内外からの温かさ/京流
深夜。
仕事で疲れて帰って来て。
風呂も早々に入って、眠いし速攻で寝た。
…けど、逆に身体が疲れ過ぎて目が冴えて寝れへん感じ。
糞。
明日も仕事やのに何やねん。
まだるきは帰って来てへんくて。
一人で寝るには広いベッドの上で、布団を巻き込み寝返りを打つ。
エアコンと加湿器がフル稼働しとるけど、あんま音がせんヤツ買ったからか。
時計の音だけが暗闇の中に響いて。
静かな中やから、その音に耳を澄ましてもうて気になってしゃーない。
目は瞑っとるけど、まだ暫く寝れんのかーって思っとると。
何となく、玄関の鍵が開く音が聞こえた気がした。
るきが帰って来たんか。
遅くまでご苦労な事で。
同じ業種やから、擦れ違いになったりもするけど。
逆に夜型で会ったりするから、合っとると言えば合うんかもしらん。
僕と、るき。
わかっとるから、女みたいに面倒な事言わんしな。
────アカン。
るきが帰って来て、ゴチャゴチャ脳内で考えよったら余計に寝れんくなって来た。
ムカつく。
目を開けて、布団を捲って起き上がる。
ベッドから降りて、寝室のドアを開けるとリビングの明かりが漏れて光の線を作っとった。
るきが帰って来とんやったら、何かあったかいモンでも作って貰おう。
したら寝れるやろ。
リビングへのドアを開けると。
るきがソファに沈んだ様に座り込んどった。
「…るき」
「ッ!!…京さん、びっくりした…起きてたんですか」
「寝られへん」
「何か温かい飲み物でも作りましょうか?」
「頼むわ」
るきは僕が声かけたら、ビックリしたんか身体を跳ねさせて。
疲れた顔晒して、こっちを振り向いた。
立ち上がって、キッチンへ向かうるきと入れ違いに僕がソファに座る。
背凭れに身体を預けて。
るきがキッチンでゴチャゴチャ動いとる音が聞こえて来た。
暗闇でもないし、もう慣れた生活音。
目を閉じてそれを聞いとると。
こっちの方が心地良く聞こえる。
「京さん、どうぞ」
「ん」
「俺風呂入りますね」
「…るき」
「え?」
「これ何?白いんやけど。牛乳?」
るきからカップを受け取って、中身を見ると何や白い液体。
甘い匂いはするけど…何これ。
「あ、それ今日買って来たんです。白いココアって言うのが新発売したんで」
「ココアなん?」
「らしいですよ。白いって面白いですよね。味見したら美味しかったです。ホワイトチョコみたいな」
「ふーん…」
るき新商品好きやもんなぁ…。
そんな事を考えながら口を付ける。
口内に甘い味が広がった。
温かさが身体に染み渡る感じ。
確かにホワイトチョコを液体にしたような、甘いけど嫌な甘さではない感じのモンやった。
「…どうですか?」
「普通に美味い」
「よかったー。じゃ、俺シャワー浴びて来ます」
「んー」
るきは力無く笑って、風呂場へと消えて行った。
るきも相当疲れとんな。
ココア…と言うんかどうか疑問な飲み物をちょっとずつ飲みながら、ソファに両足を上げて座ったまま。
自分も寝られへん苛立ちが、温かさで緩和されて行くんを感じた。
「…京さん、俺もう寝ますけど」
「あー…僕も寝る」
多分、るきもシャワーだけ浴びてさっさと出て来たっぽい。
ドライヤーもそこそこに、ごっつ疲れた顔したままリビングに来た。
僕は僕で、ボーッとしながら白いココア飲みよったから。
いつの間にか、こんな時間経っとったんや。
ココアを一気に飲み干して、テーブルに置いた。
るきと2人で寝室に入って。
溜め息を吐きながらさっきまで入っとった布団に、また身体を滑り込ませる。
今度は、るきも一緒に。
「…あー…もうマジ眠い…」
「…とか言いながら何くっついて来とん」
「…充電です。京さんを充電したら、俺はまた明日から頑張れるんです」
「あっそー…」
擦れ違い生活んなっても。
お互いが仕事優先で。
お互いがその事わかっとって。
それでえぇって思っとったけど。
…たまには、こう言う風な事も必要なんか。
なんて。
柄にもない事考えてもうた。
身体が温まって、いい感じに眠気が来たから精神的に余裕が持てたからかもしれん。
るきも疲れとったんか。
ベッドに入って僕にくっついて来てすぐに寝息が聞こえて来た。
そんなるきの身体に腕を回して。
温かい身体を密着させて、僕も目を閉じた。
今度は上手く寝れそうや。
おやすみ、るき。
終
20110131
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