、出てこか」
「え!?嫌です!うちは『鬼は内』でいきますんで!」
「……」
るきの言葉で鼻で笑う。
アホやな、るき。
るきと2人、星が見えへん夜空の下で帰路に着く。
節分とか、るきと何回目やろ。
アホやと思いながら、一緒におる僕も。
何だかんだでアホみたいや。
「今年はどの方角向くんでしたっけ?」
「知らん」
終
20110203
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