クリスマスの朝/敏京
「………ん…、」
「…………」
「…いまなんじ…」
不意に覚醒した脳。
部屋は明るくて陽が射してるのは確か。
隣で寝てる敏弥が、がっちり僕の身体に腕を回してるを押し退けて。
肘を付いて上半身だけ起こす。
携帯を掴んで、時間を確認するとまだそこまで遅い時間やなかった。
今日仕事何時からやったっけ?
寝惚けた頭のまま、ぼんやりとそんな事を考えながら、目の前の惨状に少し溜め息を吐いた。
いつもの様に仕事が終わって、いつもの様に敏弥と一緒に帰って。
いつもと違うかったんは、街中がクリスマス一色で敏弥がそれに触発されて、テンション高くケーキやらチキンやら酒やらを買い込んだ事。
敏弥んちに着いて、テーブルの上でそれらを広げて2人だけのクリスマスパーティーやって。
アホか。
クリスマスは25日で、今日やろって思ったけど、楽しそうな敏弥やったから、しゃーないな、コイツはって。
その残骸が今、テーブルの上にあるんやけど。
まぁえぇわ。
ここ敏弥んちやし、敏弥に片付けさせよ。
お互い素っ裸で寝たから、暖房効かせとるとは言え肌寒く、ベッドの下に落ちてるTシャツに手を伸ばす。
…敏弥のやけど、まぁえぇわ。
それを着ると不意に香る、敏弥の匂い。
ベッドで寝とる、敏弥に視線を落とす。
敏弥も同様、裸で。
ご飯食べて、ケーキを食べさせ合って(主に敏弥が僕に)そのままじゃれてキスして服を脱がせ合って。
お互い貪る様に身体を重ね合わせて、かろうじてシャワーを浴びて泥の様に寝たな、とか。
そんな情景が段々と思い出される。
敏弥とセックスするんは好き。
たまにねちっこくて鬱陶しいけど、コイツ以外に足開くなんて虫酸が走る。
敏弥やから、許せた。
そんなん言うたら調子乗るやろから、絶対言わんけど。
寝顔だけは大人しくて可愛い、と思う。
普段はアホみたいに煩いから。
敏弥の前髪を撫でても、特に何の反応も無く。
まぁコイツ、睡眠深いし寝起き悪いしなぁ。
いつもこんなに大人しかったらえぇのに。
………いや、もうそれ敏弥ちゃうか。
「……………」
胡座をかいて、暫く敏弥の寝顔見つめとっても特に何も無いし、もう頭は起きてもうたからどうしようかな。
取り敢えず、煙草…。
「…………おはよ、きょうくん…」
「…何や、起きたん」
「…………うん…」
「…ふは、不細工な顔」
「……えー?」
どうやら、起きたらしい。
開いとるか開いてないかわからん細い目でふにゃっと笑う敏弥の頬をつねる。
敏弥がちょっと這って来て、胡座かいた片足に頭乗せられた。
もぞもぞして、足に収まる。
「おい、寝る気か」
「…んー…京君の生足…」
「何言うとんや変態」
「あいた」
素足を撫でられて、眉を寄せて敏弥の頭を叩く。
それでも起きる気配は無い。
「…あー…起きたら京君がいてさぁ…」
「そりゃおるやろ」
「うん。こりゃーサンタさんからのプレゼントだとねー」
「は、」
「だからー、堪能しとこうかなって」
「昨日充分したやろ」
「昨日はイヴー。予行演習ー」
「何やそれ…」
「んー…」
舌っ足らずな喋り方で、訳わからん事言うた敏弥は肩まで布団を引っ張って僕の足の上でまた目を閉じた。
足痺れるやん。
「…アホ敏弥」
そう言うても、そんな敏弥のアホな言葉が、心ん中にスッと落ちて来て受け入れる僕も。
敏弥に毒されて相当アホやと思う。
敏弥の所為で動けんし煙草取れんし。
今日仕事やろ何寝とんや。
2人しかおらん部屋なんやから、起きてすぐ僕がおるんはあたりまえやろ。
その、逆も。
クリスマスなんて興味無いし柄でも無いけど。
糞腹立つぐらい平和なツラして寝とる、敏弥と過ごすのは。
嫌いやないから、まぁえぇか。
終
20141225
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