帰って来た日/京流
海外から帰って来て、キャリーの荷物もそのままに暖房と加湿器をつけて服を脱いでベッドに入った昼間。
やっぱ日本で、自分ちのベッドで寝た方がよく寝れる。
目が覚めた時、部屋ん中は真っ暗で。
今が何時かもわからんくて手探りで携帯を探す。
けど、見つからんくて、脱ぎ捨てたズボンのポケットん中やって気付いて舌打ち。
ま、十分寝たし、起きるか。
自分の体温で暖まった布団の中から身体を起こして伸びをする。
目が慣れると暗闇でもぼんやりと部屋ん中はわかって。
電気のリモコンを探して部屋の明かりを点ける。
眩しさに顔を歪ませながら。
ベッドの端っこにるきが畳んで置いたてあろう、どっちのかわからんけどスウェットがあったから、それを着込む。
あー、だる。
帰って来て飯食ってへんし、腹減った。
脱ぎ捨てたズボンから、携帯を取り出して時間を確認。
何や、もう23時か。
リビングが静かって事は、まだるきは帰って来て無いんか。
携帯をポケットに入れて、寝室から洗面所へ向かう。
軽く顔を洗って、中途半端な時間やしもう寝れんし、腹減ったし。
DVD何か観るんあったっけ。
そんな事を考えながら、キッチンで水飲もうと冷蔵庫を開けると。
るきが作ったであろうご飯が、ラップされて入れられとった。
そう言えば、僕が帰る日には和食をわざわざ作って置いてあったな。
何かラインが入っとった気がする。
………。
後で食うか。
今寝起きで何かめんどいし。
ペットボトルのミネラルウォーターを取り出して、飲みながらリビングに。
何かDVD観よかーって思いつつ、テレビを点けたら。
ガチャガチャ鍵が開く音が玄関からして、あぁ、るきが帰って来たんかってぼんやり思う。
ガサガサ音がして、廊下からリビングへと足音が聞こえる。
「京さん、お帰りなさい」
「おー。お前もな」
「海外どうでした?」
「別に。普通」
「そうですか。ご飯食べました?」
「すぐ寝たから食ってへん。今さっき起きたし」
「マジすか。お腹空いてます?」
「うん。やからあっためて」
「はーい」
機嫌が良さそうなるきの声がして、ドアの方を見やると外着のるきがスーパーか何かの袋を持ったまま帰って来た。
僕と話しながらキッチンへ行き、冷蔵庫に買ったモンを詰めて行く。
レンジやIHの家電の音がして、それと同時に料理の匂いが漂って来た。
「京さん、明日は」
「スタジオ行く」
「もうすぐ日武ですもんね」
「うん」
「バッチリ行きますからね」
「何でやねん」
「あはは。次の日、俺等の12周年なんですけど、京さん来れます?」
「…気ぃ向いたら」
「じゃ、是非気が向いて下さいね」
そう言うと、るきが『出来ましたよー』って声を掛けて来た。
キッチンのテーブルに座ると、もう慣れたるきの手料理がテーブルの上に並ぶ。
「京さん、雛あられ食べます?」
「…何」
「今日、雛祭りだったじゃないですか。スタッフの人が雛あられくれたんですよー」
「ふーん」
「男兄弟だと、こう言うの無縁ですからねぇ…」
そう言いながら、るきは雛あられを開けて皿に移し変えて。
テーブルの真ん中に置いて食事をする僕の向かいに座った。
「今日はリハだったんで。昔の曲とか最近ガッツリやる事無かったんで、何か新鮮でした」
「あー、」
「今と昔じゃ、歌詞の書き方も違うし、恥ずかしい部分もあるんですけどね」
「若い時と感性は変わるわな」
「そうなんですよねー」
ゆるゆるとしたテンションで、るきが今日あった事を話して。
海外では味わえん、和食で。
あー何か、やっぱ日本が落ち着くわって。
そんな事を思った。
マシンガントークのるきがおるのに、そう思ってまう自分が何やちょお腹立たしくはあるんやけどな。
終
20140303
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