今年の正月は寒かったので/京流




正月の朝。

大晦日はガキ使観て、るきがカウントダウンやら何やら煩く言うて、あけましておめでとうございますって言われてから就寝。

1月1日になっても、特に変わらんけど(それでも正月休みがあった)また今年も、起きたらるきがおる、生活。


仰向けで寝とって、腕を伸ばして枕元を探る。
スマホで時間を確認すると朝9時ぐらいやって。

もう起きるかって思うけど、自分の身体に巻き付く腕と、体温。

るきが、布団の中で僕の身体に抱き付き、胸元に顔を埋めて寝よる。
何やこれ、甘えんな、アホ。


でも、エアコンも加湿器もつけとる筈やのに、外は風が強くて窓を叩く音がする。
そんな中、くっつくるきの身体は温かかったりする。


まぁえぇか、寝とるしコイツ。


溜め息を吐いて、視線を落とすとるきの髪しか見えへんけど。
何でこんなにくっついとんや。
えぇ歳して引くわ。


僕の髪とは対照的に長い髪をしとるるきは、頻繁にカラーをするからか結構傷んどって。
手を伸ばして緩く撫でると、手触りは悪かった。


今年も1年始まったけど、コイツは飽きもせずに僕にくっついて来る所とか、ちょっとどうにかならんのか。
何年一緒に暮らしとんやお前。

飽きへんのか。


飽きた、なんてるきの口から聞こえたら、そんな生意気な事許せる気がせぇへんけど。


そんな事を考えよると、ちょっとムカついて来て。
軋む髪を軽く引っ張ると、るきが唸る。


「起きろ」
「…んー…」
「るき」
「……きょーさん…?」
「邪魔」
「………」
「寝るなボケ」
「………京さんの匂い…」
「うわ、きっしょ」


朝からキモい事言うな。

寝起きのるきは、普段より数倍頭回って無いらしくて。
舌っ足らずな寝起きの低い声で、更に僕の胸元に顔を埋めるるきはキモい。


頭を叩くと、くっついたまま僕を見上げた。


「…京さん、あけましておめでとうございます」
「はい、おめでとさん。退いて」
「今年も宜しくお願いします」
「はいはい。退いて」
「眠いから嫌です」
「やから寝んな」


顔を伏せて、また寝ようとするるき。
コイツも休みやからな。


「寝るなら離れろ」
「やーだー」
「すっごいムカつくんやけど」
「あっ…」


僕の身体に回っとるるきの腕を力ずくで振りほどいて起き上がる。

るきが残念そうな声出しとるけど無視。


「今日めっちゃ風強そうなんやけど」
「あー…正月って雪らしいですよ」
「は、絶対外出たないな」
「ご飯はお節とか買ってるんで大丈夫なんですけど…ずっと部屋に居るのも疲れません?」
「人混み行く方が疲れるわ」


雪か。
嫌やな。
外出ん理由が出来たけど。


るきはベッドの上で伸びをして。

どうやら起きる気らしい。


「京さん朝ご飯は雑煮でいいですか?」
「うん」
「お餅は何個?」
「2個」
「はーい」


とか聞いて、まだベッドでゴロゴロするるきは、しっかり布団を身体に巻き付けて出る気配は無し。

スマホを確認すると、色んな人からの挨拶が入っとって。
大量過ぎて、見るんが怠いからまた後で。


「あー…眠い…」
「寝たら」
「うー…でも京さんがせっかく家にいるんで、一緒に居たいです…」
「…別にいつでもおるやん」
「でも最近は会えなかったじゃないですかー」
「あーはいはい、そうやね」
「だから起きます。うん、起きれる筈…」
「寝そうやけどな」
「んー。おはようのキスしてくれたら起きます」
「や、別に起きんでえぇから。一生寝とき」
「京さん酷い!」
「るきキモい」


朝っぱらから、アホかって会話。

思い返しても、昨日の大晦日もアホな会話しかしてへん気がする。


それでも、僕は今年も。
コイツの体温を、手放す事をせぇへんのやろな。

そんな自分に呆れる。

新年早々、アホらし。


「京さん起こして下さーい」
「甘えんな」
「好きですからー」
「やっすい言葉やな、お前」
「好きは重いですよ!」
「うん、そうやね」


重い言葉が安心する、なんて。




20150101


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