本命の主張/京流



京さんが名古屋にライブ遠征して。
仕事から帰って来ても京さんは居ないし帰って来ない。

残念。
今年はバレンタインの料理は出来なかったな。

仕事調節して、俺が名古屋に行っても良かったんだけど。
いや、さすがに俺もツアー控えてるし、それは無理か。


ミルクを温めて、自分のマグに注いで。
バレンタインだから、色々なチョコ製品があって、京さんと飲もうといくつか買った、ホットチョコレートになる先端にチョコがついたスプーンをソレに入れる。


リビングのテーブルにマグを置いて、1人だけど湯船には浸かりたいから風呂を沸かす。

れいたとラーメン食って送って貰って帰って来たから、このまま風呂入って寝ようかなって思って。
風呂に湯を溜めながら、1人リビングのソファに座ってiPhoneをイジりながらスプーンを回してミルクにチョコを溶かす。


もうライブ終わって深夜だし、京さん明日もライブあるから打ち上げとか無いだろうし。
電話して大丈夫だろうか。

ちょっとだけ。

出なかったら、諦めて寝よう。


京さんに電話をかけて、耳に当てるとコール音が聞こえる。

もう寝ちゃったかなーって思ってると、その電子音が途切れた。


『何や』
「あ、京さんお疲れ様です」
『うん』
「寝てました?」
『まだ。けど眠い』
「寝ます?」
『んー』


少し声が掠れた京さんは、電話を切る気配が無さそうだから、そのまま話を続ける。
マグに手を伸ばして、チョコの溶けたミルクを口に含む。


「明日もあるんですよね?天気予報で雪とか凄くなるらしいんですが」
『はぁ?そうなん?めっちゃ寒いし嫌やわ』
「東京って金曜日の夜から土曜日がピークらしいんで、もしかしたら帰って来れないかもですね」
『あー…、まぁライブに間に合ったらえぇけど』
「明日バレンタインなのに京さんいないの寂しいんですけどー」
『変な飯食わされんで済むわ』
「帰って来てからが楽しみですね!」
『死ね』
「あはは」
『そう言えばお前、僕のキャリーん中に変なん入れたやろ』
「あ、見つけました?バレンタインなんで。当日渡せないし」


京さんが遠征準備してたキャリーん中に、服を取り出すとわかる様に前に買った某ブランドのチョコレートと、メッセージカードを付けて入れておいたんだよね。
見つけてくれてよかった。


『しかもカードまでついとってキモい』
「だってバレンタインの時にライブとか、絶対ファンから差し入れ貰いますよね?ファンがあげるのに、俺があげないなんて有り得ないんで」
『ファンと張り合ってどないするん…つーか、お前も毎年貰うやろ…』


アホかって京さんの呆れた声が聞こえて来たけど。

そりゃ、ファンからチョコ贈られて来たりして有り難いとは思うけど。

それはそれ、京さんはやっぱ好きな人だしあげたいじゃん。


「だって京さんは俺の本命ですからね」
『あーはいはい』
「ちゃんと食べて下さいね」
『はいはい』


何かめんどくさくなって適当に返事した感があるけど、長年京さんと一緒にいるから、何だかんだ食べてくれるのはわかるけどね。


『ほなもう寝る』
「はーい、おやすみなさい。京さん大好きです」
『はいはい。おやすみー』


電話を切って、ホットチョコレートを飲みながらニヤける。
キャリーに忍ばせたチョコレート、気付いてくれてよかった。


離れても、俺の事忘れないで下さいねって。
あの人、俺のだから。


京さんとのイベント事好きな俺としては会えないのは残念だけど。
電話出来たからいっか、って思って。

iPhoneをテーブルに置いて、浴室へと向かった。




20140214




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