好きな身体/京流





るきと寝室でヤッた後。
ベッドに寝転がって煙草を吸う。

寝室は加湿器も置いてあるし、空調も整えてあるから裸でも全然大丈夫やけど。
汗かいたしまたシャワー浴びて寝よかなぁとか、そんな事を考えながらるきの方に視線をやる。

枕に顔を半分埋めて息を整えていたるきは、じっと僕の方を見ていて視線が合う。


こいつよう僕の事見るなぁ。
もう慣れたけど。


「…京さん、水…」
「んー」


掠れた声のるき。

サイドテーブルに置いてあるペットボトルの水を手にしてるきに渡すと、肘を付いて顔を上げたるきが、ありがとうございます、と受け取った。

見える首筋や肩には僕が付けた噛み跡や赤い鬱血が出来とって。
会わん時は全然会わんけど、最近はよく家で会うから跡が消える事が無く。
噛み付かれるの好きなるきやから、しゃーない。


一口水を飲んだるきはペットボトルを枕元に置いて、また枕に顔を埋める。


僕は吸い終わった煙草をサイドテーブルに置いた灰皿で揉み消した。


「……お前風呂入らなヤバいんちゃう」
「そうなんですけどねー…めんどくせぇ…」
「まぁ、それはわかるわ」
「ヤッた後って何でこんな怠いんすかね」
「ゴム着けたら後処理楽なんちゃう」
「え、それは嫌です。京さんに中出しされるの好きなんで」
「………」
「ゴム着けたら京さんとの間に隔たりがあるじゃないですか」
「あぁ、うん。もうえぇわ」


何か熱が入り出したるきを適当にあしらう。
ちょっと元気になって来たらしい。


「じゃー京さん、刺青見せて下さい」
「じゃーって何」
「いつも裸でないと見えないんで」
「裸の時めっちゃ見とるやろ」
「毎日見ても飽きません」
「そー」


何やまた面倒な事言い出した。
さっきまでヘロヘロやった癖に回復して来たらこれか。


るきが嬉々として身体を起こして来て、僕の上半身に描かれた刺青を見る。
いつもいつも、飽きもせず。


完成までずっと見て来たやろ。
筋彫りから何から。

まぁ彫っとる最中は痛いから触るなって言うてバックでするか、どうしても抱き着きたいるきの手を拘束してヤッとったからな。
完成したら『触ってもいいですか?』ってずーっと、触っとった気がする。


「京さんの身体、すげー格好いい…」
「………」
「刺青もよく似合ってます」
「よう聞いたわ」
「何度でも言いたいです。本当に、好き。京さんの身体」
「………」


僕の左側に寝転がって、うつ伏せで肘で身体を起こして。
うっとりとした表情で僕の身体の刺青を指がなぞる。

喉仏から、腹筋まで。

劣情なんか感じさせへん、ホンマに刺青を愛でる感じ。


何かもう拒否るんも面倒で好きにさしたったけど。
後戯にはちょっと足りへんのちゃうん。


「へぇ、身体だけなんや?」
「え…ッ」


腹筋で身体を起こして、るきの手を掴んでそのまま身体を反転させるように引っ張る。
るきの身体を跨いで、押し倒す形。

やっぱ見下ろされるより、見下ろす方がえぇ。


「るきは淫乱やから?僕の身体さえあればえぇんやね」
「……京さんの全部が好きなの、わかってますよね」


笑ってそう言うと、るきはちょっと不満そうな表情をして僕を見上げた。

知っとるよ。

やから許してやっとるやろ、触る事も。

僕の一番傍に、いる事も。


「僕もなぁ、お前の白い肌と感度のえぇドMな身体、気に入っとるで」
「…身体だけっすか」
「るきが言うたんやろ」
「……意地悪」


るきの掴んだままの腕を口元に引き寄せて、ゆっくり掌を舐める。
ピクッと指が動いて、指と指の間を舐めるとるきの目が細められて、欲が瞳に滲む。


「京、さん…」
「オラ、触りたいんろ。触ったら」
「ぁ…っ」


舐めたるきの手をそのまま僕の身体に這わせるように下へと下ろして行ったら。
るきの視線もそれを追うようにしていって。

手を離してやったら、るきの腕が僕の背中に回って来た。


「なん、もうえぇの」
「………したい、です…」
「身体目当てやもんなー?るきちゃん」
「違…ッ、京さんだから…っ」
「はは、どうだか」
「…ッ、」


何かまだ言おうとしとったるきの唇に噛み付く。
すぐにるきの足が足に絡んで来て。


散々ヤッて風呂入ろうと思っとった筈やのに。


2人が密着する。


肌。
声。
身体。


言葉とは裏腹な僕の愛撫を受けて、るきはまた身悶える。


想いを伝えるのに饒舌な事って、これが一番やろ。




20201105

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