朝方の事/京流



ファイナルが終わって、少しだけ空いた時間。
後輩が呼び掛けて開いた新年会。

京さんに行って来ていいですか?って聞いたら「好きにしたら」って返事貰って。
結構盛り上がっちゃって、もうすぐ朝になるかもって時間。


俺はあんま飲め無いんだけど、仕事の話とか突き詰めたりプライベートの話で盛り上がったり。
そしたら結構飲んじゃってフラフラする。


お開きになって、それぞれタクシーで帰るって時、参加した虎が送ってくれるっつって。
別に帰るだけだし、大丈夫っつったんだけど、酔っ払って心配だからって。


「ってゆーか、俺ってそんなに酔ってるー?」
「いつもよりは」
「そー?あんまり飲んだつもりねーんだけどなー」
「ルキさんアルコール弱いからじゃないですか?」
「うーん、そうかもー」
「水、買ったんで飲んで下さい」
「お、気が利くねー、虎。サンキュー」


何かちょっと、ふわふわした気分でタクシーに乗った虎と喋ってると。
タクシー乗る前に買ったペットボトルの水を差し出して来たから、それを受け取る。


一口飲んで、蓋をすると虎がソレを受け取った。


「つーか、俺んち送ったら虎遠回りじゃねー?平気ー?」
「大丈夫ですよ。ルキさん1人じゃ危なっかしいし」
「はは、俺そんなにー?」
「ってか、こうでもしなきゃルキさんと2人で話出来ないですから」
「あら、何か2人で話す系の事?」
「いえ、俺がルキさんともっと話したかっただけなんで」
「可愛い事言ってんねー。まぁまたご飯でも行こーっつってもなかなか時間取れてねーしなー」
「ルキさん忙しいですもんね」
「虎もだろー。まぁ来月?京さんいねーしちょっとは時間取れると思う、かなー。え、どうだろ。誕生日あるしなー」
「……ルキさん誕生日ですもんね」
「あぁー、それもあるけど、京さんも誕生日だから。何かしなきゃなーって」
「…仲良いんですね」
「んー。まぁねー昔よりかは落ち着いた?って感じかも。好きなのには変わりねーけど」
「そうですか。ルキさんみたいな恋人持てるなんて、京さんは幸せですね」
「やー、もう俺が好きで押し掛けた感じだしねー。迷惑掛けてるかも」


タクシーの中、京さんの話題になって、ちょっと声のトーンを落として虎と話す。
必然的に、虎と身を寄せる形になって。


笑って虎の方を見ると思いの外、間近に虎の顔があって。
眼鏡越しに見える虎の顔は、何か表情が無く俺を見ていた。

そう一瞬思ったら、すぐに虎は笑顔を向けて。


「そんな事無いですよ、ルキさん恋人とかなったら俺周りに自慢しまくります」
「あはは。ありがとー。虎はいい子だねー」


笑って、自分のマンションが近付いて来たから財布を取り出す。

マンション前に停めて貰って、ドアを開けて貰うと虎にお金を渡す。


「いいですよ、ルキさん。俺が払うんで」
「後輩に奢らせちゃ駄目でしょー。送ってくれてありがとね。おやすみ、虎」
「…有難う御座います。おやすみなさい」
「ん、また連絡するねー」


虎を乗せたタクシーを見送って、自分はマンションの中へと入る。

あー今何時。

京さんも後輩と飲みに行くとか言って、ご飯いらないって言われたんだけど。
もう帰ってるかなー。


あー確かにフラフラする。

風呂入りてー。


最上階に着いて、自分ちのドアの鍵を開ける。
そしたら、リビングの光が漏れてるのが見えて、ちょっとテンション上がって急いで靴を脱いだ。


「京さーん、ただいまでーす」
「……………。死ね」


リビングのドアを開けると、風呂上がりらしいスウェットと濡れ髪の京さんがいて。
テンションそのまま、ソファに座る京さんに近寄ってまとわりついたら、睨まれて暴言吐かれた。


「京さんも帰ってたんですね!」
「ウザい。臭い。死ね」
「楽しかったですかー?俺は楽しかったです」
「そーやねー。お前そのテンションで帰って来たん?ウザいわ」
「あー何か虎が送ってってくれるっつって、帰って来ました」
「…はぁ?」
「タクシーで帰るだけなんで、大丈夫だと思うんですけど、ね…ッ!?」
「お前大人しぃに帰って来たんやろな?」
「いった、京さん痛い痛い…っ」


京さんに思い切り髪を掴まれて、じっと睨み付けられる。
痛みに顔をしかめながら、掴む京さんの腕をペシペシ叩く。


「いくら俺でも迷惑掛けて無いですよ…!普通に話して帰っただけなんで…ッ」
「ふーん」


パッと手を離されて、痛い頭皮を撫でながら風呂上がりの京さんの腕にまとわりつく。
ボディーソープのいい匂い。


「俺ってそんな迷惑掛けそうに見えますー?」
「酔っ払ったらいつもの1.5倍ウザいからな、るき」
「そんな事無いですよー」
「もうウザいやん、お前。早よ風呂入って来いや。煙草臭いねん」

「あー皆、めっちゃ吸ってましたねー」
「お前もやろ」
「あはは。そうかもー」
「やからウザい、死ね」
「嫌でーす」
「チッ」


舌打ちした京さんは、俺を振りほどいて。
立ち上がってさっさとリビングを出て行ってしまった。


あー。
俺も風呂入って早く京さんと寝よう。


ウザいって言っても、絶対俺の寝る場所は空けてくれてる人だから。

押し掛けて、幸せも何もかも、俺が貰ってる気がするんだよ。




20140118




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