撮影日の朝/京流





次の日が撮影で朝4時って事で、早めに風呂に入って寝る準備はしてるんだけど。
寝室もエアコンで温度調節して加湿器つけまくって、寝る頃にはいい感じになってるかなぁ、と思いながら。

途中で京さん帰って来て、少しでも一緒に居たかったからソファーに座った京さんの隣に座って話をする。
まぁ俺が一方的に話す事の方が多いんだけど、たまに京さんは相槌を打って、目線はテレビの方。

新しく買った映画を観てるらしい。

俺も気になるけど、これ最後まで観たら寝る時間遅くなるしなー。


俺は俺でTwitterの返信とかしてる訳だけど。
あーもう22時か。

寝なきゃなぁ。

せっかく京さんと居るけど。
京さんまだ寝ないだろうし。


その場で伸びをして、ソファーから立ち上がる。


「京さん、俺先に寝ますね」
「…なん、早いな」
「明日撮影があって。4時起きなんですよー」
「…ふーん」
「寝不足だとコンディション酷そうなんで」
「あー…」
「起こさないように行くんで」
「はいはい」
「おやすみなさい」
「………」
「…ぃたッ!」
「テレビ観えん」


京さんは俺の方をチラッと見て、適当に返事をしながらまたテレビに視線を戻した。
そんな京さんにおやすみのキスの意味を込めて身体を屈ませて唇に軽くキスしたら髪の毛掴んで引っ張られた。

痛い。

すぐ離されたけど。


「俺よりテレビがいいんすか」
「うん」
「………」
「……え、寝たら?」
「…京さんのバカ」
「あ"?もっぺん言うてみ」
「おやすみなさーい」
「………」


京さんが眉を寄せて俺の方を見たから、そそくさと寝室へと向かう。
あれ以上何かすると多分寝かせてくんないから。

長年一緒にいるって、慣れもあるし行動パターンもある程度把握出来るし。
深追いはしなかった京さんは、そこまで機嫌を損ねた訳では無いらしい。


適度な温度と湿度が保たれた寝室で1人で寝るには広いベッドに潜り込む。
iPhoneをのアラームを4時にセットして、振動だけで起きるように枕の下に置いた。


その枕に顔を埋めて、こんな早い時間に寝れんのかな、と思いながら目を閉じる。

久々の撮影は楽しみでもあるし。


















寝れない、と思ってたけどいつの間にか寝ていたらしい。
枕の下に忍ばせたiPhoneのバイブ機能の振動で目が覚める。
手探りで探して、アラームを止める。

4時。
まだまだ外は暗いだろうし、寒いかなー。

iPhoneを操作しながら欠伸を噛み殺し、隣で寝ている京さんが起きてないか確認する。

大丈夫っぽいな。


暗い寝室で、段々目が慣れて来て。
俺の方を向いて眠る京さんの寝顔もわかって来た。


寝ている時は本当に幼い。
見慣れた顔。
そして、大好きな顔。

起きたら隣に京さんがいるとか、幸せだなぁって思う。


…いつまでも寝顔見ていられるけど、いい加減準備しねーと駄目だろうな。

横向いて寝てるから、京さんのこめかみにキスをしてゆっくりと起き上がる。


暗闇の中、何となくわかる家具の配置でクローゼットを開けて今日着る服を出す。
いやまぁ暗くてよくわかってねーけど。
多分大丈夫な、筈。

昼は暑いけど、朝は寒いだろうしジャケットどうしようかなー。

寝室は空調調節してるから暖かいけど。

そんな事を思いながら着替えて、寝巻きにしていたスウェットを持って寝室から出て。
そのまま洗濯機の中に放り込んだ。

乾燥までしてくれるヤツだけど、乾燥終わったらすぐに出したいし帰ってからでいいか。


つーか、廊下寒ッ。


iPhoneを弄りながらリビングに繋がるドアを開けて、キッチン側の電気だけ点けて冷蔵庫を開ける。
朝早すぎて飯食う気にはならねーし、水だけでいいか。

冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、一口飲んで。

煙草…は、あっちか。


リビングの方のテーブルに置いた、自分の煙草ケース。
背後のキッチンの明かりだけでソファーに座って煙草を咥えて火を点けた。

あんまゆっくりはしてらんねーな。


煙を吐き出しながら、暗い中、テーブルに置いた京さんチョイスのDVDパッケージが目に入る。
昨日の痕跡。


それが当たり前の日常で。
そう言うなが、幸せだなって感じる。











「………京さん、いってきますね」


寝室に入って、ジャケットを着て寝ている京さんを起こさないように静かに声を掛ける。

間近でじっと寝顔を見下ろして、好きだなぁって思ってると。
京さんが少し身じろいだ。
仰向けになって、薄く目を開く気配。


起こしたかな?って慌てて身を引こうとすると、京さんの腕が伸びて来て。


「え…っ!?」


服を掴まれて引き寄せられ、咄嗟にベッドに手を付くと京さんに触れるだけのキスをされた。

そして、ぽんぽんと顔を軽く叩かれる。


すぐに京さんは布団を巻き込み、また横になって寝入ってしまったようだけど。


俺は一連の行動に、固まったまま。


寝惚けてるんですか。

可愛すぎませんか、それ。


無意識だと、そんな風に甘やかしてくれんの。


本当、好き過ぎる。


その仕草だけで俺の心は満たされて。
今日も撮影、頑張ろう。




20201118

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