苺ミルク/敏京




「京君、京君。差し入れに苺あるよ、苺」
「ホンマや。練乳は?」
「ちゃんとスタッフさんが用意してくれてるよ」
「ほな敏弥、皿取って」
「何個食べる?」
「乗せれるだけ全部」
「他のメンバーにも残しておこうよ」
「じゃ、敏弥の分も全部」
「俺は京君と一緒に食べるからね!」
「やらんし」


ライブ前の楽屋で、メイクとヘアメが終わってから、京君と本日のケータリングを見て回る。
つっても、京君はお菓子とかの方が興味あるみたいで。

そこに、多分誰かが持って来たであろう、苺の山が目に入る。

あぁ、苺って、この季節だっけって思いながら、京君に言われるまま、お皿に適当に苺を盛り付けてく。

京君は何点かお菓子を取って、そのままテーブルの方に歩いてった。


フォークと練乳を持って、京君の隣に座った。


「ヘタあるやん」
「そりゃぁねぇ」
「取って」
「えー」
「取って」
「…はいはい。何でこんな我儘な子に育っちゃったかなぁ」
「煩い」
「そこが可愛いから、全然いいんだけど」
「黙れ」


京君がお菓子食べてる横で、ぷちぷちと苺のヘタを取ってまた皿に戻す。

京君の我儘は大好き。
俺が断らないってわかってて、存分に甘えてるって事だから。


「はい、出来たよー」
「練乳」
「はいはい。どのくらいかける?」
「んー」


京君に練乳のチューブを渡すと、皿の中に盛られた苺にかけていく。
結構たっぷり。

その様子を『甘そうだなー』って思いながらじっと見る。


「…何かさ、練乳って精液みたいじゃない?」
「………今から食べるんやから、頭おかしい事言うなや」
「や、だってそんなは?風に見えない?」
「見えん」


京君は満足したのか、練乳をかけるのをやめてフォークを手に取った時に、不意に思った事を口にした。


「やーでもこんなには出ないよね、2人分でも」
「煩い。不味なるから向こう行け」


あらら。
お皿抱えてそっぽ向かれちゃった。


それでも、フォークに練乳がたっぷりかかった苺を口にする京君の横顔は見える訳で。


あーやっぱ京君可愛いなー、とか。
唇についた練乳を舐め取る時に見える舌とか。
エロいなって。


俺の精液も練乳みたいな味だったら、顔射しても文句言われないかなぁ。


「………敏弥、見すぎ。ウザい」
「ね、京君、俺にもちょうだい?あーん」
「嫌や、キモい」
「いいじゃん。あーんしてよー」
「ここ楽屋やで。絶対嫌」
「じゃ、楽屋じゃなきゃいーの?」
「うん」
「でも俺も食べたいから、ちょうだい」
「勝手に取って来いや」
「酷ーい。それ俺が取って来たんじゃん」
「知るか」
「もー。そんな我儘言っちゃって。そんな精液まみれの苺食べてる京君が可愛すぎて今すぐ顔射したいの我慢して、あーんをお願いしてるのに!」
「……………」


あ、京君が思い切り嫌そうな顔した。


「お前の思考回路マジで気持ち悪い。近寄るな」
「あは。ゴメンゴメンつい本音出たね!だから、あーんして!」
「何でそうなんねん!絶対嫌やしもう食う気失せたわ、いらん」
「えー」


京君がぷりぷり怒って、ほとんど食べ終わった苺と練乳のお皿をこっちに押し付けて来た。


席を立とうとした京君の手首を掴んで『ゴメンね?怒らないで』って言ったら。
京君は憮然とした表情をしながらもまた椅子に座った。


京君は殊勝な態度には弱い。


「はー。何で敏弥って変態なんやろ」
「ねー」
「ねー、って…」
「あ、苺おいしー」


笑いながら、京君が残した苺を食べると、練乳の甘さと苺の酸味が合わさって美味しかった。


「でもこれ練乳かけすぎじゃね?甘いよ」
「ちょうどえぇやん」
「京君甘党だもんねぇ…精液も甘かったら飲んでくれる?」
「はは、無理。死ね」
「俺なら甘くなくても飲むよ!」
「当たり前やろ。誰相手にしとると思っとん。んな擬似モンなんかより、家に帰ったらくれてやるわ」
「…やっぱ京君て可愛いよね」


京君は我儘で可愛いけど。
声に出さないだけで、俺よりエロいと思うんだよね。

そんな彼が、大好きなんです。




20140525



[ 366/442 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -