それが日常/京流
ツアー中。
お互い遠征行くなんて当たり前の様にあって、家に長期帰らんかったり帰っても寝るだけやったりするんやけど。
そんな中、るきは毎日毎日、遠征先での飯や景色や、果てはメイクした自分の写メなんぞ送り付けて来る。
毎回毎回、よう飽きひんなって思うわ。
つーか、毎回代わり映えの無いるきの写メなんか興味無いんやけど。
毎日、何かしら理由を付けて電話も来るし。
まぁそれは出たり出んかったりするし、必要な事やったらメール来とるし、別にえぇけど。
仕事終わりで、疲れて飯食って帰るんもめんどいし、かと言ってるきはツアー中やから帰ったら用意されとる訳も無く。
コンビニで買うって気分でも無いし、どうしようか考えとったら自宅着いてもたから、もうこのまま風呂入って寝ようかなって思いつつ、自分ちに帰る。
真っ暗な中、電気点けて靴脱いだらインターフォンが鳴った。
まぁ別に、遅い時間や無いけど、誰かが訪問する予定は無いし、何やねんって思ってインターフォンに出ると。
元気な声で某宅配便を名乗られた。
ほとんど通販で買ったりするけど、僕何か頼んだっけ?って思いながら鍵を解錠してやる。
部屋のインターフォンが鳴って、ドアを開ける。
大きめの段ボール抱えた兄ちゃんに言われてサインして、それを受け取る。
大きさに反してそこまで重くは無かったけど、僕の名前で、住所できっちり書いとるその伝票の癖のある字。
あいつ…何やねんコレ。
玄関先にその段ボールを置いて、キッチンへ行って冷蔵庫から烏龍茶を取り出す。
グラスに入れて、口を付けながらソファに座ると僕の携帯が鳴った。
るきから。
「お前何やねんあの荷物」
『あ、届きました?よかったー』
「よかったちゃうわ」
『あはは。すみません、ちょっと服買いすぎちゃって…なかなか帰んないし、明らかにカバンには入んないし、送っちゃいました』
「お前…あれ全部服か」
『あ、はい。冬物の』
「アホか!いっぱいあるやろクローゼットん中!」
『自分の中でブームがあるんで』
「はぁ?」
『あ、後ストレス発散なるんです、買い物』
「女か」
『え、だって普段絶対自分じゃ行かない地方とか、服屋巡りたいじゃないですか』
ソファに座ってテレビを点けて雑音を流しながら、電話口のるきの声に呆れる。
やからあの段ボール大きさにしては軽かったんか。
どんだけ買ったん。
この買い物依存症。
『メイクとか先に仕上げて貰って、調べた服屋巡るの楽しくて』
「ファンに見つかって追い掛け回されて困れ」
『やー意外とわかんないモンですよね。一応サングラスはして行ってるんですけど』
「あーそー」
『それより京さん!写メ見てくれました?雪ですよ雪!』
「あぁー」
『超寒くて、移動めちゃくちゃ時間かかりましたよー』
「ふーん」
『東京はどうですか?』
「別に普通。寒い」
『もう炬燵出した方がいいですよね。帰ったら出します』
「んー」
るきが今まであった事とか、何か色々マシンガントークして来とる。
それもいつもの事やけど。
元気やな、コイツ。
『京さんご飯食べてます?』
「今日は食ってへん」
『え、食べて下さいよ!風邪引きますよ?』
「っさいな、オカンかお前。1日食わんでも死なんわめんどい」
『風邪引いたら飛んで帰りますからね!』
「間に合ってます」
『ちょ、俺以外に看病されたらショックなんですけど!』
「何でやねん寧ろるき菌が移りそうやわ」
『それ何の菌なんですか』
可笑しそうに笑うるきの声が聞こえて、溜め息。
身の周りを世話されるんに慣れ過ぎて、1人やと飯食うんも億劫なって、どうなん。
何もかも、るきが悪い。
「アホるき」
『いきなり何ですか』
「ほなあの段ボールは処分って事でえぇ?」
『止めて下さいせっかく買ったのに!』
「やから限度を知れや」
『一応厳選して買ったんすけど』
「あれでか」
さすがるき。
ブッ飛んどるわ。
『とにかく、ちゃんとご飯食べて下さいよ!?』
「あーはいはい。わかったわかった。ほな僕風呂入って寝るし。おやすみー」
『ちょ、聞いてねぇ…!』
るきが何か言い掛けとんを無視して電話を切る。
一気に部屋がシン、と静まり返った感覚。
直後、メールが来る。
るきから。
飯食えだとか、暖かくしとけとか、アホらし。
そんな言うなら、お前がさっさとツアー終わらせて帰って来たらえぇやん。
そう思って、携帯をソファに投げてグラスん中の烏龍茶を飲み干した。
終
20131116
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