フィーリング/京流




朝っつーか、携帯で時間確認したら昼前。



起きたら隣にるきが寝とった。
ツアー始まったっつって、早寝早起きしたりして時間もバラバラやしあんま会う時無かったから、あ、おるんやって思って。

携帯を置いて、少し伸びをして起き上がる。

したら、その振動でるきが気付いたらしく、ちょっとだけ呻いて目を瞬かせた。


「……きょー、さん…?」
「声ガラガラやな、お前」
「………いまなんじ…」
「昼前」
「……りがと、ございます…」


枯れた声で寝惚けた顔で言うて来たるきは、二度寝する気なんかもぞもぞと布団を被り直した。

僕は目ぇ覚めてもたし、そのままベッドから下りてトイレ。

欠伸を噛み殺しながら、今日は夕方から打ち合わせあったかと頭の中で予定を反芻する。
そのまま顔を洗って、キッチンへ行って冷蔵庫を開けると、るきが新しく買ったであろう野菜ジュースのパックが置いてあったからそれをグラスに淹れる。

新聞取りに行くんめんどいし、何となく腹減ったけどるき寝とるし、色々めんどくてグラスに口を付けながらソファに座ってテレビを点けた。


「………京さん、何か食べます?」
「…何や、起きたん」
「んー…眠いんですけど、何か寝れなくて…」


寝癖が付いた髪の毛で、マスクを顎下にずらしたまま眼鏡を掛けてリビングに来たるきは、リビングにある稼働させっぱなしの加湿器の水量を確認して洗面所へと消えていった。

下らんワイドショーのテレビの音の中、るきが洗面所で顔を洗う音の後、うがいをする音。

ツアーの前、アイツは言わんかったけど鼻声やったし季節の変わり目で風邪引きかけとんちゃうかって感じで。

自己管理がなってへんだけやから、余計に気にするんやろな。


ちびちびと野菜ジュースを飲みながら、テレビを見とると、一連の行動が終わったるきが僕がおるソファに来た。

そのまま乗り上がって僕の隣に座り込んで身体をぴったりくっつけて来る。
つーか、凭れかかっとる。


「何や。重い」
「んー…」
「甘えんなキショい」
「えー…」
「…………」


緩いテンションのままのるきは、そのまま身体をずり落とし顔を僕の方に向ける形で僕の太股に頭を乗せた。
ちっさいから、デカいソファで寝転がっても何も支障ないけど、何となく、いつもウザく絡み付いて来るるきとは違うから、しゃーなしにそのままにさせてやる。

少し視線を落とすと、ツアー前に染め直したと煩かった白金に近い髪の毛。

摘まむときしんで人形みたいな毛やった。

それを掻き上げると、僕が痛がるるきに無理矢理拡張したピアスが見えた。


そんな事をしとるから、るきが眼鏡越しに不思議そうな視線を向けて来た。


……何やねん、文句あるんかコラ。


「…こっち見んな不細工」
「京さんはいつでも格好良いですね」
「何処がやねんボケが」
「え、言っていいんですか?聞いてくれます?」
「黙れ」
「えー」


マスク越しのるきの声は寝起きか痛めたか風邪か、判断つかんぐらいの微かな変化。
その原因は本人が一番良く感じとるやろけど。

目元だけで笑ったるきムカついてイジっとった髪の毛を引っ張る。


「痛い痛い痛い!京さんハゲる!ハゲますって!」
「もうこんだけ髪の毛イジっとんやから将来ハゲ確定やろ」
「俺の毛根は強いと思うんですよ」
「あぁ、本人と一緒で神経が図太い意味で」
「京さんちょっと伸びましたね」
「あー…これ寒い時期アカンわ」
「首元とか絶対寒いですよねー…俺の帽子貸します?」
「いらん。お前の女みたいやん」
「でもあったかいっすよ」
「いらん」


引っ張っとったるきの髪をまた撫でつけるようにイジると、るきが嬉しそうにして目を閉じた。


「寝んな。僕腹減った」
「んー…パンケーキ…作ろうかなって…」
「パンケーキ?」
「最近、おかず用のパンケーキ売ってて、チーズとかハムとかと一緒に食べるヤツ…」
「お前な…」


その新しい物好きどなんかならんのか。

パンケーキって何。
飯になるん、そんなん。


「日本に初上陸したパンケーキ屋さんも教えて貰ったんで、また行きましょうね」
「…お前その前にツアーやろが。キバって来いや」
「はーい、頑張ります」


何か寝起きでテンション低かったんが、アホみたいないつもの声色になって、眼鏡を外して僕の太股に擦り寄って来る。

キモい。

こんなんで気分が浮き上がるとか、お手軽なヤツやな、お前。


つーか、るきの事を見ただけでわかるとか、そんな自分が気持ち悪いって感じて、むかついたから僕の太股に甘えるるきの頭をペシッとはたいた。


「何するんですかー」
「黙れ離れろキモい」
「んふふー。京さん大好きー」


いつも通りキモいるきでないと、調子狂うからな。




20131110





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