恋人以上の存在/京流+薫




打ち合わせをしとった休憩時間。

ずっと根詰めるもしんどいし。

スタッフが淹れてくれた珈琲を両手に、京君が座っとったソファの隣に座る。


「…なん、薫君」
「珈琲。飲むやろ」


京君はソファの端っこに座って、眠そうに肘ついとって。

その前の菓子とかが置かれとるテーブルに京君の分の珈琲の入った紙コップを置いた。


「…どうも」
「京君大丈夫なん、体調とか。最近寒いし」
「いける。眠い」
「あんま寝る時間無いしな。いつ終わるかわからへんし」
「んー…」


目を開けて、軽く伸びをした京君は俺が置いた珈琲に手を伸ばして一口飲んだ。


まぁ確かに、京君は眠そうやけど顔色はそんな悪くないし、よかった。


そう思いながら自分も珈琲に口をつける。


「最近どうなん、ルキ君と」
「普通」
「そっか順調ならよかった」
「うん」
「またルキ君の手料理食いたいわー」
「…え、また来るん?」
「アカンのかい」
「アカン事もないけど…寧ろるき喜ぶやろし」
「そら嬉しいな」
「よう挨拶したいって言うとるしな」
「あ、そうなん?」
「うん。でもまぁ…嫌やん。色々と」
「……」
「やから、喜ぶんちゃう」
「そっか」


少しずつ珈琲を飲む京君の横顔を見つめて。
昔の癖で、頭を撫でようと一瞬指が動いてそれを止める。


京君はホンマ落ち着いたけど。
今でも時々、昔のように危なっかしいイメージが払拭出来へん時がある。


各々、好き勝手に休憩時間を過ごすメンバーに視線を向ける。


「…あ、噂をすれば」
「ん?どしたん?」
「るきからメール」


京君とソファに並んで話しとったら、ポケットから京君が携帯を出して開く。

携帯をイジりながら画面を見て鼻で笑う仕草をした。


「…どしたん?」
「や、るきって時々、自分写メって来んねん。新しい髪にしましたーとか、今日の衣装はこんな感じですーとか」
「はは、若いなー」


そう言いながら、京君は俺の方に携帯を差し出して来たから、その画面を覗く。


そこにはえらいデコられたメール画面と、ルキ君と誰か知らん人が写った写メがあった。


『髪の毛の色変えてセットしたんですけどどうですか』って言葉付きで。


「ルキ君こんな顔やったっけ」
「…化粧しとるから感じちゃうんちゃう」
「そう言えばそうやな。この隣におるんは?」
「あー…確か、れいた?とか言う奴やったと思う。るきと仲良いらしいねん」
「ふーん。パートは?」
「知らん」
「知らんて…ちょっとはルキ君のバンドに興味持ったりぃや。時々ライブは行っとんやろ?」
「まぁ…。でもるきのバンドは興味ないし。るきが来い来い言うから行くだけ」


そう言いながら京君は、テーブルに置いてあったお菓子に手を伸ばして。
個包装を開けて食べ始める。


ツレへん事言うなぁって苦笑い気味にしながら、京君の携帯に写し出されたルキ君を見つめる。


前に会ってから、何ヵ月か経っとるし、会った時は明るい印象やったけど。

京君の事好きなんやなって思う感じやったし。


化粧しとると、いかつい感じになるんやなー。

こう言うメール送って来る辺り、やっぱルキ君は京君が好きなんやなぁって思うわ。

自分がえぇと思うモンは、好きな人には見て欲しいモンやしな。


「京君も送り返したったら。自分の写メ撮って」
「嫌やし何で僕がそんな事せなアカンの」
「かわえぇやん、何か」
「…いや、薫君の言うとる意味がようわからんのやけど」


訝しげに俺の方を見ながら、差し出した自分の携帯を受け取る京君。

俺が京君の携帯で京君を写メって、ルキ君に送ったったらルキ君喜ぶんやろなぁ。


「何や2人、微笑ましいなって」
「…知らん」
「うん。でもま、順調そうで安心やわ」
「…なんそれ」
「意味わかるやろ」
「……」


京君は視線を落として、携帯をイジる。


チェックしよるワケちゃうけど。
やっぱ京君には幸せになって欲しいねん。


もう、えぇやろ。
落ち着いても。


「…もうそろそろ休憩終わるな」
「眠い。帰りたい」
「今日のノルマ終わったら帰れるやん」
「…はー…」


珈琲を一気に飲んで立ち上がると、京君は嫌そうな顔をして体勢を整えて寝入る体勢。

そんな彼に苦笑いを漏らす。


荒んどった時よりかは、全然顔色も良くなった寝顔で。

その顔を見る度に嬉しいなる。

ルキ君のお陰やなって。


大事にしたってや。


お互い。




20110130



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