冬の薄暗い部屋の中/敏京
「………敏弥、寒い」
「…んー…なーに…」
「寒い」
「…こうすればあったかいよー…」
「でも寒い。暖房つけて」
「リモコンどこー…」
「知らん」
「うん…」
「寝るな、アホ」
「眠いぃ…」
敏弥と一緒に寝とって。
何となく肌寒くて目が覚める。
寒い言うたら敏弥の腕が僕の身体に回って来て、抱き締められたけど。
また物理的に僕の身体を覆い尽くせる訳ちゃうから足とかも寒い。
寝起きが悪い敏弥は、目ぇ瞑ったままふにゃふにゃした声で僕の背中を叩いてあやす。
まだ寝る気やな、こいつ。
一応、冬やからヤッた後も服着て寝たから、そこまででは無いけどやっぱ朝は寒いやんなぁ。
一回気になったらもう寒いって思ってまうんやけど。
敏弥の腕の中、もぞもぞと動いて体勢を変える。
薄暗い部屋の中、カーテンから光が漏れて。
もう寒いし目ぇ覚めたし起きようかな。
寒いから布団から出たくないけど。
今日も仕事あるしなぁ。
そんな事を考えながら、部屋ん中を見渡す。
昨日、敏弥と一緒に遊んだゲーム機や、宅配されたピザの箱や空のペットボトルがテーブルの上に散乱しとった。
仕事から帰って、2人してピザ食べながらゲームに白熱して。
そのまま一緒に風呂入ってベッドに入りながらヤッてって、昨日の事が呆れる位、ガキっぽい。
そんなガキっぽい事を平然と出来る敏弥との関係は心地好くて、好きやったりするかど。
「………チッ」
やっぱ寒い。
敏弥の腕を退けて、ベッドから下りる。
テーブルに置かれたリモコンを手に取って暖房をつけた。
ついでにトイレも行っとこ。
トイレに行って、顔も洗ってまた戻ると、敏弥は布団を巻き込んで寝とった。
こいつはなかなか起きひんから、もうしゃーないけど。
電気を点けへんまま、ベッドを背凭れにして床に座ってテレビをつけて煙草をくわえる。
朝のニュースが今日の天気予報を流しとって。
もう今日1日、外に出るんホンマ嫌になる感じやった。
煙草を吸いながら、ボーッとしよると、後ろで動いた気配がした。
「…きょーくん?」
「んー」
「…おきたの?」
「寒くて寝れん」
「布団の中あったかいよー?」
「今日は起きる気分やったから」
「えー…とっち寂しくて寝れなーい」
「寝んなや」
「んー…」
暖房つけてもまだ寒いから、ホンマは布団の中でおった方が暖かいんやろけど。
敏弥が布団の中でもぞもぞと起きて、僕が凭れとる所まで来て背中に擦り寄って来た。
「今日、天気予報で雪降るかもって。もう僕仕事行きたないんやけど」
「えー…そんな寒いの?」
「東京で雪とかありえんよな」
「電車止まるんじゃね」
「ほな交通手段無しって事で」
「薫君に怒られるよー」
クスクス笑って敏弥は、僕の首に腕を回して、うなじに唇を寄せた。
「雪降ったら、雪合戦する?」
「昼間から積もるん?」
「あー夜じゃなきゃ無理、かなぁ?」
「つーか、そんなガキっぽい事せんから」
「やったら意外とハマるかもよー?」
「雪ん中に石入れたりか」
「それ普通に危ねーから」
言いながらも敏弥は、僕の髪を撫でたりキスして来たりする。
長くなった灰を灰皿に落として敏弥の方を振り向いた。
間近にある敏弥の顔。
そのまま、軽く唇を合わせる。
したら、寝起きのだらしない顔が一気に崩壊してキモい顔になったんやけど。
「何なに?ご機嫌?」
「お前がな」
嬉しそうにする敏弥のキスを受けながら。
寒い朝も、敏弥の寝惚け顔も。
普通に飯食って風呂入ってヤッて寝て起きてって日常も。
好きやなって。
思っただけ。
終
20140119
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