京さん/京流
京さんの誕生日、深夜0時と共にお祝いは出来るかなって思ってたけど。
雪と大雨の影響で交通機関麻痺して通常よりも何時間も費やして自宅に辿り着いた頃には、京さんは不機嫌度マックスで。
17日は名古屋だし、16日の内に移動しておかなきゃいけないしで。
京さんの誕生日は後日祝う事になるかなぁって感じなんだけど。
深夜に帰って来て、風呂に入って速攻で寝た京さんのキャリーを荷解きする。
洗濯物とか出したりしてたら、俺が勝手に入れたバレンタインのチョコレートの缶が見えた。
一応ラッピングされて箱に入れられてたのが剥き出しになってるから、京さん食べて見てくれたんだーってちょっと嬉しくなる。
どうしようかな。
取り敢えず、キャリーん中は一回全部出しておきたいし、遠征用にまた下着とかは入れておこうかな。
そんな感じで、京さんの誕生日の日付になっても特別感もなく。
本人寝てるしツアー中だし、俺も用事済ませてそのまま一緒に寝たんだけど。
「京さーん、一応キャリー荷解きして下着とかは入れましたけど、服ってどうします?」
「…適当で」
「え、ライブで着るんじゃ、」
「それはスタッフがやる」
「じゃ、寒くないヤツコーディネートして入れておきますね」
「うん」
「上着はコートにします?」
「んー…、うん」
「はーい」
朝。
起きたら京さんの機嫌は少し改善されてて。
誕生日おめでとうございます、って言って。
リビングで珈琲飲みながら炬燵に入って。
テレビでニュースを見てる京さんの横で、遠征する京さんのキャリーの荷造りをする。
自分でやる時と全くやらない時があるんだよね。
今回の服は俺の服を入れておこう。
京さん似合うだろうし。
うーん、洗顔系も入れたし、大丈夫かな。
キャリーの荷造りが完了して、閉める。
京さんの隣に座って、ちょっと疲れた感じの顔をじっと見つめる。
「京さん、俺夕方から仕事なんですけど、何時に出ます?」
「昼過ぎ」
「せっかく誕生日ですし、お昼どっかに食べに行きます?」
「いらん」
「じゃ、何か作ります?」
「うん」
「何か食べたいのありますか?」
「普通の」
「普通の…」
って何だ。
冷蔵庫何かあったかなー。
買い物行こうかな。
「またツアー落ち着いたら京さんの誕生日祝わせて下さいね」
「別に喜ぶ歳ちゃうしなぁ」
「えー。せっかくだし。京さん欲しいのあります?プレゼント!」
「別にいらん」
「えーやだ」
「やだって何やねんお前」
鼻で笑って飲んでた珈琲カップをテーブルに置いて両手を炬燵の中に入れる。
「だって京さんの誕生日、何も用意出来てないし、プレゼントしたい」
「何やのそれ。お前貢ぎ癖抜けへんなぁ」
そう言った京さんは俺の頭に手を伸ばして髪を撫でた。
……そんな不意討ちされると、めちゃくちゃときめくんですけど。
自然に頬が緩むのが自分でもわかる。
そしたら、京さんは眉を寄せてデコピンをして来た。
「いってぇえ」
「きしょい顔」
「素です」
「余計に嫌やわ」
「ひでー」
額を撫でながら、京さんが笑って俺も笑う。
「別にえぇよ。何にも。普通で」
「えー…」
これ以上言うとまたデコピン食らいそうな感じで、またテレビに視線を戻した京さんをじっと見つめる。
何かそれ。
日常生活がいいって事ですか。
それに俺がいていいって事ですか。
そんな事言われたらニヤけるし調子乗りますよ。
何にもあげる物が無くても、京さんの傍にいてもいい?
「京さん大好きです」
「…お前よう飽きひんな」
「当たり前です」
「ふーん」
愛しい人の誕生日。
一緒にいる空間が、当たり前で望まれる事が凄い嬉しい。
京さんの誕生日なのに。
これからも、ずっと、続くといいな。
終
20140216
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