るき@※/京流




夜。

先に帰っとったるきは、何や手作りでハンバーグ作っとって。
ホンマにコイツ、料理のスキル上げていきよるなーって思いつつ。

飯食った後、携帯見て少し明日の仕事を確認して風呂入って寝よかって考えとったら。
るきが何か皿に乗せたケーキを出して来た。

何や黒いし、チョコレートケーキっぽい。


「なん、これ」
「ガトーショコラです。うちのメンバーが作ってくれて…デザートにどうぞ」
「ふーん。ケーキて…何でまた」


しかも夜に食うモンちゃうやろって思ったけど、比較的美味しそうやったから。

添えられたフォークを手に取る。


「あー…今日俺、誕生日だったんで」
「…は?」
「2月1日。誕生日なんです。だからメンバー…まぁ、リーダーなんすけど、ケーキ作ってくれて。あいつ料理上手いんで」
「そう、やったっけ」


イベント事は、るきが煩い癖に。
今回に限って何も言うて来んくて。

今日が誕生日って、もうすぐ終わるやん。


何や、ルキの誕生日なんかどうでもえぇ筈やのに。

前は覚えとったし、祝ったった事もあるのに。
今回はすっかり忘れとった。


「もう誕生日で喜ぶ歳でも無くなったし…仕事忙しいですしね」
「まぁ…せやな」


やから今日は少し料理が凝っとる感じやったんやな。


「あっ、でも京さんの誕生日はちゃんと祝うんで!」
「はぁ?多分仕事やしいらんわ」
「…俺も、多分仕事です…」
「月日経つんは早いわ」
「ですよね…。あー、でも俺もケーキぐらいは作れるようになりたいなーって。このケーキも美味いし」
「あぁ、確かに…」


目の前の黒い塊は、確かに店で買って来たように美味い。

甘過ぎず、でも味が無いってワケでもない。
口当たりがえぇ感じ。


「…京さんに誉めて貰えたら、うちのリーダー喜びますね」
「何がやねん。これはお前にくれたヤツやろ」
「そうですけど…『京さんと食べてね』って言われたんで」
「ふーん」


同じバンドのメンバーやったら、誕生日覚えとるモンなんやな。

昔は色々やったけど今はそんな歳ちゃうし…声掛けるぐらいになったけど。


るきの右耳には、前に僕がやったヤツがずっと付いとるんが見える。


こう言う時だけ。
全く自己主張ないねんな、コイツ。


このケーキを作った奴が知っとって、僕が知らんってか忘れとったって言うんが。

何か、ムカつくんやけど。


「あ、京さんて誕生日欲しい物あります?」
「いらん」
「えー!何かないですか?」
「言うてもそんなすぐ思い浮かばんし」
「あ、確かにそうですね」
「……お前は」
「え?」
「お前は何か欲しいんないん」


そう言うと、るきは一瞬驚いたように固まって、すぐに目を細めて笑った。


「俺は京さんと居ればいいんで。強いて言えば、欲しいのは京さんです」
「…なん、それ」
「京さんにリボン巻いて『自分がプレゼント』って言ってくれればそれで、」
「キモ」
「…わかってます。わかってますから、そんな目で見ないで下さい」
「るきホンマに気持ち悪い」
「…『キモい』って言われるより傷付くんですけど」
「はッ」


るきの発言て常識を超越しとる気がする。

ホンマきもいわぁー。

ケーキは美味しかったけど。















「…京さん、」


僕が先に風呂に入って。
洗い物とかしとったるきが後から入って。

るきが入っとる間、仕事の確認してベッドに入る。

上半身を起こして枕を背凭れに携帯をチェックしよると、風呂から上がったるきがベッドに上がって来た。


部屋は明かりを消してへんし、まだ日付が変わらん時間。


るきが無意識なんか意識的なんか、甘えた声を出して僕の方に擦り寄って来た。

布団の上から、僕の足辺りを手で撫でる。


風呂上がりで、香水も何も無いシャンプー匂いが鼻腔を擽る。


あからさまな誘い。


携帯から目を離さんかったら、るきが首筋に顔を埋めて。

薄い皮膚に吸い付いて来た。


音を立てて離される唇。


今日はコイツの誕生日。

やから、素直にコイツの誘いに乗ったってもえぇけど。


「…お前、プレゼントに僕が欲しいって言うとったな」
「え?…ッ、」


るきの腕を掴んで、シーツへと押し倒す。

るきがじっと僕を見上げて来て。


「ほな今日は、るきの好きな事したるよ。何して欲しいか、言い」
「え?え、京さ、」


言葉の意味がわかっとらんのか、目を泳がするきに笑って。

部屋着のスウェットを剥ぎ取ってった。




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