るき@※/京流
いつも、僕のスケジュールはるきが把握しとるんやけど。
今回はるきの誕生日の日、ツアーで遠征しとるから会えへんって言うとって。
あぁ、こいつはイベント事好きなんやったっけって思う。
『祝って喜ぶ歳か』
『そうじゃないですけどー…』
『そんなん言うなら自分が来いや。得意やろ』
『あ、それもそうですね』
『うわ、自ら祝ってって来るんか』
『ちょ、今京さんが来いって!』
そんなやり取りをした何ヵ月か前。
31日。
ツアーで前乗りの福岡。
るきは必死にスケジュール調節した結果、31日の夜から1日の昼までなら大丈夫!って意気込む姿がウザかった。
前乗りしとるからってどっか行く訳ちゃうし、ホテルにおるだけやから別にえぇけど。
そんな事を思いながら、携帯をイジり壁に背を預けて。
わかりやすい様、駅で待ち合わせした夜。
るきは空港からタクシーで来たらしい。
東京から、よう来るわ。
昔から。
変わったんは、こうして待ち合わせしてまで僕が待つ所か。
サングラスとマスクと帽子で、めっちゃ怪しいんやけど。
相変わらずデカい荷物やな。
「京さん、すみません待ちました?」
「別に」
「お腹空いてません?」
「あーせやな」
「俺、屋台でラーメン食べたいんですけど」
「何や、ラーメンでえぇんか」
「福岡来たら屋台のラーメンかなって」
「ふーん。美味い所知らんで」
「こう言うのって雰囲気ですよー」
「そー」
るきは僕の誕生日やったら、思い切り雰囲気作ったりするけど、自分のになると無頓着やったりする。
まぁ、僕がサプライズだの、プレゼントだの、そんな事するんが有り得んって言うんもあるかもしれんけど。
「京さん明日の予定ってありますか?」
「知らん。中日やから何も無かった筈やけど」
「ホントはライブまで見えたらいいんですけど、スケジュール調節が出来なかったんで、残念です」
「……いや、来んでいいし」
「えー」
目に付いた屋台で、2人並んで。
ラーメン食べとると寒かったから、身体がめっちゃ温まって来る。
いやもうホンマ、福岡に来ただけでも引くのに、ライブまで見て帰ったらドン引きやわ。
偶然1日にライブがならんでよかった。
「あー美味しかったですね」
「ん」
「京さんご馳走様でした」
「別に」
「京さんこの後、」
「寒いん怠いしホテル帰る」
「えっ」
そう言うと、サングラス越しでもわかる位、落胆したるき。
何やねん。
早よ歩けや。
僕が出歩くん嫌いなん、知っとるやろ。
あぁ、めんどいな。
ホンマ。
立ち止まったるきを見やり、溜め息を吐く。
「何しとん。早よ来いやタクシー拾え」
「………」
「置いてかれたいなら別にえぇけど。気ぃ付けて帰りやー」
「……、京さんて、意地悪ですよね、わかってますけど」
「は、何を今更」
「行って、大丈夫なんですか」
「それこそ今更やろ」
何年も前から、どんだけお前を遠征先のホテルなり何なりに呼び付けたと思っとん。
るきがタクシーを拾うのを見ながら、目を細める。
一緒に乗り込んで、遠征先のホテルの名前を告げる。
夜中に近い時間やから、フロントもロビーにも明かりが点いとるだけで人がおらんから好都合。
預けるんもめんどくてポケットに入れたカードキーを中で確認して、るきとエレベーターに乗って、自分の階を押す。
その間、無言のるき。
エレベーターの扉が開いて、僕が歩き出したら後ろを付いて来る。
ドアを開けて、電気点けて部屋ん中に入って、窓辺に設置された向い合わせの一人掛けソファに座る。
マスクを外して、テーブルに投げる。
「荷物適当に置いてシャワーでも浴びたら」
「…京さんは」
「後で浴びるし」
「一緒に、」
「冗談やろ狭い」
「誕生日、」
「まだ日付変わるまで1時間ぐらいあるで」
「……」
何か不満そうなるきを無視して、部屋のテレビをつける。
「…寝ないで下さいね」
「はいはい」
るきが浴室に消えてって。
テレビの雑音がする中、天井を煽って溜め息を吐く。
シャワーの音を聞きながら、携帯で時間を確認するとるきの誕生日まで数十分。
そんな気とか無かったのに、結局るきの誕生日って理由で会っとる事に笑える。
何も用意なんてしたってないのに。
[ 373/442 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]