知らない日常/京流
仕事から帰って来ると、るきが飯の準備しとって。
もうすぐ出来るって声を聞きながらリビングのソファに座ってテレビをつける。
適当にチャンネルを回しても、おもろそうなヤツも無いし、溜め息を吐いてリモコンをテーブルに置く。
したら、わざとらしくテーブルの上に置かれとる雑誌があった。
何や毎回律儀に持って帰って来とるるきが表紙の雑誌。
今と違う少し前の髪型のるき。
黒赤とかあったな。
今はアッシュっぽい金髪やけど。
キッチンにおるるきを振り返ってちょっと見る。
髪もセットしとらんし、眼鏡やし、素っぴんやから雑誌の表紙の人物と似ても似つかんわ。
その雑誌を手に取って、中をパラパラっと捲る。
あー。
そう言えば、この衣装で撮影した時、るきが写メ送って来た気がするわ。
あいつ撮影の度にいちいち写メって来るんよな。
いらんわ。
適当に記事を読み流す。
何や、適当な事言うとんなぁ。
料理せぇへん、とか。
僕が東京おったら頻繁に作っとんやけど。
たまに外食したりはするけど。
適当に他のページも捲って、雑誌をテーブルに置く。
「京さーん、ご飯出来ましたよー」
「ん」
「今日はパスタです。ジェノベーゼ」
「…………そー」
言われて立ち上がって、キッチンのテーブルに行くと。
テーブルの上にはサラダとかパスタとかパンとか、配置されとった。
るきと向い合わせで座って、いただきます、と呟いてフォークを手に取る。
「お前のインタビューって虚言と本音が入り交じっとるな」
「え、何ですかいきなり」
「別に」
「えー?……あ、あー、インタビューですか?読んでくれました?」
「適当に」
「何か言ってましたっけ?」
「知らん」
サラダ食べてから、パスタを食べる。
何か訳わからん名前のヤツやし、時々るき作っとるけど、普通に美味い。
「あ、あれですか、料理しないってヤツ」
「うん」
「だって俺が料理するって微妙じゃないですか?」
「うん」
「ちょ、そこは否定して下さいよ!」
「無理」
「………。ってか、まぁ、俺が料理するとして、誰に振る舞ってるんだとかなったら嫌じゃないですか。まだ女で妄想されたらいいんですけど、京さんとの事バレたら嫌ですもん」
「ふーん」
「あと、俺がスーパーで買い物してる姿とかパブリックイメージ的にヤバいなと」
「あぁ…似合わんもんな」
「京さんも似合いませんけどね」
「……ほなもう二度と行かんわ」
「嘘です!休みの日に一緒にスーパー行って何にするか相談しながらカート引くとか超夫婦っぽくて良くないですか!?」
「…………」
何か言うとるけど、ほっとこ。
つーか、そんなん気にするぐらいなら、一緒にスーパーとかもアウトなんちゃうん。
別にそんなに行ったりはしてへんけど。
イメージ、なぁ。
そんなモン、雑誌とかの媒体通して自分自身でいくらでも作れるわな。
雑誌で格好つけとるるきと、普段のるきは全く違うけど。
それは仕事とプライベートな差なんやろな。
…よく知っとる部分が、プライベートな方って言うんが。
ちょっとアレな気もするけど。
しゃーないか。
何やってもヘコたれへんかったるきを、傍に置く事にしたんは自分なんやから。
「…そんなにコレ好きなん」
「ジェノベーゼ?大好き」
「そー。僕は和食の方が好きやけど」
「知ってますよー。明日作りますね」
にっこりと笑うるき。
当たり前の日常。
僕も、こんな日常がファンに知れたら面倒な事になるんやろなって思うから、プライベートな事なんて詳しく言わんけど。
取り敢えず、料理はアホみたいに上達したなって思うな。
本人には、めんどくなるから言わんけど。
終
20140513
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