1日の1コマ/京流




るきが、後輩バンドのライブ観に行って来るって言うた夜。
ふーん、って感じやったんやけど、ライブ終わる時間は大体わかるから、仕事で時間重なったら飯食いに行こう言われて。

るきの方が早かったから、僕が仕事終わった頃には連絡が来とって。

後輩に挨拶してから出て来るらしい。


もう場所決めるんもめんどかったから、頻繁にるきとご飯に行く場所で待ち合わせた。


人が行き交う繁華街。
タクシーでるきが待つ付近まで乗ってくと、土曜日ってのもあっていつもより人が多くて舌打ち。


るきが送って来た場所を確認しながら、見渡すと。
サングラスしてマスクまでしとるけど、少し前に変えたって言うとった派手な髪型のるきの姿が確認出来た。


傍に行こうとすると、るきが僕の姿を見つけてこっちに近寄って来た。


「あ、お疲れ様です」
「おー。お疲れさん」
「お腹空いてます?何処行きましょうか」
「んー、あんまり。でも寒いから鍋食いたい」
「あ、いいですねー、鍋。じゃ、前行った所行きます?」
「うん」


人混みの中、るきと並んで目的地まで歩く。
るきは今日行った後輩バンドのライブの事を色々喋って来よった。


「つーか、お前後輩バンドなんやったら打ち上げ行ったらんでよかったん」
「やー楽屋には行きましたけど、さすがにファイナルですしあんま先輩面しているのもアレかと思いまして」
「僕にはよく来い言う癖に」
「あはは。ホントそうですね。好きな人には見て欲しいんです」
「あーそー。キモい」
「何でですか。…ま、でも時々一緒に飲みに行ったりはしてるんで。そこで語り合おうかなって」
「ふーん」


そう言えば、るきは時々、後輩多数と飲み会するって言うとったなぁ。
別に気にしてへんけど、朝帰りしたりするけど浮気ゃうからとか、ギャーギャー煩かった気がする。


「あ、ペットショップ」
「ん?」
「ここって、よく遅くまで開いてますよね」
「あぁ…繁華街やしな」
「今日は猫の日なんですって」
「は?」
「2月22日」
「あぁー…」


そう言えば、そんな語呂合わせの日があったな。
別に普通の日やけど。


猫の日か何か知らんけど、猫が入ったケージは前面に配置されとって、軽快なポップでるきが言うた事が書いとった。


「京さん、犬と猫だったらどっち派ですか?」
「別に、どっちでも」
「俺は犬派なんですけどね。やっぱこう見ると猫も可愛いなぁ」
「…飼わへんで」
「わかってますよー。お互いツアーで忙しかったりしますもんね」


るきが、子猫を見て笑って。
何やお前も動物好きなんかいって感じやな。

飼いたいとか、言うて来た事は無いけど。


猫の日、なぁ。


るきが指で遊ぶ、ケージ越しの子猫を見やる。


「………もうえぇやろ。行くで」
「はーい」


溜め息を吐いて声を掛けると、るきはケージから離れて僕の傍に来た。

そしたらまた、るきは隣で喋り出す。
喋っとかな死ぬんかお前ってぐらい。

後輩と出掛けても、仕事で遅くなっても、どんな時でもるきは僕の元にやって来る。


何か犬っぽいんよな、コイツ。


「あ、あそこですね、お店」
「おー…寒いし腹減って来たわ」
「俺も」
「ちゃんこ食いたい」
「後の雑炊美味しいですよねー」
「そしてるきは太っていく、と」
「……頑張ります」
「ははッ」


……………。


猫か犬かって聞かれたら、多分僕は犬派なんやろうな。




20140222



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