SKIN/敏京




「……今日は雨だねー」
「ホンマや…だる…」
「もう桜散っちゃうかなー」
「さぁ…」


敏弥んちに泊まって、次の日の朝。
仕事行かなアカンのに雨とかホンマ怠い。

行くんめんどくさい。

目が覚めても布団中でゴロゴロしよったら、敏弥も目覚めたらしく。
寝起きの細い目を更に細めて僕に笑いかけて、ぎゅっと抱き着いて来た。


欠伸を噛み殺しながら、敏弥の好きにさせとると、デカい図体を縮こまらせて僕の胸元に擦り寄って来る。

暖房と加湿効かせたまま、半裸状態で布団にくるまって寝たから、敏弥の髪の毛が擽ったい。


「何やの。邪魔」
「またまたー。そんな事言っちゃってー」
「ウザ…」
「ウザくなーい」
「ちょ、」


敏弥が思い切り腕に力入れて抱き締めて来たから、止めろ、って意思を込めて胸元にある髪を引っ張る。


「今年はお花見行けなかったねー」
「仕事忙しいしな」
「ざんねーん」
「近所の桜は見たやろ」
「そうだけどー。何かこう…桜の木の下にシート敷いて宴会するようなお花見してみたい」
「外やん。嫌やわ花粉あるし」
「でも、京君今年はマシじゃない?」
「あー…そうやっけ。ウザいには変わり無いけど」
「メンバー皆で花見したら楽しそうじゃない?」
「敏弥と堕威君が鬱陶しい事になりそう」
「なーんで!」
「ッ、何すんねんコラ!」


素肌のままの僕の胸元に敏弥の顔があるんやけど、敏弥が僕の肌に吸い付いて来やがった。

痕残ったらどなんするんや。
ありえん。


「いたッ、痛い痛い京君!」
「痕付けんな死ね」
「やーだー!見えないから大丈夫だよ」
「ちょぉ、」
「大人しくしてて」


敏弥の後ろ髪を引っ張って僕から離させて、身を引く。
それでも、敏弥は身体を起こして僕の手首をベッドに押さえ付けて拘束して来やがった。

上から押さえ付けられると、身動きが取れへん。

そのまま敏弥は笑って僕の胸元に顔を埋めると、またピリッとした痛みで。
また痕付けやがったな、コイツ。


「敏弥、お前えぇ加減にせぇよ」
「見えないって。ってか胸元開けないで、エロくて襲いたくなるから」
「は、変態」
「えー?」


敏弥は何ヵ所か皮膚に吸い付いて、満足したんか鎖骨や首筋に軽いキスをして来て。
擽ったさに目を細める。


「ほら、キスマークって花びらみたいじゃない?」
「は?」
「お花見〜、なんてね」
「アホか、お前」
「京君の胸元見ながらお花見でエロいし、京君は外行かなくて済むから花粉に犯されないし、一石二鳥だね」
「どこがやねん」


何やニッコリと笑って僕を見下ろす敏弥はめっちゃ楽しそうに笑って、めっちゃ頭悪そうな言葉を吐いた。


そもそもその理論やと僕見えんしな。


「もー、えぇから退いて。邪魔」
「えー」
「早よ。手首痛い」
「あ、ごめ、ッ!?」


敏弥の手が離されたから、代わりに敏弥の腕を掴んでベッドに引き倒すと同時に腹筋で起き上がって敏弥の身体に跨がる。


「わー、京君だいたーん」
「っさいわ、ボケ」


マウント取られるよりも、こっちの方が好き。
楽しそうに笑って僕を見上げる敏弥の肩口に顔を寄せて、そのまま噛み付く。


「ッ、痛いよ京君、」
「んー」
「痛いって、あー…」
「…何やのそのやる気無い声」


暫く噛み付いて口を離したら、敏弥の肩口に歯形が付いた。
コイツほとんど骨やから固かった。


「もー、何で噛み付くのさー」
「ん?敏弥だけ花見は不公平やから、僕も花見しようかなって」
「……そう言うさ、可愛い事言うから可愛いんだよね」
「可愛ないわ。死ね」
「ふふ、だーい好き」
「はー、アホらし」
「ラブラブじゃん」
「キモい」


敏弥も、自分も。

溜め息を吐きながら伸ばされた敏弥の腕に身体を引き寄せられて、敏弥の身体の上に寝転がる。
キツく抱き締められる身体。


雨で、仕事行かなアカンのに。
朝っぱらから何しよるんやろ。


素肌に感じる敏弥の体温に、そんな思考は低下して。

まぁ、えぇか。
敏弥とする事やから。




20140409




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