過ぎ行く年/京流




年越し蕎麦も食べて、京さんとまったり炬燵の中。
京さんは毎年の様にガキ使観てるから、その隣で俺も一緒に観る。

年末年始は仕事入ってないからいいね。

やらなきゃいけない事はあるけど。


隣でテレビ観てる京さんをチラ見すると、少し疲れた表情の京さん。
今年は色々してて忙しそうだったもんな。

俺もツアーあったから、あんま会えなかった気がする。
一緒に住んでるから、まだ会ってる方か。

でも京さんの歳を重ねてく顔、格好良くて好き。


「…………何や。見んな」
「えー」
「ウザい」
「京さん格好良いなぁって」
「…珈琲」
「はーい」


テーブルに置いてる、飲み終わりかけの京さんのマグカップと、自分のを手に持って立ち上がる。


珈琲サイフォンで、新しく珈琲を淹れて、マグを洗う。


「あ、京さん、アイス買ってるんですけど、食べませんかー?」
「んー」
「ちょっと待ってて下さいね」


年末だから、と色々買い込んだのを思い出して。
2人分の珈琲をマグに注いで冷凍庫から買ったハーゲンダッツを取り出す。

京さんの分の珈琲とアイスを持って、テーブルに置く。


「はい、京さん」
「ん」
「バニラとチョコ、どっちがいいてすか?」
「チョコ」
「はーい」


またキッチンに行って、自分のを持って京さんの隣に座る。


「京さん京さん、ハーゲンダッツって、ちょっと溶けた状態が美味しくないですか?」
「ふーん」
「今カチカチですよ」
「ほな置いとったら」
「どのぐらいで溶けますかねー?」


さっきよりも、京さんに寄り添って。

2つ並べたアイスを眺める。


もうすぐ終わる年。
今年も、京さんとこんな風に過ごせる事が嬉しい。


「…ふふ、」
「……キモい。テレビの邪魔」
「えー。だって、」
「あっち行けや」
「嫌です。今年の終わりも、新年の始まりも、一緒にいるんです」
「はぁ…。もうるきケツバットされて来たらえぇのに…」
「いやいや、俺がそんなのやられたらアウトでしょ。バンド的に」
「うん」
「じゃー嫌ですよ」
「スパンキングは好きな癖に」
「それはそれです」
「ちょっとは否定せぇや」
「あはは」


珈琲を飲みながら、京さんは嫌そうな顔をした。

いいんです、京さんにされるプレイは好きなんで。


「じゃー姫始めはソレでお願いします」
「絶対嫌やし」
「あ、でも姫始めは2日からで」
「なん、またそれなん」
「一応」


1日にやるのは、老ける行為らしいんで。
なんて、そんな事言ってるけど、雰囲気には流されるけどね。


京さんの方に向いて、ちょっと体勢を立て直す。


「京さん、今年はお世話になりました。来年も宜しくお願いします」
「何やねん、いきなり」
「もうすぐ新年なんで。今年最後の挨拶をと」
「そー」
「京さん更に忙しくなって身体が心配ですけど」
「あー大丈夫ちゃう」
「あと会う時間ズレまくって寂しいんですけど」
「それは知らん」
「来年もライブ通うんで、宜しくお願いします」
「………」


スケジュール調整するんで。

だって年間通してライブすげーやってるじゃないですか。
そりゃ行きたいですよ。


「今年もるきはウザくて、来年もウザいんやね」
「そりゃー、京さんの事が大好きですから」
「僕の所為にすんなや」
「だから、宜しくお願いします」
「嫌やわー」


ちょっと笑った京さん。

切実に。
来年も、この柔らかく笑う様になったこの人の隣に、居たいと思う。


「アイス溶けたかなー」
「あぁ…」


置いておいたハーゲンダッツを手に取り、開ける。
いい感じに周りが溶けてた。

ま、炬燵の上だし室内も暖かいしね。

隣でチョコ味食べてる京さんを見る。


「京さん、ひとくち下さい」
「勝手に食えや」
「あーん、で」
「きしょい」
「俺のバニラもあげますから!」
「いらんし」
「そう言わずに」
「ウザい」
「えー」
「黙れ」
「嫌です」
「死ね」
「京さんと生きるので無理です」
「嫌やわぁ…こいつ」
「またまたー」


そう言っても、本気で嫌がらない。
そんな京さんが愛しい。


笑って、ちょっと伸びをして。
京さんの唇にキスをして、少し舐める。

少しだけ、冷たい唇。
あんまりアイスの味はしなかったけど。


「………何しとん、ボケ」
「…勝手に貰いました」
「勝手な事すんなや」
「ごめんなさーい」
「…………」


俺の、謝罪とは言えない謝罪を聞いて溜め息を吐く京さん。


そんな、いつもと変わらない大晦日。

でも、それが俺には嬉しい事。




20141231


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