節分の恒例行事/敏京




「とーしや、今日は節分やでー」
「…京君て他の事にはあんま興味示さないのに節分だけはやろうとするよね。もっと楽しい事あるじゃん!バレンタインとか京君の誕生日とかさぁ」
「そんなん豆ぶつけ合いする訳やないし、どうでもえぇやん」
「良くない!もっと恋人っぽくラブラブな事がしたいのー、俺は!」
「節分で?例えば?」
「んー。豆をお互い食べさせ合うとか」
「おもろないやん」
「恋人がラブラブすんのに、面白さはいらないと思うよ」


俺の恋人の京君は、節分のイベントだけはマメにしようとする。

と言うか、豆まきと称して豆のぶつけ合いデスマッチを仕掛けて来るんだよねー。
いつも俺が鬼役だったりするけど、前は京君が鬼になったり。


俺は恋人同士いちゃいちゃラブラブしたいんです。


仕事帰りに寄ったコンビニで、京君はちゃっかり節分用の豆を買ったらしい。
ご丁寧に紙で出来た鬼のお面まで付いてる。


ご飯を食べて、俺はまったり酎ハイ飲みながら明日も早いし京君とお風呂入って寝たいなーって思ってたら、いそいそと出して来たよ。

俺とのイベント事も、それぐらい積極的だと嬉しいな!


「豆だけ食べようよー。ね、あーんしてあげるから」
「やからつまらんやろ。何か変なお面もあるし、今年は敏弥これ付けて鬼な」
「それ格好良くないからヤだよ!」
「敏弥やったら平気」
「どう言う意味」


京君に差し出された簡易な鬼のお面は、迫力なんか全く無い赤い鬼のお面だった。
何かこんなの俺が付けたらギャグにしかなんねーだろ。


京君は豆の袋を開けて、立ち上がる。


「敏弥、ベランダ」
「またベランダ行くの!?寒いからヤだ!」
「ほな部屋でもえぇか。早よお面付けて」
「やーだー!」
「何やねん。終わったら歳の数だけ『あーん』したろ思ったのに」
「よし、これ付ければいいの?」
「うん」


京君の言葉に、赤い鬼のお面を手に取って装着。

………見えにくいから、真正面に被るんじゃなくて、斜めに付けた。


「うわ、敏弥似合わへん」
「当たり前だろ似合って堪る、かって、京君!何写メってんの!」
「明日薫君達に見せてやろー」
「止めて!せめてどんな写りかチェックさせて!」
「いーやーやー」


俺に携帯を向けて写メを撮ってる京君。
超変な格好なんだから止めてよー!


立ち上がって、京君に手を伸ばすと京君は笑って逃げた。
つっても、部屋狭いからそんな逃げる場所無いんだけどね。

壁側に追い詰めようと思ったら、京君がハタと気付いたのか、動きが止まる。


次の瞬間、京君は俺に豆を思い切りぶつけて来た。


「つーか、何で僕が逃げるん。お前が鬼やろ!」
「ぁ痛ッ!ちょ、京君本気で投げたら痛いじゃん!」
「煩い。鬼は外!早よ外行け!」
「やだやだやだ!出ては行かねー!」
「鬼やろお前!」
「京君とラブラブするから出て行かない…!って、服に入った!」


ギャーギャー言いながら、京君が投げた豆が当たって、次は俺が逃げ惑う。
小さい豆だから、服に入ったりして擽ったい。

京君は嬉々として豆ぶつけて来るし、ホントにもう、この子は!


「悪い子は食べちゃうよー!」
「うわッ!離せやアホ!」


豆を投げる京君に向かってって、がばっと抱き締める。
タッパの差が激しいから、京君は俺に抱き締められたら身動きが出来なくなるしね!


抱き締めたまま、京君の顔を覗き込む。


「鬼やったんだから、豆あーんして」
「まだ豆全部ぶつけてへんのやけど」
「いいじゃん。俺が居なくなったら困るでしょー?」
「や、特に」
「またまた。嘘ばっか」


笑って、少し屈んで京君の唇にキスをする。
京君の腕が伸ばされて、俺の首に回された。


………と思ったら。


「ちょぉおぉお!何してんの!」


背後の服を引っ張られて、ザララララ、と背中に豆を注ぎ込まれた。
屈んでるから、首元にも豆が転がって来て超擽ったい。


「あははッ、もう豆全部使ったから無いでー」
「もー京君酷い!」
「やって敏弥鬼や、んッ!?」


楽しそうに笑う京君を抱き締めて、そのまま抱き上げてベッドに押し倒す。


「何すんねんお前」
「鬼も豆にやられてばっかじゃなくて、今回は下克上って事で」
「は、そんな変なお面付けとって何言うとん」
「京君が付けさせたんだろー」


額に付けてた鬼のお面を剥いで、床に落とす。


毎年毎年、ホント、悪戯好きなんだから。

そんな所が可愛いから好きなんだけど。


でも俺は恋人同士のラブラブが大好きなので、鬼でも下克上させて貰います。




20140203




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