好きから来る甘やかし/敏京
「あー外さっむい」
「やっぱ夜は冷えるよねぇ」
「もう11月も終わりやしな」
「あっという間に年末だよー。年越しも一緒にしようね」
「ん」
「あ、その前にクリスマスがあるか」
「仕事ちゃう」
「えー。夜は一緒に過ごそうね」
「はよ終わったらな」
仕事帰り。
当たり前のように敏弥と帰宅。
どっかで飯食って帰ろかって事なんやけど、外出たら寒い。
はよ暖かい室内行きたい。
何やこのクリスマスに向けて浮かれとる雰囲気の街の装飾もウザい。
当たり前のようにイベント事を一緒にしようとする敏弥。
まぁ、断る理由もないけど。
「ご飯どうするー?」
「んー…あ、あれ食いたい。カレー」
「…あぁ、あのカレー屋さん?じゃ、行こっか」
肩を竦めて歩きながら、周りの店を見渡す。
したら、某チェーン店のカレー屋を発見。
何となく食べたなってそこを示すと、敏弥は僕に笑顔を向けてそのカレー屋へと足を進めた。
名前はよう知っとるけど、敏弥と来るんは初めてかもなーって思いながら店内に入ってテーブル席に着く。
やっぱ店内は暖かくてえぇわ。
取り敢えず、普通のカレーにしよかな。
トッピングいっぱいありすぎてようわからん。
あ、このオムレツとかえぇなぁ。
メニューを見て、どうしようかなって思いながら顔を上げて敏弥を見る。
「敏弥なににするん」
「え、俺はハヤシライスにするよ」
「カレーは?」
「……俺、辛いの苦手で店のカレー食べられないんだよね」
「は、マジか。先言えや」
「んー大体別メニューあるから平気かなって」
知らんかった。
カレーを一緒に食べる機会が無かったとしても。
そんなん店に入る前に言うとけ。
まぁ、僕が言うたから入ったんやろけど。
店員に注文して、出て来た水を一口飲む。
「敏弥めっちゃ酒飲むのに辛いん苦手なんや?」
「うん。香辛料が苦手かなぁ。家でカレー食べるなら星の王子さまなら大丈夫」
「…名前聞くだけで子供向けっぽいんやけど」
「そう、だから辛くないの」
「甘いの苦手やのに」
「ねー、不思議」
そう言うてにこにこ笑う敏弥。
付き合う前からも友人関係でよく遊びに行ったりしとったけど、まだ知らん事もあるんやなぁ。
「でも苦手なんやったら先に言え」
「えー京君が行きたい所に行きたいしなー」
「僕ばっか優先しとんな」
「いいじゃん。俺がそうしたいの」
僕が好きって、そんな視線で。
そう答える敏弥。
何だかなー。
言うとる事はわかるし、それが敏弥やからって言うので納得はするんやけど。
「……お前なぁ、僕にもそう言う感情あるん、考えんの」
「え、」
「お前ばっかちゃうんやけど」
「え、え、今めちゃくちゃ可愛い事言ってる?」
「うるさい」
声を落としてそう言うと、敏弥は一瞬きょとんとした顔で。
そんで一気に笑顔になって嬉しそうにした。
何となく、敏弥のする事にムカついただけやアホ。
って、知らんかった事に対する八つ当たりでもあるんやけど。
「ここが店内で残念だなー」
「人目あるからな」
「ね、早く帰りたい」
「飯食ってからな」
「うん」
機嫌がえぇ敏弥。
目は口程に物を言う、って言う言葉がピッタリな表情。
そんな視線で見られるんは、ここが2人きりではない店内と言う事もあってむず痒い。
けど、好き。
そしたら、注文したモンが運ばれて来て。
お互いの前に置かれた皿。
「敏弥ぁ、僕の食べてみる?どんな反応なんか見たい」
「……あーんしてくれるなら根性で食べる」
「やっぱナシ」
「えー?俺の食べる?あーんで」
「絶対いらん」
ここ何処やと思っとん。
家でやれ、家で。
……いや、家でも嫌やわ。
何か最近、敏弥の行動に感化されてきとるんちゃうか。
目の前で笑う敏弥を見ると、それでもえぇかって思うけど。
終
20201129
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