離れた2人の日常行為/京流
糞寒い中、仕事が終わってコンビニに寄って家に着く。
何でこんなに寒いんやクソが。
もう外とか出たく無い。
同居しとる奴がツアーでおらんから、真っ暗で暖房もついてへん部屋に帰って電気を点ける。
溜め息を吐きながら暖房や加湿器のスイッチを入れて。
るきがツアーの合間に帰って来た時にギャーギャー言いながら出すん手伝わされた炬燵もスイッチをオンにして、ソファに脱いだライダースを引っ掛けて炬燵なの足突っ込んで座る。
るきがおったら、すぐハンガー掛けろとか煩いんやけど、今は静かなまま。
コンビニで買った、温かいコーヒーを袋から出してプルトップを開ける。
外が寒かったから、もう温くなっとって舌打ち。
仕事場でちょこちょこ摘まんだりしたからあんま腹減って無いし、買ったDVD観て寝ようか考えながら、コンビニ袋から新しい煙草を取り出す。
くわえて火を点けると、自分の携帯が鳴る。
画面を見ると、るきからの着信。
うわ、また何やねん。
昨日も電話しとったやろが。
散々、今日はライブって言うとったから、ライブ終わって飯食った位の時間か。
「何や」
『あ、京さんお疲れ様です』
「おー」
『そっちどうですか』
「寒い」
『ですよねー。こっちも超寒くて。何着ても寒いんで、何かあったかい服欲しかったんですけど、いいのが無くて』
「お前ツアーの度に服増やすんやめろや」
『地方でしか買えないのとかあるんですよ!』
「通販で買え」
つーか、もう服は買うな。
クローゼットにどんだけあんの。
昨日も電話したのにるきは、何を喋る事があるんか、よく喋る。
煙草の煙を吐き出しながら、ハイハイ頷く。
あ、灰皿いっぱいや。
いつもるきが綺麗にしよるから、たまに長期出て行くとすぐに溜まる。
1人しかおらん筈やのに。
『で、今日のライブ思い切り転んで、三途の川が見えちゃいましたよー』
「ふーん。そのまま渡ったらえぇやん」
『ちょ、渡ったら戻って来れないですよね!』
「うん。まぁ…えぇんちゃう」
『いやいやいや、転んで三途の川のあっち側行くって格好悪くないですか!?』
「もう転んで格好悪い所見せとるやん」
『……そうなんですよ…もうホント…今までで一番派手に転んだんで…心に掠り傷が出来ました』
「浅…ほな大した事無いな」
『京さんが癒してくれたら治ります』
「おぅ、お前その映像持って帰って来いや。鼻で笑ったるわ」
『ちょ、傷を抉る気ですか』
るきの楽しそうな声が電話口で聞こえる。
転んだだけで何グダグダ気にしとんって思うけど、それはコイツの考えやからしゃーないか。
どうでもえぇけど。
からかいのネタ位にはなるし。
『京さんご飯何食べました?』
「あー…知らん」
『ちゃんと食べて下さいよー』
「っさいな、オカンか」
『牛タン買ったんで、帰ったら料理しますね』
「ふーん」
『もうすぐ帰りますからね、俺!』
「牛タンのみ帰って来てえぇで」
『俺がいなきゃ食べれないですよね?』
「もう食いに行くから帰って来んでえぇわ」
『嘘です嘘!俺が京さんと一緒に食べたいです!』
「………」
吸い終わった煙草を灰皿で揉み消して。
るきの話を聞きながらもうほとんど冷たくなったコーヒーに口をつける。
別に、自分でやろうと思えば出来る。
コーヒーを淹れる事も、灰皿を片付ける事も、自分の飯くらいも。
まぁ、やる奴がおるんが当たり前の状況やから自分でする事とかかなり減ったけどな。
『あー…帰ったら大掃除しますね』
「元気やなー」
『年末なんで!』
「はいはい、頑張れ」
『京さんもやって下さいよー』
「んー」
『でないとまだ観てないDVDしまっちゃいますよ!』
「ん、整理しとけよ、るき」
『でも見つからなかったら怒るじゃないですか』
「当たり前やん」
僕はるきみたいに部屋中引っ掻き回して掃除するとか無理。
まぁどうせ、るきがギャーギャー言うてせなアカンくなるんやろけど。
何だかんだで、また長電話してもうた夜。
長期家を空けると、これやからアカンわ。
これが、当たり前になっとるから。
終
20131229
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