絡み付いて、離さない/京流




京さんと2人、男同士で入っても広い風呂に入る。
俺が入浴剤にハマッてるから、今回は乳白色のヤツ。
結構いい匂いだから、買って正解だったな。

悠々と入れる筈の湯船に、ピッタリ身体を密着させるように京さんの身体に凭れる。
向かい合うのも京さんの顔が見れるし好きだけど、京さんと密着出来るこの体勢も好きだ。
今では当たり前になりすぎて、咎められる事もないし。

自分の肩に湯をかけながら、温かく心地よい時間が流れる。
京さんの右肩に頭を預けてるから、左側を向くと間近に京さんの横顔が見えた。
って言っても、目が悪いからそんなはっきり見える訳じゃねーけど。


「…何」
「見てただけです」
「…そー」
「好きだなって」
「知っとる」


はー、と溜め息を吐いて浴槽の縁に手を掛けて濡れた髪を撫で付けた。
その腕には余す所なく刺青が。
動く腕に描かれているソレは、ライブ中は蛇みたいだな、とも思う。


自分の腕にも増えた刺青だけど、京さんには及ばない。


結構、反対されていたから、初めて刺青を入れた時は怒られるかと思ったけど。
案外、あっさりと受け入れられたから拍子抜けした。


『覚悟があって入れたなら別に好きにしたらえぇやろ』


そう言う京さんに、やっぱりこの人の事が好きだなって思ったっけ。


そんな事を思いながら、ぼーっと自分の腕を見ていると、京さんの右手に右腕を掴まれた。


「なん、またどっか彫るん」
「まだ決めて無いです」
「ふーん、まぁまぁ増えたなぁ」
「京さんには及びませんけど」
「お前の肌白いから、弱いかと思ったけど、綺麗に色乗ったな」
「そこは安心しました。彫り直しは時間との兼ね合いもありますからねー」


俺の腕を上げて、親指の腹で皮膚をなぞる。
本当、綺麗に定着してくれて良かった。
彫ったばかりの時は痒かったり色々大変だったけど。


「きっちりとファンにお披露目してないんで、凄い色々聞かれたりするんですけどね」
「へぇ。ま、必ず見せるモンやないしな」
「全体図は、京さんだけが知ってればいいんです」
「僕だけなん?衣装合わせあるやろ」
「そんな全部脱がないですよ。俺も京さんの足のように、絶対見られない所に彫ろうかな」
「まぁ1回入れたら再現なく入れてまうからなぁ」
「それはわかります」
「……絶対見えへん所なら、此処に入れんの?」
「…っ、」


ぱしゃっと、掴んでた俺の腕を湯の中に落として、乳白色で見えない身体の臍の下を、京さんの指が這った。
わざと声を低くして、間近にある耳元で囁かれて身体が震えた。
わざとやってるんだろう。
俺が、京さんの声に弱いのは知られているから。


「…京さんのモチーフと、名前を入れてもいいなら」
「何や本気で入れそうやなぁ」
「当たり前です。俺はもう、京さんから離れられないので」


どうせなら、その手で消えない痕を残して欲しい。


ゆるゆると、臍の下から鼠径部、内太ももを撫でる手は特に情欲を呼ぶ手付きではないけど。
それでも、京さんに慣らされた身体は、もっと、とその先を強請るように熱が上がっていく。
それでも、その手はそれ以上どうしようと言う訳もなくスッと俺の身体から離れていく。


「…ッあ、」
「何やの」


思わずその手を取って、声を漏らすと京さんは何でもない声色で俺の方を見やった。


「…お願い、します」
「何が」


京さんはわかってて、核心は言わない。
いつも俺に言わせたり、させたりするのが好きだ。

このまま俺が何のアクションも起こさなければ何でもない顔で風呂から出て行くだろう。

逃す訳が無い。


「…ッ、ぁ…!」


京さんに向き合って、首に腕を回して唇にキスをすると、すぐに逞しい腕が背中に回って抱き締められ、湯が激しく波打ちながら、ぐるっと無理矢理体勢を変えられて。
いつの間にか俺が湯船の端に身体を押し付けられていた。
顔にも湯がかかったけど気にしない。
夢中で京さんのキスを享受する。

噛み付く癖がある、京さんとのキス。


離さないように、俺も必死に腕を回して、濡れた髪を撫でまくる。
俺を掻き抱く、京さんの腕。


そう。
京さんの黒い腕は、蛇みたいだなって思ったんだ。
その腕に抱かれて捕らわれる、絡み付いて補食される。
そんなイメージで。

俺のこの、刺青が増えた腕も。
京さんに絡んで離さない、蛇みたいになればいいと、そう思った。




20180313


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