悪戯して/敏京




「敏弥ぁ、トリックオアトリート。お菓子くれても悪戯するで」
「何か違うよ京くん」


仕事場での休憩中。
京君と仮眠室に行ってごろごろ。

つっても、眠いって言ったの京君だけで、俺はついて来ただけ。
だって一緒にいたいもん。

でも、一緒に寝てごろごろしてた京君は思い付いたかの様にそのセリフを言って、寝ている俺のお腹に跨がって来た。

ちょっとセリフが違うんだけど。


「何か今日ハロウィンやって聞いてな」
「うん」
「いつも敏弥が何か言うて来るから、僕から言おうかと思ったん」
「京君が珍しいね」
「お菓子の強奪は先に言うたもん勝ちみたいやん」
「強奪って」


京君の言葉にちょっと笑う。
毎年、俺が煩く言って来たけど今年は京君が乗って来たみたい。

まぁ仮眠室って畳の部屋で荷物置き場ってだけで特に何も無いんだけど。


「お菓子持って無いよ」
「無いんかい。僕の為に用意しとけや」
「だから悪戯してよ」
「…………また潮吹かせたるから縛るモンない?」
「やだやだやだ!もっとえっちな悪戯にして!」
「はぁ?我儘やな」
「あれキツいからやだ」
「やからするんやろ」
「意地悪」
「今さら」


俺を見下ろしたまま鼻で笑う京君。

可愛いなぁ。

2人っきりだとイチャイチャしてくれる彼。

あー…仮眠室の鍵締めたかなー。

でもそんなに休憩時間も無かった気がする。


「まぁそれは帰ってからやるわ」
「結局するのかよ」
「やって敏弥かわえぇから」
「ん、」


京君が俺の頭の隣に手を付いて。
ゆっくり顔を近付けながら笑う。

唇が重なって、何度か啄むだけのキスをされて。
その行為が心地良くて。
俺の上に乗る京君の身体に腕を回す。


「…としや」
「ッ、耳ダメっつってんじゃん…!」


唇から顔へとキスが移動してって、わざと京君は俺の耳元で囁くように俺の名前を呼んで。
そのまま耳たぶを甘噛みして来た。

耳からぞわぞわした感覚が身体を這って思わず京君の腕を掴むと、京君は身体を起こして。
逆に手首を掴まれて一纏めにされて頭上に拘束される。


京君を見上げるとめちゃくちゃ楽しそう。

スイッチ入った時の京君の笑みはエロい。


「京君…!?」
「ダメちゃうやろ?悪戯して欲しい言うたやん」
「そう、だけ、ど…ッ」


また京君は覆い被さって来て。
俺の耳の中に舌を入れて、聴覚が犯される。


自分の意思とは関係無くビクッと身体が震えて、軽く息を吐く。
そんなんでやり過ごせる筈も無く、京君は止めてくれないし腕も抜けないしどうしようもない。


凄く、興奮する。
この状況。


「京、くん…っ、」
「…とし、かわいい」
「ん…ッ」


ダイレクトに京君の声が聞こえて。
アノ時の声に似てる声。


噛み付かれて、耳に沿って舐め上げられる。

京君の舌が熱い。

キスする音と、耳から首筋へと唇が流れて。
耳のすぐ下辺りに吸い付かれた。


京君からの愛撫に浸ってると、不意に京君の身体が離れる気配。


「あ、休憩終わりそうやから行くわ」
「……え!?」


そう言う雰囲気を出してたのに、いきなり京君は素の声に戻って。
拘束してた俺の手首を離して、身体の上から退いた。


え???
終わり???


終わり!?


「ちょ!もう行くの!?」
「当たり前やん。ここ何処やと思っとん」
「続きは!?」
「家やろ」
「生殺しじゃん!!!!」
「そうやで」


慌てて身体を起こして、京君を引き止めようとするけど。
それをかわされて笑いながら靴を履いてる京君。


「やから言うたやん、悪戯するでって」
「そうだけど…!」
「家でたっぷり可愛がったるから、楽しみにしときー」
「…マジかよ」


そう言って休憩室のドアを開けて、京君は部屋から出て行った。

珍しく仕事場でこう言う事するんだなーって思ったらこれか。


京君の意地悪。


京君に噛まれた耳が熱い。
弱点だってわかってるから、あんまりされた事無くて。
ここぞとばかりに責めてくんの。

いつまでも慣れない。


家に帰ったら絶対、俺が可愛がる。
そう心に決めて、立ち上がって自分も部屋を出て行った。




20201031

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