変化と憂鬱/京流+玲




何かルキがぐだぐだしてる。

仕事が終わったのは深夜。
0時をとっくに過ぎてる頃で、車で来た俺はルキを乗せて送って行く。


深夜で、疲れてハイになってるルキはよく喋る。
いや、普段からよく喋るけどコイツ。


「最近京さんに構って貰えない」
「え、いつもじゃなかったっけ?」
「っせーよ」


窓の外を見ながら言うルキをからかうと、突っ込みの手が飛んで来た。


「はは、つーかルキ、ライブあっても意地で仕事終わらせて行ってたじゃん」
「そうなんだけどさー。最近、京さん仕事増えたし、早寝早起きしてっから全く時間合わねーんだけど!」
「あー。俺らちょっと昼夜逆転してっしなぁ」
「最近スレ違いばっかだし。あー俺いる意味あんのかなー」
「いやいや、どうしたよルキさん」


お互い同じ業界にいる人間だし、その辺の事情なんて嫌って程わかんだろ。

何でルキは京さんの事になると弱気っつーか、何つーか。
そんな構ってちゃんみたいな事になんの。


「いやいや、一緒に暮らして何年よ。もうそんな時期過ぎたんじゃーねの?」
「でもさー、何年も一緒にいて別れるカップルもある訳じゃん?」
「まぁね」
「俺ら結婚出来る訳じゃねーしさー。京さん仕事の鬼なのは知ってっけど、疲れてるし、邪魔とか思ってねーかなーって」
「それでルキは京さんが邪魔っつったら別れんの?」
「いや、別れねーけど」
「じゃ、何に悩んでんの」
「………衣食住の世話出来ねーなら居る意味ねーのかなって」
「はぁ?」
「スレ違い過ぎてあんま飯作れてねーし、最近掃除も満足に出来ねーし、洗濯物溜まるし」
「いや、お前家政婦じゃねーんだからさ」
「そうだけど…」


うーん、俺からしたら何でそんな事で悩んでんのって思うんだけどなぁ。
ルキの京さん好きはわかってるし、あのルキが人の世話してるって時点で驚きモンなんだけど。

京さんも京さんで、そんな家事が疎かになったからっていらねーって言うとは思わねーんだけど。


「つーか、それ本人に言えよ」
「言えねーよ。めんどくせーって嫌われたらどうすんだよ」
「いや、俺も十分めんどくさいんだけど」
「れいたはいいんだよ」
「何それ」
「…自分でもウザいってわかってっから」
「そっか。でもさー、ルキって京さんと暮らして長いじゃん?」
「そうだな」
「いい加減、京さんの事信用してあげてもいいと思うんだけどなー」
「………」
「始まりはそりゃー酷いモンだったけど、今はそれなりに暮らしてんだからさー」
「……うん」
「多分、悩みも言えねー方が京さんもショックだと思うぜー?」
「……そっかな」
「そうそう。そんなイイ子にならなくてもいいって」
「………」
「寧ろ、ルキの我儘っぷりがバレてねー事ねーだろし」
「何だよ、それ」


赤信号になって停まり、ルキの方を見る。

ルキが、サングラス越しに笑った。


始まりが始まりだったからか、ルキは京さんに対してだけは変な所で遠慮する。
何匹猫被ってんだよって思ったけど、それがルキの本気の恋愛モードなんだろうなって思う。

形振り構わず欲しい相手が、京さんだったと。


「あ、れいちゃん、いつものスーパー寄って」
「はいはい」
「24時間スーパーって便利だね」
「ま、自分がそんな所行くとは思ってみなかったけどな」
「ふふ、確かに。時々京さんとも一緒に行くけど、あの人違和感ありまくりだもん」
「ルキだって違和感しかねーだろ」
「れいちゃんこそ」


ルキに言われた、いつものスーパーへとハンドルを切る。

24時間開いてるスーパーは、夜中は人が少ないし男2人で行ってても目立つ事も無いから楽だしな。


「何だろうね。京さんと一緒にスーパー行くとか、普通では考えられない贅沢なのに。人間って欲深いよね、それ以上に、京さんに必要にして欲しい、とか」
「…そりゃー、血が通ってる人間だからな」
「京さんの負担になりたくないのになー」


呟いた言葉に、ルキを見やる。
窓の外をじっと見てて、表情は見えなかったけど。


でも、ルキが入院した時とか、一緒に飯食った時とか。
京さんは、ルキの事ちゃんと考えてるじゃんって思うんだけどなー。

ハタから見た感想で、不用意に軽い事言えねーけど。


どうしてルキは、京さんの事になるとこうも自信がねーんだろ。


「下手な事言えねーけどさ」
「うん」
「京さんだって、生半可な覚悟でルキと暮らしてる訳じゃねーだろうし」
「………」
「京さんも思う事あるかもしれねーし、話し合ってみればいいんじゃねーの」
「……うん、確かに」
「あんまりコミュニケーション取れない時こそ、信じてやった方がいいんじゃねーの。逆の立場だってそうだろ」
「だよな。何で自分の事だと、当たり前の事がわかんねーんだろ」
「恋は理性じゃねーからじゃね?」
「何それ。れいちゃんの癖に」
「お前こそなんだよ」


笑ってこっちを向いたルキを横目に笑い返す。


お前が盲目って事だよ。

昔も、今も。


今の方が何百倍も良くなったけどな。


「京さんの朝ご飯どうしよっかなー」
「フレンチトースト食いてぇ」
「朝から重いよ、れいちゃん」
「これから寝るんだろ、俺らは」


時々、昔のルキを思い出す。

スレ違いなんか気にもしない位、幸せになってくれねーと。




20160329


[ 377/442 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -